ADS-Bとは

Automatic Dependent Surveillance-Broadcast

 

航空機が絶えず、現在の位置と高度を放送するシステムです。航空機のカテゴリ情報、対気速度、識別、航空機の旋回、上昇、降下などを、知らせる機能があります。システムの最大範囲は、通常370km未満。

 

ADS-Bを使用することにより、航空管制と監視、パイロット状況認識を高めることができます。 従来のレーダーより低い費用で、高い品質のトラッキングを可能にします。遠隔地か、レーダー探知範囲が限られている山岳地帯で有効です。

 

空中衝突を回避するシステムは将来「ADS-B」を利用する可能性があると思われます。

ただし、航空機の位置情報は、GPSを使用していますので、安定性や障害を考慮するとあくまでも補助的な役割になると考えられえています。(TCAS衝突回避システムの補足)日本国内では、まだ、ADS-B装備は義務付けられておりません。

 

ADS-Bは、何種類かのデータリンク(SSR mode S)で、航空機および、地上設備とのやりとりを行います。

 

詳しくは、以下ご参考

http://en.wikipedia.org/wiki/ADS-B

http://www.soumu.go.jp/main_content/000032987.pdf

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/koukuu_musen/pdf/070718_1_s2.pdf

 

ご参考まで

一般的にレーダーとは、高い周波数の電磁波(=電波)を発射し、反射してくる電磁波の時間と方向から、位置や、高さ、大きさを測定するものですね。ただ、レーダーの画面には、点で見えてくるので、対象物の識別が難しいという面があります。昔のレーダーは、数秒ごと回転する線(レーダーが向いた方向)で、光る点を識別しなくてはならないため、かなり高度な熟練者が求められたはずです。

スライド1

(昔のレーダー画面例、PPIスコープ<Plan Position Indicator scope>とも呼ばれていました。)

 

二次レーダー(Secondary Surveillance Radar= SSR)とは、質問信号をレーダー側から発信し、航空機側に搭載されたトランスポンダー(*注釈)が自動応答することで、情報を収集します。応答された情報は、レーダー画面上に点の情報に加え、文字情報として画面表示されるため、管制官が航空機を識別しやすくなります。

(レーダー画面例、画面上に文字情報が表示される。)

 

SSR mode Aにより航空機の二次レーダー識別コード(DBC= Discrete Beacon Code :個別ビーコン番号)が取得できます。

SSR mode Cにより気圧高度情報を取得できます。

地上からの質問周波数は1030MHz、航空機の応答周波数は1090MHzで共通です。

 

SSR mode S とは、他のモードのように、一斉に質問するのではなく、航空機個別に質問をおこないます。(データリンクによる通信をおこないますので、込み合った空域でも電波の衝突が無いという利点があります。)このデータリンクによる通信で、ADS-Bの持つ情報(つまり位置、速度、方向等)をやり取りします。

スライド2

 

 

ADS-Bでの航空機IDMode S コード)は、ICAO International Civil Aviation Organization)で管理されているようで、飛行機の登録番号(レジ)と1対1の関係にあります。

 

航空機からのADS-B信号の発信は、トランスポンダをオンさせると開始されるようです。

トランスポンダ―スイッチ

(上記はBoeing777の例)

 

ただし、多数の国内機は、Mode-Sコードは発信しますので、Mode-Sコードから登録番号(レジ番号)等は認識できますが、ADS-B情報まで発信している飛行機がまだあまり多くないため、 RADAR BOXでは、受信リストで表示されますが、高度情報ぐらいしか分かりません。海外からの便は、割と高い確度で、ADS-B情報を発信しています。

 

ADS-Bが発信している情報

@飛行機のID番号(MODE-Sコード、飛行機がセットした値)

A飛行機の位置情報(経度、緯度)

B飛行機の速度(水平速度、上昇・下降速度)

C飛行機の高度(GPSからの情報と気圧高度計情報)

D飛行機の進行方向

Eシステムの状態

Fスコークコード

 

ルート情報や、便名はADS-B発信データには含まれていません。受信側でデータベースをしらべて便名とルート(出発地、到着地、航空会社、レジ番号、ルート情報等)を表示させる必要があります。

一般人でもADS-B受信機があれば、管制レーダーからの質問信号に応答した航空機からの信号を受信することが出来ます。

 

インターネットを介して情報を提供しているサービスもあります。

スライド3

フライトレーダー24は全世界のADS-B受信機を持っている有志およびFlightradar24が設置した受信システムからの情報に便名や出発・到着空港などの情報を付加してアプリに情報が配信されます。

 

TIS-Bとは

Traffic Information Service Broadcast

飛行機が他の飛行機から発信されたADS-B信号を受け取れない場合でも、地上の設備で受信した飛行機のトラフィック情報(位置情報等)を地上送信装置から受け取る仕組みです。情報は、ADS-B同様、1090MhzのモードS2次レーダー用電波)で受け取ります。

