登山のための天候予測

=エッセイ(誰でも出来る天気予報)=

みなさま、山に出かける前には必ず天候確認されると思います。

空を見たり、テレビの天気予報を見たり、新聞を見たり色々あるかと思います。ネットでは気象協会や気象庁以外にも色々な山専門の天気予報サイトやアプリがあります。

近くの山に出かける場合は空模様眺めと天気予報で十分なのですが、遠出や休暇で旅行となると多少良くない天気予報でも簡単に登山を諦めきれないことがあります。そうなるとより詳細に、天気図、気象衛星、高層天気図などを確認し、少しでも登山の可能性を探ることになります。

このページでは、従来に無い新しい天候予測を試みるものです。気象原理を少しだけ深く理解し予測技術の向上を狙います。

天候予測は生命に関わるリスクが伴います。自己責任でご利用となりますが、何らかのご参考になれば幸いです。

【気象予報業務を行う事業者は、現象の予想は気象予報士が行うことを義務づけられています。ここではあくまでも一般登山者向けで、気象予報士を目指されている方用ではありません。】

17090309結果

先日山小屋での食事時、シニアな男性の方が若者に天気図が読める必要があると説いておられました。具体的なレクチャーなく単なる自慢話なのか、うんちくなのか、何をご存じなのか少し興味がありましたが…、たしかに最低限の天気の知識は必要ですね。(^^; ただ気象は奥が深く、専門書も複雑で簡単ではありません。出来る限り数式などは使わず説明いたします。

 

なぜ天気が悪いと登らないのか

当たり前のことですが、なぜ天気が悪いと登山しないのでしょうか。

雨で道が悪くなる。滑るなど滑落の危険が増す。

落雷に合う可能性がある。

風が強く、快適でない。滑落や転倒の危険が増す。

景色が見えない。辛いし、楽しくない。

気温が下がり、濡れなどで低体温症などの危険が増す。

増水などで渡渉(小川を渡ること)に問題発生の可能性が増す。

川の氾濫、がけ崩れの危険がある。

雪や氷等、登山の安全性に影響がある。

視界が狭くなり、霧などで道を間違える可能性がある。

書くときりがないほどリスクがあります。

でも、もし今後天候が回復する可能性がある場合や、リスクを許容できる場所であったりすると、天気によってはチャレンジすべきケースがあります。最悪のケースを回避できる場合などは入山を試みる価値はあります。

まず基本的な気象知識の確認です。

 

気象とは?

地球の大気で空気がある部分は『対流圏』と呼ばれ、海抜ゼロから高さ16kmぐらいまでの範囲で、雲や雨、雷、台風、温度、気圧変化、風などの天気現象が起こります。飛行機が飛ぶ高さが約10km程度なので、ジェット機の窓から見える範囲で気象現象が発生していることになります。(地球の大きさから考えるとかなり薄い層での自然現象です。)

 上記写真は約10km上空から撮影した3D写真です。鳥海山付近ですが雲に覆われています。(ステレオ画像見かた)

 

気象現象の主役である空気は、窒素ガスが約8割、酸素が約2割、(二酸化炭素《炭酸ガス》は0.04%ぐらい)でその中に水が水蒸気として含まれています。空気は軽くて目に見えませんが、雨や風や霧などは脅威になります。

気象現象と登山への影響を整理すると

気温(高いと熱中症、寒いと低体温症)

雨や霧(濡れると滑る。視界が悪くなる、迷う。河川増水。渡渉。がけ崩れ等。土石流。)

雪、雹(積と歩きにくい。雪崩など懸念。ホワイトアウト。)

風、竜巻(体熱が奪われる。雲が発生しやすい。煽<あお>られる。)

雷(直撃は命が無いが、近くに落ちても大変な目に合う。)

気圧変化(高度計が狂う)

景色(雲、雲海、虹、もや、樹氷、蜃気楼【しんきろう】、ダイヤモンドダスト、雪)

 

天気予報は正確か

天気は、現在観測されたデータを元にスーパーコンピュータで計算を行い予測しています。(数値予報と呼ばれています。)実際どれ位のズレがあるのでしょうか。意外と過去の天気予報を検証していなかったので比較してみました。

17090409予想48時間17090409

左が48時間前予想。右が実際の天気図です。(情報源:気象庁

 

17090509予想4817090509

右側の低気圧の気圧値が少し違っています。

 

17090809予想4817090809

上記で見ると48時間であればほぼ違いが無いことが分かります。

でも気圧配置が分かったからと言って雨が降るか、風が吹くか今一つ分からないのが現状です。

 

バタフライ効果とは?

1961年にローレンツ博士が計算機で気象予報プログラムを実行した際に発見したと言われています。ある日同じデータを使ったはずの気象予測を計算が違った結果となりました。原因を追究すると極わずかなデータの誤りが見つかりました。凡人では単なるミスですましてしまう現象を追求した優れた科学者です。

蝶(ちょう)の羽ばたきによって生じたわずかな空気の乱れは、明日の天気には影響がありません。でもそのわずかな違いが1か月、1年と積み重なることで将来まったく違った気圧配置に変わる可能性があります。ここから「カオス理論」という数学上重要な学問が生じるのですが、ここでは数値計算による長期予測は当てにならないことをご理解頂けましたら十分です。

今後もっと高速なコンピュータが出現したとしても自然のデータをすべて観察、計測、数値化することが出来ないと考えられます。現時点の天候シミュレーションも現実とは完全一致出来ないため一週間先の予報で一喜一憂する必要はありませんね。(コンピュータの精度が悪いのではなく、気象そのものが気まぐれなのです。)

17091109予想4817091109

特に台風など動きが激しい場合は予測気圧配置にも狂いが生じます。

 

地球をとりまく風と熱の循環

基本の話ですが、地球全体の熱の流れを考えてみます。地上は常にどこかで風が吹いています。この風の流れは、ある程度の法則で流れが決まっています。

赤道付近は南極や北極付近よりも太陽の光をまともに受けることになり、温度が高くなります。

スライド1

 

下記は実際の温度分布です。

地表温度

上記は、http://weathernews.jp/s/topics/201612/090085/ 201611月の世界の気温分布です。赤道付近の気温が高いことが分かります。

 

上記は、http://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/climate/glb_warm/sst_annual.html 

2016年の平均海面水温を示していますがこれも赤道付近の海面温度が高いことがよく分かります。

 

