ハイアイアイ通信


Sep.26

 しばらく更新を休んでいる間に驚くべき情報が主任研究員【Ormitte】に寄せられていた。なんと、絶滅したと思われていた鼻行類が実は今も南太平洋のとある場所に生息しているというのだ。
 情報を提供してくれたM氏は身元を一切明らかにしないという条件のもと、我々の取材に応じてくれた。M氏は希少生物の標本を収集するのが趣味で、かなり際どい方法で世界各地から採集を続けているため、各国政府の関係機関を始め、自然保護団体や動物愛護協会、そしてどういうわけか人権団体からさえも目をつけられているという、とても危険な立場にある。そのため当研究所としては氏の安全をはかるため情報提供者の身元についての問い合わせには一切応じることはできないので御了承願いたい。
 さて、連絡を受けて我々が出向いた氏のアジト?には度胆を抜くようなものが待ち構えていた。実のところ、我々としても半ばガセネタだろう、キツネの襟巻かなんかを細工して作った「鼻行類の剥製」を見せられることになるのだろうと思っていたのだ。ところがそこには、生きて、鼻で歩いている!ナゾベームの姿があった。しかもそれは主任研究員【Ormitte】が知る限りでは、H.シュテュンプケが『鼻行類』のなかで報告していない新種のナゾベームであるらしかった。
 我々は動揺しつつもこれは一体どういうことなのかと氏に質した。氏によると、アメリカの行なった核実験が引き起した急激な地殻変動によってその生息地、ハイアイアイ諸島もろとも海に沈んだとこれまで信じられてきた鼻行類は、今もそっくり生き残っているというのだ。実はそのときに沈んだのは全く別の島々で、ハイアイアイ諸島はそのままの形で残されている。というのも、H.シュテュンプケをはじめとするハイアイアイ・ダーウィン研究所のメンバーらの提案により、ハイアイアイ諸島の正確な位置は最後まで公表されず、件の核実験の際に「ハイアイアイ諸島は完全に水没した」という偽の情報を政治的な工作を労して発表することにより、歴史の中からハイアイアイ諸島を完全に消し去ったのだった。このことによって、もともと環境適応力が低く、人口の流入によって絶滅が危惧されていた鼻行類たちの生息条件をほぼ理想的な形で保存することに成功したのだ。
 さっそく当研究所では、M氏からの情報をもとにハイアイアイ諸島へ研究員を派遣することにした。ハイアイアイ諸島からのレポートは後日「ハイアイアイ通信」としてお伝えしてゆくので御期待!


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