「東京夢幻図絵」

「B29と私」−講演:北村和夫

昭和二十年五月二十五日の夜、B29は東京大空襲の総仕上げにかかった。
焼夷弾の炎壁に閉ざされた中の人妻と少年、それは夢幻の地獄図絵か・・。



演出/今村昌平

出 演

北村和夫


<解説>

 今村昌平、北村和夫この二人、実はおさななじみなのである。
北村を芝居の世界に引き摺り込んだ張本人は今村だ。日大理工の
予科にいた北村は悪友今村の誘いで早稲田に移り、そこで演劇に
のめり込んでいってしまう。今村自身、後に映像の世界へと進ん
で行くのだが、もともとは舞台の演出家を志していた演劇青年で
あった。今回の舞台は今村にとって通算三度目、そして北村にと
っては初の一人芝居となる。都筑道夫の味わい深い小品「東京夢
幻図絵−東京五月大空襲−」を下に、そこには二人の若き日が投
影されているのです。                   

「B29と私」−講演:北村和夫           

 舞台は「東京大空襲を語り継ぐ会」が主催する講演会場、今日
の講演者は俳優の北村和夫である。題は「B29と私」。   
苦手な公演とあって台詞覚えの悪い役者として有名な北村和夫、
用意した分厚い原稿を演壇に載せた。            
「私は昭和二年東京市小石川竹早町四十八番地に生まれました。
生家は昭和二十年五月二十五日の空襲で焼けまして、その焼跡に
残っていたのが「産婆北村ハナ−スグソコ」と書いたこの看板で
した。」と話し始めた。・・・が、大体にして一貫した話を三十
分と続けられるハズはなし。いつしか用意した原稿はそっちのけ
。話は空襲を離れて十八才の北村少年に回帰して行く。そして終
には、友達の話しだといって出征兵士を待つ隣の奥さんとの濃厚
な情事を語り出す。                    
 東京五月二十五日の大空襲の夜、ナパーム弾の火の壁に閉ざさ
れた、それはまるで夢幻の地獄図絵なのか、極楽の図絵なのか。

(パンフレットより)


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