スライド2

赤道付近の熱は、北極と南極に広がろうとします。もしこのエネルギー拡散力が働かないとすると南極や北極は現実よりもっと寒く、赤道付近はもっと熱く非常に住みにくい地球となっているはずです。

 

下の図は横から見た空気の流れです。

大気循環説明

太陽の光は地球に当たりますが空気を暖めず素通りして地面や海面を暖めます。地面や海面の熱が空気に伝わり、熱で空気が膨張します。熱気球と同じ原理で暖められた空気は膨張により回りの空気より軽くなりますので上昇します。すると上昇した空気分だけ、気圧が下がることになります。気圧が下がると回りの空気が低い気圧に向かって流れてきます。

 

スライド4

上記絵のように赤道付近の空気が上昇することにより、地表付近では赤道に向かって風が吹くことになります。ところがここで奇妙な力が働きます。地球は北極星からみると反時計回りに1日に約1回転しています。そのため地球上で止まっている空気も地球の回転方向に同じ速度で動いていることになります。北極点と南極点では速度がゼロ、赤道では時速1670kmにもなります。(大きな地球が24時間で1回転するとそれぐらいの速度が必要です。)

スライド6

上記空気が赤道方向に流れたとします。

地上の空気は地球と同じ速度で回転しています。赤道に向かう風は赤道付近で必要な速度が不足する(つまり地球の回転速度より遅れるため)ため進行方向に向かって右側に曲がる見かけの力を受けます。上記は矢印の長さ(速度を示す)が同じですが、同じ時間間隔でも赤道付近のほうが長い距離を進む必要があります。

スライド5

逆に赤道から北極に向かう風を考えてみると、赤道では時速1670kmの速度で地球と一緒に回っていたが、赤道から北に離れると地球の回転についていくための必要な速度が遅くなり地球より早く進んでしまうため、進行方向に向かって右側に曲がる見かけ上の力を受けることになります。この力はコリオリの力と呼ばれています。(この力は航空機や大陸間弾道ミサイルも同じ力を受けます。)

スライド7

上記の理由で赤道付では、地球の回転とは反対方向に風が流れることになります。この風は貿易風と呼ばれています。(空気が地球の回転に取り残されている訳ではありません。)

さて赤道付近で上昇した空気はその後どうなるのでしょうか。空気の登れる高さは、対流圏までなので約16km以上に上昇することができません。(資料) そのため空気は、北極と南極に向かい緯度30度付近で下降流となって地面や海面に吹き下りてきます。下りて来た空気は、また赤道へ戻るものと、更に北に向かう風とに分かれます。

更に北に向かう風は同じくコリオリの力の影響で右に曲がり、偏西風となります。

スライド8

逆に北極や南極ではどんな風が吹くのでしょうか。

北極・南極は太陽の光が弱いので冷たい地面や海面で空気が冷やされ、体積が縮むため重くなり下降流となります。下降流は赤道に向かって流れますが、やはりコリオリの力を受けるため進行方向右側(地球と逆回転)側に流れが出来ます。

この極からの冷たい風は、偏西風とぶつかり上昇流となり大気が循環することになります。でも実際こんなに綺麗に風が吹いているのでしょうか。

下記は、earthというウェブサイトをご紹介いたします。このサイトは地球の気象状況がビジュアライズされたもので、スーパーコンピュータを使って3時間ごとに更新されているものです。データのソースはGFSNCEP、米国National Weather Serviceから提供されています。(実際の気象データとの差は不明ですが、経験上天気図に一致しているように見えています。)

https://earth.nullschool.net/

地表

上記が地表と海面上で実際に吹いている風の流れです。上記は静止画ですが、WEBでは風がアニメーションとして動きます。(アニメーションは実際の空気の速度をかなり強調しているため現実的な速度ではありませんが、空気の流れの方向がわかります。)

風は海上では早く流れ、陸上では地表の影響を受けて遅くなることがわかります。上記を見る限りは、大気循環モデル(ハドレー循環・フェレル循環)のようなきれいな流れではないように見えます。

earthでは、地表の風以外にも上空の風や温度を見ることができます。

アース説明

アンドロイド・モバイルのブラウザー以外のPCIPhoneは、上記@earthの文字をクリックすると表示内容を変更することが出来ます。マウスで地球の任意の場所をクリック(上記Aは日本上空250hPa付近=10km上空)すると上記Bのように風の場合は吹いて来る方向と速度が表示されます。

https://earth.nullschool.net/jp/about.htmlに簡単な説明があります。

 

250hpa

250hPa付近(高さ約10km付近)の流れです。日本上空に強いジェット気流西から東に流れています。この高さが対流圏の上層部となります。赤道付近で上昇した空気が上空まで到達し南北に向かいますが、コリオリの力を受けて東向きの流れに変わります。

高層でジェット気流が出来る理由(気流速度が上空で速くなる理由)は、地上の摩擦による減速を受けず気圧も低くなるためと考えられています。また早くなる場所は回りから空気が集まってくる場所のようで、ジェット気流の場所で上昇流もしくは下降流が発生している可能性があります。気流の速度は、高度10kmの上空では、最大360km/時にもなります。

北半球のジェット気流は2系統あり部分的に合わさったり分れたりしています。北極側は大きく蛇行していますが、これは実験部でもお湯と氷と水と回転テーブルがあれば再現出来ますが特定の速度で発生します。(資料) この蛇行はロスビー波と呼ばれています。(別名で傾圧不安定波偏西風波動とも呼ばれているようです。)

スライド9

ジェット気流の蛇行原理ですが、元々は温度の違う空気が平行に流れているとします。

 

スライド10

温度の違う空気は相手の領域にそれぞれ進入して混ざろうとします。それがきっかけでジェット気流により空気の渦を発生させてしまい、その渦に進路を妨害されて左右に流れを変えますが、赤道側の気流と極の寒気団にそれぞれ押し戻されて、またコリオリの力を受けるため元に戻る力が働きます。

この進路から逸れる力と押し戻す力が気流の振動現象を発生させるのですが、ちょうど波長が共鳴しバランスが取れてしまうと蛇行が固定化されてしまいます。(日々変化はしていますが…)

http://wakariyasui.sakura.ne.jp/p/wave/koyuu/genn-img/2221-100-1.GIF

学校で、弦の振動を習いましたが、これが弦ではなく輪になっているようなイメージです。

 