アメリカでは小型機むけにUAT(ユニバーサル・アクセス・トランシーバ 周波数978MHzで配信が行われています。)

スライド4

 

ADS-Cとは

(Automatic dependent surveillance contract)

名前は似ていますが、ADS-CADS-Bは意味が異なります。

ADS-Cは、仕組みとしてはADS-Bを利用しますが、航空機の位置、高度、速度、航行意図の要素、気象データを1つ以上の特定の航空交通サービス機関と連携する「契約」です。具体的には、今までは洋上(太平洋等)では無線(HFと呼ばれている短波通信装置)を使った音声による通報・報告を行っていましたが、その置き換えとなるものです。通常パイロットは通過するエリアを管理している国や組織の管制官へ位置を報告したり進入許可を得たり、緊急事態を通報したりしています。ADS-Cがあれば音声による位置や速度、方向などの通報が不要となり管制機関の担当者に自動的に行われることになります。

航空機と地上管制とやり取りは、インマルサット衛星(静止衛星)等の衛星回線を使います。(ヨーロッパではIrisも追加予定。 ) 70度以上緯度の高い地域はIRIDIUM 衛星も利用とのことですが詳細は不明です。

http://www.aviationtoday.com/2015/09/25/ads-c-makes-increased-flight-tracking-a-non-issue-for-airlines/

 

システムは陸海を問わず緯度、経度、高度と時間情報の4次元での航空機追尾(4D追尾)が可能になり、マレーシア航空MH370のような行方不明機は無くすことができる予定で、各航空会社の運行担当者、エアライン、地上管制官の負担を減らして効率の良い航空機運行支援が可能となります。(資料

ADS-Cを利用するためには、次世代規格FANS 1Aに対応した機体である必要があります。FANS 1AADS以外にもCPDLCController-Pilot Data Link Communication)という装置を搭載する必要があります。このCPDLC装置は、音声による管制を完全にオンライン化するものです。(進入許可、高度変更、速度変更、方向変更などの指示や要求のやり取り、チャットやメール機能、また音声による会話も可能です。)→オンライン化することで、聞き間違い、聞き逃し、勘違いなどのコミュニケーションミス削減効果が期待されます。

高度の変更やり取りが画面で行われます。(資料

(更新頻度はエリアによって定められています。資料

 

ADS-Bに対応している飛行機

どれぐらいの航空機が位置情報を出しているのか気になるところかと思います。

以下が2011918日関西空港近くで受信したログ情報を分析したものです。(日中10時間位)

アンテナ設置場所が悪いため、ADS-B信号を発信している航空機でも、建物の影で信号が弱くなり、位置情報が受信できないので、実際の率であるとは一概には言えませんが、参考なるかと思います。

 

青がADS-B信号を受信している航空機です。

 

2011918日時点での関西空港近くでの受信状況

 

 2011918日関西空港近くの機種別は以下です。

image002

 

航空会社別は、以下です。

image003

急速に、ADS-Bは、普及しているようです。海外便は義務化されている国も多い為、ADS対応している割合が高いと思います。

Boeing767の対応率が影響しているのかもしれません。今後Boeing787に入れ替わると対応率が上昇するのではと期待しています。

 

関連記事

http://www.alpajapan.org/news/techinfo/30ki/ATI_30-T11.pdf

http://www.alpajapan.org/news/techinfo/30ki/ATI_30-T12.pdf

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/koukuu_musen/pdf/070419_1_s5.pdf

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/koukuu_musen/pdf/070614_1_s5.pdf

http://www.enri.go.jp/index.shtml

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/koukuu_musen/pdf/070419_1_s5.pdf#search='ICAO Annex 10'

上記リンクは日本政府の動向です。国土交通省より総務省のほうが、ADS-Bについての情報が多いです。

総務省トップ > 組織案内 > 審議会・委員会 > 情報通信審議会 > 会議資料 > 航空無線通信委員会

 

エアバス社のカタログ(英文)

 

ボーイング者のカタログ(英文)より

ヨーロッパの領空入っているすべての飛行機で2015年までにADS-Bが必須となります。ヨーロッパとアメリカは、200912月に航空無線技術委員会DO-260Bトランスポンダ基準を満たすトランスポンダの搭載を義務づけることを決定しました。アメリカは、すべての飛行機に20201月までにADS-B搭載しなければなりません。

 

参考情報

管制に使われている実際のレーダー画面 (YouTube

http://www.youtube.com/watch?v=x-C7O0CuC0g

 

アメリカ上空の飛行機の様子。激しく流れています。(YouTube

衝突の恐れも高まってきています。

http://www.youtube.com/watch?v=d9r3H4iHFZk&feature=channel

 

 

(注釈)トランスポンダ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

トランスポンダ(Transponder)はTRANSmitter(送信機)とresPONDER(応答機)からの合成語。受信した電気信号を中継送信し、受信信号に何らかの応答を返す機器の総称。

 

 

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