ユーゴザーパド「検察官」


作 /ニコライ・ゴーゴリ    
演出/ワレリー・ベリャコーヴィチ


鬼才ワレリー・ベリャコーヴィチ率いるロシア演劇の狂言師たち
嗤いと毒のアンサンブル、ゴーゴリの傑作喜劇

 この作品こそ、ユーゴザーパド劇場の旗揚げ公演の一つで、最もこの劇場らしい芝居といえる。
チェーホフ作品と並んで、ゴーゴリの「検察官」はロシアのほとんどの劇場が一度は上演する
演目で、モスクワの老舗の劇場でも、あるいは戦後創立の劇場でも様々に上演されてきた。 
 しかし、ゴーゴリ作品が本来持っているグロテスク性をストレートに感じさせてくれたのが
ベリャコーヴィチ演出の「検察官」だった。                      
それはこの劇場がもともと「素人」集団だったことに深く関係している。ロシアでは小さいと
きから演劇の訓練を受け(少年文化サークルなど)、その上に五年制の国立演劇大学を卒業し
た者だけがプロの俳優として認められる。演劇大学はモスクワではモスクワ大学より入学が難
しいとされる最高学府である。そこに入るのは「声よし、見栄えよし、頭よし」のエリートた
ちである。不恰好、だみ声、仏頂面、「ふとっちょでちび」はあまり歓迎されない。ところが
ベリャコーヴィチの幼友達は、ほとんどが「残念ながら」とても演劇大学には(勉強は別とし
て)受かりそうにない面々。                             
これだけ申し上げれば、なぜ、ゴーゴリ作品のグロテスク性がプロの劇場ではなくユーゴザー
パド劇場で「花咲いたか」お分かりいただけたと思う。抱腹絶倒のグロテスク喜劇を、あまり
難しいことを考えずに鑑賞すれば、感動間違いなし。                  

(奈良演劇鑑賞会ニュース第75号より)
 

あらすじ

 ロシアのある小都市。この街の市長や教育長、判事、慈善病院長、郵便局長、地主たちは市
民から賄賂を取って私腹を肥やしていた。ある日、こうした役人たちを摘発するため、首都か
ら検察官がやってくるとのニュースが入る。ペテルブルクからやってきた一文なしの若者を検
察官と思い込んでしまった市長らは、若者に豪華な食事や酒を振る舞うなど、ご機嫌取りに懸
命。調子に乗った若者のほら話に怯え、保身のため金を差し出す役人たち。市長にいたっては
、自分の娘との婚約まで許してしまう。しかし、若者が街を去った後、彼が友人に宛てた手紙
から検察官でないことがわかり、皆愕然とする。そこへ本物の検察官が到着したとの知らせが
・・・。                                      


 
 
ホームへ