北極を真上から見た250hPa

上記図は、北極を真上から見た250hPaでのジェット気流です。くにゃくにゃ蛇行していることが分かります。(北極の回りは大陸があるため蛇行は複雑で、南極は大陸があり回りが海のため流れは単純になります。)

(ジェット気流が流れる500hPa250hPa付近は飛行機が飛ぶ高度なので海外便などは、行きと帰りで到着時間が異なることになります。)

 

earth】の使い方

earthメニュー

earthをクリックするとメニューが表示されます。日本語を選ぶとメニューが日本語化します。メニューを消したいときはearthもう一度クリックします。

以下、メニューの内容について説明いたします。

《操作》

表示する日時を指定できます。過去や未来を見ることができますが、どれ位遡れるかは未確認です。

 

《モード》

大気圏、海、大気化学、粒子状物質が選択できます。天気の場合は「大気圏」を選択

 

《高度》

地表から10hPaまで選択できます。"hPa”とはヘクトパスカルつまり気圧のことですが、高度との関係は以下です。

1000 hPa  〜100

海面近くの高さ。建物などの影響が低くなりますが陸地では風は減速することが良く分かります。

850 hPa  〜1,500

大気境界の下層は地表の熱や摩擦の影響が少ないので前線を確認するには最適な高さとのことです。下層の雲はこの高さ付近に出来ます。また低気圧の回転(渦)を見るのに程よい高さです。低山の山頂の風はこの高さが参考になります。

700 hPa  〜3,500

大気境界の上層は下層の850hPaより地表の影響が単純となるため、気圧の谷(トラフ)、気圧の峰(リッジ)や温度場、低気圧の発達状況の確認をみることがでるようです。 ただしearthの場合は高層天気図の機能がないので、温度を確認するぐらいです。日本アルプスの山々はこの高さを参考にします。

500 hPa  〜5,000

この高さは上層のジェット気流の影響が現れる場所で、低気圧の高さ上限近くです。低気圧が発達するかどうかを判断するため、この高さで空気の出口があるか確認します。(詳細は下記で説明予定)

また寒気の強さを見る高さともなります。この付近に-30℃以下の冷たい空気が入るときは、冬将軍がやってきたとなるようです。ただし雪が降るか雨になるかは地表近くの温度も確認が必要です。

20171114日予想ですが500hPaの高さで寒気-30℃(手書きの赤い線)は北海道に掛かる手前です。

また後で説明しますが、上層でジェット気流が強いとその下にある温帯低気圧は急速に発達する可能性があります。

250 hPa  10,500

この高さは対流圏の上限近くでジェット気流が流れる場所です。気流の曲がり場所などで下層の低気圧発達を占います。台風はこの高度まで渦巻回転が続いています。国際線の飛行機はこの高さで飛んでいます。

70 hPa  〜17,500

成層圏です。空気は非常に薄く寒い場所です。なぜか赤道の方が極より温度が低くなります。

10 hPa  〜26,500

成層圏の上層部です。気圧は地表の100分の1です。地表の気象現象には直接関係していないと思われますので参考にしません。

*注意:上記hPaと高度はだいたいの目安で正確には一致していません。

(上記コメントはhttp://www.yoho.jp/shibu/seibu/public_html/page3.htm を参考にしました。)

 

《レイヤー》

風速:風の強さを色で示しています。

気温:指定の高さでの温度が色で示されます。

相対湿度relative humidity)その温度で溶けることが出来る量に対する比率で一般的に湿度と呼ばれているものと同じです。絶対湿度との違いは、空気中にどれだけの水が存在しているかという量ではなく、溶け込める水の量に余力があるかです。目一杯溶けている場合は飽和していると言い、温度変化で雨に変わる可能性があります。

HPA: 3時間の降水量 現在から3時間後までの降水量です。

CAPEConvective Available Potential Energy対流有効位置エネルギー(地上)。これは大気が不安定な状況を示しています。空気は上昇しようとする力があることを示し、激しい降水を伴う現象の可能性を示しています。しかし実際は対流がすでに終わっている可能性もあり対流不安定層かは慎重に見極める必要があります。個人経験的にはあまり参考になりません。

可降水量(かこうすいりょう)地表のある面を基点としてその上空の大気を大きな鉛直の柱(大気柱)と考え、そこに含まれる水蒸気や雲がすべて凝結して地上に落下(降水)した時の降水量のことです。大気の移動が全く無いと仮定すれば、これ以上の降水量は無いと考えられる値ですが実際は大気が循環しているため、ある時点での大気中の水の総量を表す数値の1つとして用いられるとのことです。単位は降水量と同じmmです。

WPD:風力エネルギー密度 (measure of power available in the wind) 風が持つ運動エネルギー密度。風車を回したり、屋根を吹き飛ばしたりする力とのことです。3000m級の山は700hPaで風の強さを占います。

雲水量:(くもみずりょう)雲は水蒸気が凝結してできた微水滴です。(つまり雲の量です。)1立方メートル中に含まれる微水滴の量を雲水量と言います。雨になって落下してくる可能性があり上記3HPAと似た分布となっています。気象衛星に映る雲とだいたい一致しているようです。(細かくは違っています。)

上記はearthのデータ

上記は同時刻の気象庁の静止気象衛星により観測した雲画像

海面更正:海面更正気圧です。どの高度を選んでも色(圧力)は変わりません。

体感温度:熱と風の組み合わせで生じる体感温度。

 

《投影法》

地球の立体の表面を2次元の平面上に表現する方法。(資料1資料2

A=アトランティス(モルワイデ図法)、AE=正距方位、CE=正距円錐、E=正距円筒、O=正射、P=パターソンS=平射、WB=ウォーターマン蝶型、W3=ヴィンケル第3

 

天気を悪くしているものは何?

低気圧が天気を悪くしていることが多くありますが、実際はどうなると天気が悪くなるのでしょうか。

台風の接近、台風から伸びた雲

低気圧の接近

梅雨前線、秋雨前線

西高東低の気圧配置での季節風

夏の積乱雲、ゲリラ豪雨

気圧の谷の接近

など色々ありますが、天気が悪くなる基本メカニズムは、湿った空気が冷やされることで空気中の水分が霧状に変化し雨や風につながることです。空気が冷やされるケースとしては❶空気が熱せられて上昇し温度が低下 山に風が吹き空気が押し上げられ温度が低下。❸温暖・寒冷前線に空気が乗り上げるもしくは潜り込む。 台風や低気圧等で空気が上昇し温度が低下。 寒気等の影響で気流が不安定になるなどです。すべては太陽から得たエネルギー(地球からの自転エネルギーも多少あるかとは思います。)です。

では実際どうでしょうか

上記は2017111323時の気象庁:高解像度降水ナウキャストの雨の様子です。

上記は同日・同時刻2時間前の天気図です。この天気図で上記降水の関係が読めるでしょうか?

