五條探検隊

23 土倉庄三郎 NEW
22 策道

21
楳図かずお
20 藤代昇の五條回顧
19 女子水泳王国
18 河崎なつ
17 青いぶどう3
16 青いぶどう2
15 青いぶどう1
14 二見城
13 和歌山線
12 昔の五條
11 西川と草谷寺
10 古代の真土峠
9 天誅組の門
8 まちや館
7 大澤寺
6 女性俳句会「紅樹」
5 柿博物館
4 五新鉄道
3 伊勢街道
2 吉野川
1 地名の由来



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21 五條出身の漫画家 楳図かずお

今日の朝日新聞朝刊(2011/8/23)に漫画家楳図かずおさんの記事が掲載されていたので紹介します。
楳図さんは私より4つ年上の五條出身者です。
実家は昔の五條高校の傍の五條市岡口に今も残っています。
子供の頃、楳図さんが二見の私の家の前を散歩する姿を見かけたことがあります。
岡口から商励会通りの坂を下り、新町通りを突き抜けて二見まで、往復では一時間半以上かかる道のりを、散歩のコースにしていたようです。
今は東京の高級住宅地吉祥寺にお住まいです。つい最近自宅を建て替えましたが、個性豊かな超カラフルな家だったので、まことちゃんハウスとしてマスコミを賑やかせました。
70代半ばになった今も元気に活躍しています。

右の写真
うめず・かずお1936年生まれ。マンガ家。「へび少女」 などで恐怖マンガの地平を開拓。ほかに「まことちゃん」「わた しは真悟」など。
2011/8/31にCD"闇のアルバム2"発売=麻生健撮影

人工が勝ること、自分たちが破滅
楳図かずお対談(聞き手・宮本茂頼)

――「漂流教室」は人が死に絶え、荒廃した世界に子どもたちが飛ばされます。
「ずっと子どもをテーマに描いてきました。大人と違って常識にとらわれないので、大きな可能性を秘めているからです。そこで大人のあまり出ない、子どもばかりが活躍する、決定版的な作品を構想しました。子どもだけの世界を瞬間的に作り出そうとしたら、タイムスリップした未来の砂漠が浮かんだのです」
――そこは環境が破壊された近未来という設定です。
「1970年代初め、排ガスなどが原因の光化学スモッグが気になっていました。非常にショッキングで、今までにない良くない兆しを感じました。また、それ行け、それ行け、とばかりに、右肩上がりで、明るい未来を信じている時代でした。マンガでも、未来はロボットが出てくる夢の世界、と。
 でも、あれ、そうかな、という不信感がありました」


建築中のまことちゃんハウス。屋根の上の丸い塔がまことちゃんの顔。最近はファンには中も見せてもらえるとのことである。

――科学技術の進歩は、生活を豊かにすると信じられていたと思いますが。
「自然と闘うのが文明であり、科学は人間の想像を具現化し、立ちふさがる自然を克服する。そうでなければ人間は、イソギンチャクやサルと変わらたい存在です。でも、人工の象徴である都会、例えばローマのような繁栄した都市が滅びていったように、自然より人工が勝ってしまうと、自分たち自身が破滅を迎えるのではないでしょうか」
――代名詞である恐怖マンガも、科学ではとらえきれない閣を描いていますね。
「子どものころ過ごした奈良県の五條の山奥では、夜聞こえる動物の鳴き声、雪の重みで竹が折れ、すきま風が吹きこむ音など、自然の怖さ、迫力があり、その中に人間がいる、という感覚があった。都会では、そんな原始的な本能である恐怖心をないことにしがちです」
――自然の摂理から外れた科学への過信は、震災による原発事故を引き起こしました。
「原発は人工の最たるものですね。造ったはいいけれど、制御できなくなった。後に『14歳』という作品で、すべてのゴミを沈み込むプレートに捨てていたら、噴火が起き、地上に噴き出す場面を描いた。地面の中に何でもかんでも埋め始めると破滅だ、と思って描いたのですが、原発の使用済み核燃料は、まさに地下に貯蔵しているんですね」
――震災後の風景に「漂流教室」が重なって見えた人も多いと思います。ただ、児童も教師も取り乱した「漂流教室」と違い、被災者は整然としていました。
「東北の方々は互いに助け合える人たちでした。でも距離のある東京では商品の買い占めなど、パニックになった。隣人とのつきあいを嫌がり、町中には防犯カメラを至る所に設置し、そもそも疑心暗鬼に暮らしている。東京で大地震が起きたら、ちょっと怖い」
――人類は破滅に向かうのでしょうか。「漂流教室」で子どもたちは「未来にまかれた種」だと自らに言い聞かせ、荒廃した世界で生き抜く決意を固めますが。
「悲嘆にくれる子どもたちが前向きに頑張ろうと変わっていく話を描きたかったのです。私も人類の一員なので、明るい未来を望むけれど、このままでは大変です」
――何が必要ですか。
「繁栄と破滅は、表と裏だと思うのです。繁栄が自然を乗り越えた分だけ、乗り越えられた破滅が増えるのは当然の論理のはず。世の中は賢くなりすぎて、それを見ないようにしています。都合の良い面だけでなく、表も裏もかみしめた英知を持ってもらいたい」

マンガ「漂流教室」(1972年)楳図かずお作

マンガ「漂流教室」は、小学校が突然、荒れ果てた未来にタイムスリップし、その極限状況における子どもたちの姿を揺いた。1972〜74年に「週刊少年サンデー」に連載。現在は文庫版や選集「UMEZZ PERFECTION!」で読める。
800人以上の児童・教師らがいた小学校が、地震のような激しい揺れに見舞われた。外を見ると、見慣れた街はなく、一面の砂漠が広がる。正気を失った教師はまもなく全員が死に、残された子どもたちは生き抜くために手を尽くす。だが、未知の人食い生物の襲来や疫病、食料をめぐる子ども同士の殺し合いなど、様々な苦難が押し寄せる。
小学校が送られたのは近未来の日本であることが、物語の途中で明らかにされる。大地震や環境破壊で地球は砂漠化し、20世紀の終わりに人類はほぼ滅び去っていた。
連載当時、日本は73年のオイルショックで、高度経済成長がストップ。成長の負の遺産として、公害も深刻化していた。
社会不安が広がるなか、同じ年、小松左京「日本沈没」や五島勉「ノストラダムスの大予言」が刊行され、ベストセラーに。「終末」を描いた表現に、大きな関心が寄せられた。
楳図さんはその後、「14歳」(90〜95年)で人類の滅亡への道のりを、真正面から描くことになる。