文化座「おりき」

あなたに逢った。心に風が立った。風は母の木霊のようであった・・・・。  
さあ、手文庫を開け。いつかみた愛が伝説などではなかったことを知るために。



  作 /三好十郎 
演出/鈴木光枝

出 演

鈴木光枝 

成田明哉 

小金井宣夫

今関 泉 



<解説>

 初演は昭和19年7月の国民新劇場(築地小劇場を改称)。当時26歳の鈴木光枝は見事にこの老農婦を
演じきり、敗戦間近な暗い世相に「素朴なるもの」の美しい灯をともして、絶賛を浴びました。以来永い間
"幻の名演"とされていましたが、1982年文化座40周年記念公演として38年ぶりに復活、現代におい
ても色褪せないその舞台は多くの方々から新たな感動をもって迎えられ、既に400ステージに迫るという
、鈴木光枝の代表作となりました。飾りのない純粋なものの永遠の美しさ、麦と土のイメージに代表される
最も崇高な、生きとし生けるものの姿。そして、鈴木光枝のおりきは、われわれが永遠に抱きつづける"母"
の愛そのものと言えるでしょう。時空を超越して万人が心をふるわさずにはいられない、本当の感動がここ
にあります。                                          

<物語>

 第二次世界大戦もわが国の敗色が濃厚となった昭和19年の夏のことである。海軍中尉藤堂正夫は、束の
間の休暇を利用して久しぶりに信州八ヶ岳を訪れる。そこは亡き母の思い出が残る土地であり、南方出撃を
目前に控えた藤堂にとっては、これが見納めになるかも知れない旅だった。途中、道に迷った彼はひとりの
老婆に出会う。おりきというその老婆に道順を訪ね、何気なく会話を交わしているうちに、藤堂は自分の胸
に次第に暖かいものがこみあげてくるのを覚える。そしてその暖かさとは単なる親切心とは違う、おりきと
いう人間そのものから滲み出ているものであった・・・・・。                    

(パンフレットより)


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