同日同時刻 気象衛星ひまわりの画像では雲だらけで天気は悪そうですが、降水場所がわかりません。

http://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/watervapor/1/201711132310-00.png

水蒸気チャネルも同様に、降水場所を判断出来ません。

earth】の雲水量は気象衛星の雲の量に大体合っているように見えます。でも降水場所は不明です。

上記は【earth】の3HPA3時間降水)ですが雨の場所と合っているように見えます。earth】の3HPAが降水場所を一番予測しやすいデータとなると思います。

上記は、前線でも低気圧でもない難しいケースでしたが雨の予測が簡単でないことが分かります。

翌日1114日の天気は大阪が雨でしたが気圧は上昇しています。気圧だけで判断すると上記のような例もあるので簡単ではありません。

同日14日天気図では下記のようになっています。

気象レーダーの雨の様子は下記です。

雨の降る場所が前線と関係ないところになっているように見えます。

しかし【earth】の3HPA3時間降水)の結果とは雨の場所が一致しているように見えます。

天気図と重ねても前線と低気圧と雨の関係がはっきりしていませんでした。天気図だけで降水予測をすることが大変難しいことが分かります。

 

等圧線と風の関係

天気図の気圧配置で地上に吹く風の方向が想像できるものなのでしょうか。

立体構造

上記は、気象庁の天気図に、【earthの風を無理やり重ねたものです。上記でご説明したように地球が回転していなければ風は気圧の高いところから低い所に真っすぐ流れるはずなのですが、コリオリの力が働くため、風は等圧線を斜めに横切るかほぼ平行に流れていることが分かります。→地衡風(ちこうふう)と呼ばれています。

特に前線の位置では速度が速く、急に変化しているようです。等圧線が混んでいるところや台風、低気圧の渦近くでは速度が速くなっています。

【因みに気象庁の投影法(球面を平面に変換する方法)はポーラーステレオ法とのことです。「Earth」ではCE(正距円錐)が近いと思われますがそれでも重ねるとかなりずれます。】

 

重ね図_台風21号

風は気圧の高いところから低いところに流れるはずですが実際は等圧線と平行か斜めに横切って吹いています。低気圧に向かって真っすぐ吹きたいのですが、北半球ではコリオリの力が右に働くため気圧の低い方向に対して右に向かう力を受けます。これが続くと低気圧は左回転の風の流れになります。

重ね図_台風21号

上記青矢印は地球が回転していない場合で、オレンジ色がコリオリの力を受けた場合の風の流れです。コリオリの力以外にも遠心力と地表からの摩擦(スピンダウン)の影響も受けます。

 

空気の渦(うず)の不思議

空気の渦(うず)はタバコの煙のようなくるくる回る気流から、ビル風のように回転する気流や竜巻、そして台風など回転する流体はとても不思議な現象です。

流体力学での渦は良く研究されていますが、その中で、ヘルムホルツの渦定理というものがあります。ここでは学問的に深入りしないのですが、Lagrange の渦定理とも言われるようで、『渦の不生不滅の定理』つまり、さらさらした気体は一旦回転運動するとその回転は維持されるという法則があるそうです!(もちろん空気は粘性があり摩擦もあるので実際の運動は長続きしませんが…)

考え方によっては大きな低気圧の回転も小さな空気塊の回転の集合体ともみえますね。

 

自然の謎、相似性(そうじせい)

この世界は色々不思議な法則で出来ているのですが、その一つに相似性があります。

上記は気象庁の資料ですが、風の強い日は、島から規則的な模様が見えます。これは流体力学では有名なカルマンの渦と言われるものです。

この渦は、コーヒーにミルクを混ぜる際やお風呂場でも簡単に作ることが出来ます。強い風の影響で山の木々や電線が「ピュー」と鳴るのは、このカルマンの渦が出来ていることになります。

上記のようにスケール(大きさ)の違ったものが同じような振る舞いをすることを相似性と呼びますが、気象のフラクタル性を感じます。流体以外にも株式の相場木の枝人間の体宇宙など色々な場所で相似性を見つけることができます。大きさは違えども同じ原理が働いているということなのですね。

 

なぜ気圧が低下するの?(ミステリー)

気象の本を見ると、当たり前のように高気圧低気圧があることが前提で説明されています。でも、なぜ気圧が低下するのかの理屈が今一つはっきりしません。

低気圧や台風も空気が一旦回転を始めるとそのエネルギーを保存しようという上記の渦(うず)の不生不滅の定理が働くようです。不思議なのが『温帯低気圧』について空気の回転気圧低下をもたらしているのか、上昇気流による気圧低下で空気が回転しているのかインターネットや文献ではわかりませんでした。(気象や流体力学の勉強をすれば分かるのでしょうが…)

東海大学出版会 改訂版 「流れの科学」によると、海洋の渦(うず)で興味深い記述があります。海洋の渦は反時計回りだと海面がへこみ時計回りだと海面が盛り上がる?とのことです。

https://encrypted-tbn0.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcQuHRiui60gVyOmS-IPAjvaXTP6I88zb2z3iu6x1e1Zdrj2p-kSEw 

上記写真で、海面の渦コップの中の渦の中心部分が窪(くぼ)む理由は、回転によって海水に遠心力が働き、重力と釣り合うように海面が傾くためです。資料 

上記のからの情報を独自解釈した説明いたします。(ご興味ある方はや流体力学の参考書をご確認下さい。)

まず、地球上の或る地面に人が立っているとします。その立っている人の回りの土地(下記、円盤状の地面)は地球の自転の影響で水平方向に回転しています。少し分かり難い考え方かもしれませんが、北極星の固定カメラからから見たとすると下記の緑の円形の土地は地球が1回転すると人を中心に見かけ上、1回転していることが分かります。

北極では左回り、南極では右回りです。実際の回転量はフーコーの振り子の実験を参考にすると北極点南極点は地球と同じ回転量(11回転)で、赤道に近づくと円盤が緯度分傾くので水平方向の有効な回転量が減ることになり赤道上では水平方向の回転無しとなります。

次に、下記の模式図は円形の地面(緑色の筒)の上に(水色)が乗っているとします。

北半球では地球が左回転(反時計回り)しているため地面も左回転しています。北半球の海は地面と同じ速度で左回転しています。回転速度=地面の回転速度

海水は停止している(回転していない)ように見えていますが、実際は地面と同じ速度で回転しているため遠心力が働き、海水が重力と遠心力の釣り合う方向に引っ張られるため中央が窪みます。しかし、この窪みは海全体で起こっているので、地球の上に住んでいる人からは窪んでいるようには見えません。おそらく水平に見えているはずです。

上記の例は、海の上で左回転の渦が出来たとします。すると 回転速度=地面の回転速度+渦の回転速度 となり、回転速度が速くなるため遠心力が大きくなり窪みが深くなります。実際海上でも海面は沈みます。

上記の例は、逆に右回転の渦が出来たとします。すると 回転速度=地面の回転速度―渦の回転速度 となります。渦の回転地面の回転より小さいか同じであれば、合成された回転速度が遅くなるかゼロとなるため遠心力が小さくなり窪みが浅くなるか最小の場合は平(たいら)になります。ところが地上から見ると地面だけの回転時の窪みが水平に見えていたので、その水平を基準に見ると海面が盛り上がって見えるということになるようです。

上記と同じ原理で台風低気圧を説明すると北半球では空気が左回転すると中心が平均気圧より低くなり、右回転すると中心が平均気圧より高くになるのではないかと推察されます。(ただしこの説明は、大型の台風や低気圧、高気圧用となります。竜巻や渦潮のような小型の渦現象では地面の回転速度よりも早くなるため左右どちらの回転をしても中心圧が遠心力の影響で下がります。)

台風や竜巻は遠心力により、すぐに分解しそうに思われますが、遠心力で中心部の空気が引っ張られると空気が伸びて気圧が低くなり求心力が働くため回りの空気を引き戻すこと考えることも出来ます。

(上図は空気塊が遠心力で引っ張って真中の空気が伸びているイメージ)

余談ですが、高気圧が遠心力で分解しない理由は、低気圧が上空に吸い出した空気が高層で余ってしまい、集まる場所で空気が高く積み上げられた結果気圧が高くなり→地上に降下することになり、中心から外に拡散する流れとなっていますがコリオリの力で右に回転した気流となります。つまり分解し続けている?!ことになります。

話を戻すと、気圧低下の原理は、インターネット上ではベルヌーイの定理で説明している怪しいものもあります。ウィキペディアはスピンダウン効果(地表近くでの減速:下台風で説明)で説明していますがこれは、中心気圧の低下が地上において吸い上げる力が生じることを言っているだけで気圧低下の原因ではありません。

もともと地球の中緯度は、流体力学的に地球自転効果の影響で不安定な場所となっているようです。つまり低気圧が起こりやすい場所なのかもしれません。(赤道と北極との中継地点で熱交換場所ということかもしれません。)

後で記述しますが、上空でジェット気流が蛇行しているところに気圧の低い部分が出来、その気圧低下が地表に影響を与えているとも言えます。

上記は気象庁の高層天気図と【earth】の250hPaの流れを合成したものです。空気が左カーブするところは低気圧になり、空気が右カーブするところは気圧が高くなっています。(これは上記の模式図の考えと一致しています。)

上記図では、速度が速いところは白くなりますが、等圧線では気圧が高くなっているところもあるので、ベルヌーイの定理(速度が速くなると気圧が下がる)も当てはまりません。また空気の速度の違いにより空気が余る、不足するという説も疑問があります。空気の道が広くなると低気圧、狭くなると高気圧と言う説もピンと来ません。

上空に強いジェット気流があると、渦管が一種のストローのようになり空気を吸いだしていることは想像できます。その場合はベルヌーイの定理もまんざら嘘ではない気もします。

(単なるイメージです。渦管下部はスピンダウン効果、上部はジェット気流のベルヌーイ効果で引き寄せる??)

あと水蒸気の分圧も関係しているはずです。1気圧(地上)は平均1013hPaですが内訳(分圧)は、窒素が790hPa、酸素が213hPa、水蒸気が飽和している場合は40℃で73hPa、0℃で6hPaなので上昇による温度低下の影響で水蒸気圧低下が低気圧にも関係しているはずですね。(講談社 図解気象学入門からのデータ)

 

つぎに視点を変えてearth海面更正気圧の分布を確認してみます。

海面更正とは地表の気圧を海面レベルに置き換えた気圧です。高地で気圧が低い所でも、海面の場合に計算しなおされています。

地球全体が見えるようにパターソン円筒投影で表示しています。青と赤は海面更正した気圧が低い部分で、黄色や白高い気圧となります。これをみると赤道上は太陽の影響で気流が上昇するためか気圧が低くなっており、中緯度では低気圧の穴がポコポコ空いています。

 

上記は2017112315時を北極の真上から見たものです。

日本付近をクローズアップします。青黒い部分が低気圧です。不思議と風は回転の渦となっていません。そのため風による遠心力での低気圧では説明が付きません。

上記は同じ時刻で250hPaです。上空には強いジェット気流が流れています。

上記は3時間前の12時の天気図です。上記の現象からは低気圧は(とら)えどころがないように思います。

南極は太陽の当る量が少ないのに気圧が下がっています。

上記は南極250hPa付近(上空約10km)でのジェット気流の流れです。見方によると非常に大きな低気圧が回転していることがわかります。地球の気流の循環からは極循環つまり冷やされた空気が降下してくると圧力が高くなるはずなのですが低圧になっています。

やはり低気圧は不思議です。

 

空気は重い??

普段あのひとは空気のようだなど、悪口を言われることもありますが、空気は軽く存在しないイメージがどうしてもあります。実際の重さはどれ位なのでしょうか。

1mの大きさの箱でも1.2sの重さがあります。(水だと1.2リッターの重さ)信じがたい重さです。ただし周りの空気も重いので浮力が働き重さをまったく感じませんね。

では1気圧(1013hPa)とはどれ位の圧力なのでしょうか。

そもそも気圧とは上に乗っている空気の重さの総合計です。高度が高くなると気圧が低くなる理由は上に乗る空気の量が少なくなるためです。

上記1mx1mの緑色の板の上に乗る空気の高さは約17〜25km位までなのですが、なんと10トンもあります。資料(汗) 1立方メートルの水が10個上に乗っているのと同じ重さ(水深10mのプールと同じ圧力)???となります。

地球の空気はかなり圧搾された状態というのがよく分かります。実際の板は下からも10トンの気圧で押されているので重さを感じることはありませんが、ドラム缶の空気を抜き真空にすると気圧でペチャンコになります。

https://www.hiraki.co.jp/ec/images/hosoku/35488/35488.jpg

(イメージ:布団圧縮袋は大気圧で押されています。)

話は変わりますが空気の重さが分かったので、低気圧の重さを推測してみます。

直径が約1400kmで高さが約4000mと仮定すると、物凄い大きな数字になります。この空気が回転しているので大変なエネルギーとなることが分かります。

 

空気が宇宙に逃げない理由

空気が宇宙に漏れださない理由は、皆さまご存じかと思いますが、地球の重力が働いているからです。空気は酸素や窒素の分子が飛び回っている状態ですが、一粒の分子も地球から脱出するために必要な速度に到達出来ないからです。

 

低気圧の種類

低気圧には何種類あるのでしょうか。結構種類があります。資料資料

代表的には以下です。

温帯低気圧(日本付近を良く通る低気圧)

寒冷低気圧(極近くで出来る非常に冷たい低気圧。ジェット気流と強く関係している)

熱帯低気圧(大型で風速が17.2m/秒 以上のものは台風呼ばれ、秋に日本を通過することが多い)

 

温帯低気圧の立体構造

温帯低気圧の高さは色々ですが、おそらく40006000m付近まであるように思われます。また上空のジェット気流の渦につながっているケース渦につながっていないケースがあります。

低気圧の中心(渦管)は真っすぐに上に伸びているのではなく、西側に傾く傾向があります。上空510km付近でジェット気流にぶつかっているか、蛇行している渦に接続されています。

上記は太平洋に出来ている低気圧の例です。この低気圧も上部はジェット気流の渦に接続されています。

下記の例は、渦管が500hPa付近でジェット気流に接続されている例です。(2017111615時)

低気圧から上空に伸びた渦管は700hPaを通り抜け500hPa付近でジェット気流に突き当たっていますが渦にはつながっていません。(渦管は西側に傾いています。)

 

傾圧不安定??が天気のかぎ

傾圧というのは、等圧面と等温面が平行でない状態ということですが、天気の仕組みを理解するうえで非常に重要となる現象です。少し深く考えてみます。

まず安定した大気は地面付近では密度が高く、上空に向かって密度が低くなっています。この大気だと多少風が吹いても大きな対流は起こりません。

上記は極端な例ですが、逆の場合は対流が発生して元に戻ろうとするはずです。

では、地球の中緯度が流体力学的で不安定な場所とはどういうことでしょうか。

上記は、赤道と北極もしくは南極を縦切りした大気です。赤道付近は温度が高く、極は温度が低いため密度が違っていますが上空に昇るほど密度&温度が下がりますので一般的には上記の状態となっています。

ここで何らかの力が加わり空気が赤道もしくは北極・南極方向に押されたとします。するとその空気は密度が異なるため極に押されたものは上昇し、赤道側に押されたものは降下することになります。つまり左右の流れが上下の対流を引き起こすことになります。資料

図はお盆の上に水を張ったイメージですが、とても不安定な状態です。

ちょっとした流れが引き金で大きな対流を生み出す不安定が地球の中緯度にあります。この不安定な場所が地球の自転によりコリオリの力を受けることで渦という空気の回転を生み出しているのです。

 

次に、東西に密度の傾きが生じていると仮定します。上記の図は西に傾いている例です。このようなことが生じる理由は大気循環で、ロスビー波が南北に蛇行しているため東西でも同様の密度の違いが生じていると考えます。

さてこのような環境で、左回転の渦が出来た場合は東西それぞれの方向に空気が加速されることが分かります。左回転は低気圧を発生させるため発達することになり、気流が北側で上昇、南側で降下することが直感的に想像出来ます。

では右回転だとどうなのでしょうか。

同じくそれぞれ加速されることになりますが、右回転つまり高気圧は上空の空気の量がものを言います。降下する空気がなければ右回転も生じないので基本的に傾向不安定は低気圧の発達を促すと考えるのが自然なのでしょうか。(北半球の高気圧はコリオリの力に逆らって右回転をするため相当な位置エネルギーが必要なのかもしれません。)

 

温帯低気圧のライフサイクル

日本に接近する温帯低気圧(一般的には低気圧)の生まれから発達、終焉について考察します。

まず低気圧は温度の違う空気の位置エネルギーが原因で発生していると考えられています。空気は以外と熱伝道率が低いためなかなか熱が伝わりません。そのため暖められた空気と冷やされた空気がちょうど日本付近の緯度で出会うことになります。

低気圧のエネルギー

模式的に示したものですが冷たい空気は重いので下に潜り込もうとしますが、温かい空気は軽いので冷たい空気の上に這い上がろうとします。この空気の流れが回転を伴うと渦(うず)が出来ますが、渦の流れが一旦出来てしまうと、上記ヘルムホルツの渦定理により回転を維持するような流れになります。

低気圧の発生期は上空のジェット気流が強いと高層に流れる空気の量を補う必要が生じるため、下層での上昇気流が発生しやすい下地があるとされています。

下の図は平成29910日から4日間の天気図です。

 http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/data/wxchart/quick/201709/SPAS_COLOR_201709100000.png http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/data/wxchart/quick/201709/SPAS_COLOR_201709110000.png

 http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/data/wxchart/quick/201709/SPAS_COLOR_201709120000.png http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/data/wxchart/quick/201709/SPAS_COLOR_201709130000.png

インターネット上の説ですが、低気圧は偏西風に押されて西から東に移動するのではなく、ドミノ倒しのように温かい空気と冷たい空気が混ざるエネルギーを西側から開放しながら東に移動するという説明があります。ドミノが倒れる方向は偏西風に沿って発生しています。

また上層のジェット気流の蛇行と密接に関係しています。詳細は下記でお伝えいたします。

 

発達する低気圧を見分ける

日本に接近する低気圧は、温帯低気圧 ❷寒冷渦(寒冷低気圧) ❸熱帯低気圧 が代表例ですが、特に急速に発達する爆弾低気圧(暴風雨をもたらす温帯低気圧)の見分けを誤ると遭難に直結します。温帯低気圧について少し掘り下げてみます。ちなみに爆弾低気圧の定義は北緯60度で24時間24hPa以上急速に発達する低気圧です。

ナツメ社の『気象・天気図の情報説明』によると、低気圧が2個日本に近づいた場合は要注意とのことです。

ただそれだけの判断に頼るのは厳しい面あります。

ここは気象庁が発表している48時間天気図を参考にするのが確実ですが、下記例を見てみます。

 

11106時 中央上に1004hPaの低気圧があります。

111012時低気圧の下に前線を伴った低気圧が発生。これで2個の爆弾低気圧の素地が出来ました。

111018時 2個は1つにまとまり発達しました。

11113時 気圧がどんどん低下しています。

11116時 低気圧は976hPaまで発達しました。1004hPaの低気圧が、1日で28hPaも気圧低下していますので爆弾低気圧と言えます。

上空のジェット気流を確認します。

上記は11106時の天気図と【earth】の海面更正気圧及び250hPa(約10km上空)のジェット気流を重ねた図です。

日本を通過する低気圧は、ジェット気流の蛇行している曲がり角のすぐ右下にあります。これは低気圧中心(渦管)が蛇行で突き出た部分に接続されている内側に出来た左回転の渦につながっているためです。

111012時ですが、これもU型に曲がった蛇行の右下に低気圧があります。

111018時ですが、同様です。

11113時ですが、やはり同様です。

11116時です。これも同様に

高層天気図(見かたが難解)を見ると、250hPaでみると…

(データは気象庁ホームページ、高層天気図利用)

上記、色を付けた部分ですが、高層の低気圧が南に下がっていることがわかります。この張り出した低気圧の谷は、ジェット気流の蛇行に関係があります。

11106時、上空500hPa(5000m付近)は強いジェット気流が流れています。

 

地表の温度も青いところが氷点下で、黄緑色が10℃以上あります。低気圧はこの温度差エネルギー(冷たい空気と温かい空気が上下に混ざり合う力)を回転エネルギーに変えていると思われます。渦が出来ることにより、上空の低気圧が地表にも影響を与えて地表の低気圧を発達させています。

つまり推測としては、@北と南で温度差がある→(低気圧を発達させるエネルギー源がある)A500hPa上空に強いジェット気流が流れている→(空気の出口がある)B高層の低気圧の谷が南下している→(250hPa付近のジェット気流が蛇行して南に張り出しており、250hPa付近の高層の低気圧が温帯低気圧の空気の渦により地表に引き込まれる、もしくは上空から空気が吸い上げられる)Cジェット気流の気圧の谷の東側にあるという条件が揃うと低気圧は急速に発達すると思われます。(この正確な情報は、気象予報士のテキストをご参照ください。)

そして、このサイクルは西からドミノ倒しのように連続して進み、時速45kmで東に移動して行くのですが、上空のジェット気流の蛇行も流れ同様に反時計回りに回転しているように見え、下の低気圧もそれに追随して移動しているようにも見えます。

上記動画は500hPaでの温度を見たものです。2017930日〜119日まで11コマとしました。これを見ると北極のロスビー波は、だいたい26日周期で左回りに回転しているように見えます。ヒトデの足のように伸びた寒気が周期的に日本上空を通過していますが、この足がジェット気流のU字に曲がった部分と一致していますので、低気圧と高気圧もヒトデの足と同じ周期で日本上空を通過すると推察されます。

 

台風について

台風の発生、発達、消滅のサイクルを説明するのは大変なのでここでは省略します。

基本的には台風発生の条件は完全に解明されています。しかし条件だけでは台風が出来ないので、発生メカニズムは実はまだ専門家もよく分かっていないようです。

簡単にまとめると下記2つの仕組みが必要と考えられています。

@太陽に暖められた温かい海流と水蒸気が上昇するため地表付近の気圧が低下する。

上昇の説明で潜熱という言葉が良く使われます。意味としては、温かい水蒸気が上昇すると水滴に変わるがその際、持っていた空気に溶けるエネルギー《気体化していたエネルギー》を放出して回りの空気を暖めるため空気が冷えずに上昇が続く現象です。つまり上昇気流が高層まで止まらないサイクルとなります。しかし潜熱のエネルギーは元をたどれば太陽熱が海面を強烈に暖め、大量の水が高温の水蒸気として空気に溶けるエネルギーです。

熱は高く登るため、ホットタワーとも呼ばれているようです。

大量の水蒸気が上空で冷却され液化することは気圧低下につながり、台風を発達させる原動力にもなっています。

A上空の回転する気流(メソスケール対流渦)、が下層部分で生じた上昇気流(ホットタワー)を一つにまとめる役割を担い台風を大きく発達させる。

この2つの仕組みが組み合って、はじめて大きな台風と発達すると考えられています。台風の中心気圧が低下するため回りから中心に向かって風が吹こうとしますが、地球が自転しているためコリオリの力が働き巨大な空気塊が回転を始めます。

台風の発達段階では、スピンダウン効果が説明されています。これは地表近くでは風が地形の抵抗を受け減速するため遠心力が弱くなることを言っています。(コップの中でお茶を回転させると底の中央に茶葉が集まる現象と同じ。)

 上図は地表近くの流れがスローダウンしていることを表しています。

上空では中心に引き込む力遠心力コリオリの力がバランスして台風の回りを旋回する風(なかなか中心に寄って来ない風)となりますが、地表付近で風の速度が落ちるため遠心力も弱くなり、低気圧の吸引力が勝ってしまい中心に引き込まれる風の角度が強まります。すると台風のエネルギー源となる地表付近の水蒸気をたっぷり含んだ熱い空気の吸い取る量が増えることになり台風がより大きく発達することにつながります。(参考資料:天気と気象についてわかっていることいないこと ベレ出版)

上図はスピンダウン(回転低下)による吸引力アップ効果イメージ

台風が日本を通過すると、熱帯低気圧温帯低気圧に変わります。この呼び名は結局のところ、渦(うず)のエネルギー源が何かで分類されています。巨大な空気の回転渦が前線とぶつかると、温帯低気圧発生トリガーとなるのです。見方を変えると別の低気圧に回転エネルギーをバトンタッチして台風が消えたと言えるのではないでしょうか。

参考までに台風の高さですが、250hPa(高さ約10km)位です。

 

山の天気VS平地の天気

山の天気と地表の天気の違いはズバリ地形によるものです。

地形の影響などをうけて,ある特定の狭い地域だけに吹く風は、局地風と呼ばれ、天気図や数値シミュレーションでは表すことが出来ません。しかしその地域の天候に大きな影響を与えます。基本的には山や谷などで風の流れが左右、上下に強制的に曲げられるため、風が強まったり(弱まったり)、強制的な上昇気流(下降気流なども)が発生するため、霧や雲の発生、フェーン現象による温度上昇や、おろし風のような独特の気象現象を引き起こします。

 

本題の天気予測

そろそろ本題の気象予測を説明いたします。ただ精度は荒いのと、正確性の検証がこれからなのでご了承ください。

@雨が降るかどうか、風が吹くか

これが一番関心あるところです。

まずearthhttps://earth.nullschool.net/ を開きます。

 

予測したい日時を選択

メニューをクリックして、右下の【日本語】をクリックします。するとメニューが日本語化します。日本語が出ない場合は歯車マークをクリックすると日本語が選択出来ます。

その次「操作」(英語はControl)で予測したい日程を選択します。「>」「>>」がありますが、一つだけのものは3時間ずつ変更し、2つあるのは1日毎に時間が飛びます。上記の「日付」(英語はDate)で表示されますので確認します。(過去に戻ることも出来ます。)

日本語メニューの拡大

山の高さを選択

見たい高さ(「高度」、英語はHight)を選択しますが、ここでは1000hPa(約100m)としていますが登る山の高さで850hPa(約1500m)、700hPa(約3500m)を選択します。

なおLocalとは現地時刻(日本だと日本時間)で、UTCとは協定世界時を示しています。(以前はグリニッジ標準時(GMTが標準で使われていましたが、現在は概念を修正したUTCが使われています。)

降水量と地域の選択

「レイヤー」を選択(英語ではOverlay)ですがここは3HPAを選んでください。この3HPAとは3時間の降水量を示します。

地図を目いっぱいズームアップします。(マウスのホイールを使います。)見たい地域をクリックすると緑色のが表示されます。右側に緯度、経度が表示され風の方向と速度が表示されます。その下に3時間の降水量として3.5mmが表示されます。

ただしこのデータも日々変化しているのでどこまで信用できるのか不明です。

上の昨日17日に見たデータ2017111812時予測と下1日経過した同じ時刻のデータがすでに結果が少し異なっています。

上記は1日後の188時に見た2017111812時予想。

風の強さ

あと山頂でどれ位風に煽(あお)られる可能性があるのかを占います。

「レイヤー」WPD風力エネルギー密度)を選択すると(W/m2)という単位で風のエネルギーが表示されます。この値は風力発電などで使われるものですが、体がどれ位風に押されるかの参考になると想像しています。上記の例だと0.5kW/m2)となります。

A視界があるかないか

山頂での眺望が得られるかを占います。まず「雲水量」(英語はTCW)をみます。これは雲の量ですが雲が視界を邪魔するかどうか予測します。

 

つぎにPM2.5の量を予測します。折角山頂に立っても低山の場合はPM2.5でまったく視界が無い場合もあります。

見方は、メニューの「モード」から「粒子状物質」を選択し、その下の「レイヤー」PM2.5を選択します。上記は2017111219時の予測です。余談ですが中国と韓国での濃度が非常に高いことがわかりますね。

日本気象協会のデータhttp://www.tenki.jp/particulate_matter/と比較してみます。感じは似ているものの少し違って見えます。気象庁のデータを見るとPM2.5はすべて中国から来ていると思っていましたが、earthデータでは発生量は異なりますが日本もPM2.5を出しているようにもみえます。

上記が1415時の予測ですが、earthデータのシミュレーション予測では下記となります。

結果は大きく違っており、このあたりは今後検証していくようにいたします。

 

B雪が降るかどうか

気象予報の雪が降るかの判断は、「地上付近で3℃以下」「上空1,500m付近(850hPa付近)-6℃」「上空5,000m付近(500hPa付近)で-30」とのことです。

上記3HPAを確認した後、上空の温度を確認します。

上記は500hPa-30℃付近の寒気ラインを手書きで入れてみました。

 

「大気の状態が不安定」とは

テレビで、『大気が不安定な状態』と説明を聞くことがあります。

空気が乾燥していると1km上昇すると10℃温度が下がります。ところが湿度が飽和した空気は6.5℃しか下がりません。なにかの事情で湿った空気が持ち上げられた場合、回りの温度より高くなるため上昇が続くことになります。この状態を大気の状態が不安定といいます。下層の湿った空気と上層の寒気がある場合、気流が乱れ天候が悪くなります。

earth】では、CAPEを選択すると対流有効位置エネルギー表示できます。この値が高いと大気が不安定と判断できます。しかしこの値を見ても雨が降るかは判断できないように思います。

 

まとめ

天候の予測は簡単ではないのですが、スーパーコンピュータの数値予測の力を借りて予測する一つの提案です。時計メーカーが宣伝しているような気圧低下だけで天候を占うのは危険です。

また天気図を読むだけでも天候予測が難しいことが分かります。(高層天気図も含めて、気圧配置だけでは見えない気象の現象があります。それは山の地形も同じで、2万五千分の一地図でも見えないピークや見えないコル(鞍部)、小さいけど渡れない谷があるのと同じですね。

最後までお付き合い下さりありがとうございます。気象遭難にはくれぐれも気を付けて登山を楽しみましょう。

 

最後におまけ

色々遊べるearthですが、まだご紹介していない 海(海流、波浪) 大気化学 について触れてみます。

❶まず海流についてです。

『モード』で『海』を選択すると海流の流れが見えます。

日本付近には南から北に流れる黒潮がはっきりと見えます。速度は1秒間に1.48mとなっています。この図をみると海流は真っすぐに流れていないことが非常に良くわかります。千島からくる海流(親潮)はこの時期見えません。

波についての情報も取れます。

ついでに、海水面温度異常というやばいデータもあります。

地球の異常事態が進行しているのかもしれません。資料

つぎに大気化学(英語ではchem)というデータが選択できCOSC(一酸化炭素地上濃度)、CO2SC(二酸化炭素地上濃度)、SO2SM二酸化硫黄地上質量)のデータを見ることができます。資料 地球の大気汚染状況が確認出来ます。

CO(一酸化炭素)は中国の排出量が高いことがわかります。

CO2(二酸化炭素)だと日本も結構排出しています。

SO2二酸化硫黄濃度)は、見るのも怖いです。火山性のものもありますが、大部分は石炭や石油(重油、軽油、ガソリン等)を燃やした跡です。

 

皆様も色々遊んでみてください。

 

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