奈良県吉野郡東吉野村三尾


採集できる石
鉱物名コメント
キースラガー多い下の2つを合わせたものです
磁硫鉄鉱多い一番多い物です
黄銅鉱少ない少し探すと見つかります
方解石 多い白く劈開のある物です

石を見る


2001年9月18日

 二人の子供が、同時に学校の創立記念日でお休みになり、今年の夏は仕事が忙しく、夏休みに旅行が出来なかったので、少し息抜きをかねて吉野の方に行くことにした。
 かねてから、下の子がプールを希望していたので、最近発見した、温泉プールがある温泉、大宇陀町の「あきのの湯」に目標を定めた。
 まあ、それだけではつまらないので(本当はこれがメインなのだが・・・。)午前中は三尾鉱山に行くことにした。(私が勝手に決めるのである!)
 いいわけをすると、「あきのの湯」は、温泉と温泉プール(小さい)が一緒になっていて、いったんゲートを出ると、また別料金になり、食事のために外に出ると、また入湯料を払わなければならないのだ。
 昼からだけなら、大人800円・子供400円で済む!
 このあたりは、子供をお持ちでないと分からないと思うが、子供のレジャーにはお金がかかる。今回も、ガソリン代1500円に温泉+プール代800円*2人+400円*2人=2400円、ジュース代1000円、昼ご飯4000円(柿の葉寿司+パン)夕ご飯、約1000円*4人で4000円、合計約1万3000円の出費である。
 実際、映画でも家族4人で行くと、1600*2+800*2=4800円で、ご飯を食べると1万円位の出費になるのだ!
 不況のご時世、庶民にはつらい話である。

 さて、三尾鉱山であるが、長年行きたいとずっと考えていたところではあった。
 なぜなら、本でも自然銅の一級品の標本が載っていたり、場所も、数年前に兄の家族とこのあたりにキャンプに来たことがあって、地元の人にリサーチし、場所の特定はしてあった。
 あとは行くだけなのである。
 ただ、三尾には「大盛鉱山」という別の鉱山もあったはずであるが、地元の人も知らなかったのが残念である。 文献によると、あまり盛大には稼行されていたわけではなく、産出鉱物もキースラガーだけにとどまっている。きっと小さな鉱山であったに違いない。

 朝9時に家を出て、桜井市を通り、宇陀郡に着いたのが10時頃。そこから佐倉峠・鷲家を通って吉野川上神社・上社についたのが、10時30分。そこからは2分で到着である。
 途中、我が家の大好物である「柿の葉寿司」を買った。だいたいどの店も一個100円くらいであるが、考えてみると、回る寿司屋は2つで100円が多いから、考えると高い寿司ではある。
 兄の子供と泳いだ水辺を懐かしく横に見ながら、目的地に到着した。

 場所はすぐ分かる。川の対岸にこれぞズリ!と言わんばかりの、巨大な石の壁があり、目を凝らすとズリの右には石垣が見えている。ズリの大きさは300m*200mくらいであろうか。向かって右には大きな松も生えている。
 そして、岸のこちら側には、昔の鉱山施設と思われる建物が建っていた。今は材木置き場・加工所として使われているようだ。
 対岸に渡るために、降り口を探したが、この建物の下流は岩場があって、流れが急になり、歩いて渡るのには不向きのようであった。建物の上流に渡れそうな瀬が見えているので、上の方に降り口を探すと、先のカーブに簡単に降りられる道を発見した。
 いろいろな情報によれば、川は歩いて渡れるらしいが、今日は少し水流が多く、短パンをはいていたにもかかわらず、パンツまで濡れてしまった。(しかし、当然ながら石屋はこれくらいではメゲないのである。)

 やっとの思いで対岸に渡ったが、探すのには少しズリの範囲が広すぎて、どこが良いポイントかがどうにも分からない感じだったが、いざ探してみると、どこも同じような感じであった。また、上の方にも鉱石のヤケのようなものがあって登って叩いては見たが、どうやら、良いものは下の方に転げ落ちていてズリの下の方が良いものが多かった。おかげで採集はしやすかった。重い鉱石は早く下に落ちるのであろう。

 今回の狙いは、キースラガーではなくて自然銅だったが、なかなか本で見るような一級品には出会えなかった。
 それでも小さいものはいくつか拾えたし、コバルト華と思われるものや、黒石鉱山と似た産状のキースラガーが、たくさん目に付いた。
 しかも、黒石鉱山の物より数倍も大きい物がざくざくあり、最大の鉱石は35Cm*25Cm位の大きさがあって稼行時の盛大な様子が感じられる物だった。
 その巨大な鉱石を4つもリュックに入れると、もう持ち上げるのが困難で、斜面に寝かし、たったような状態でリュックを背負わなければならなかった。しゃがんでは持ち上がらないほどに重いのだ・・・。

 一通り、採集を終えて対岸にまたまたパンツを濡らしながら戻ると、家族が退屈そうに待っていた。
 しかし、吉野の源流に近い清流は、夏のキャンプ時期とは打って変わって水は綺麗で、本当に良い感じだ。秋の気配の中、すばらしい景色がそこにあった。
 その河原で昼食の柿の葉寿司を食べ、沢ガニと遊びながら、こんな時間がもっと持てたらなどと考えるのは私だけなのだろうか?
 しかし今回の柿の葉寿司は、おいしかったが、30個入りの中に「はずれ」が2つも入っていた。柿の葉寿司というのは「鯖のなれ鮨」なのだが、肝心・唯一の味の源である「鯖」が入っていないのである。それでは単なるすし飯の四角いおにぎりである。こんなガッカリしたことはなかった。

 その後は、大宇陀の「あきのの湯」での、温泉プールであったが、久しぶりのプールに子供たちは大満足であったようだ。
 ちなみに、ここの湯は、奈良県宇陀郡本郷(神戸鉱山)の坑道跡から出てくる水を引いている温泉で、それは、このHPの鉱物産地情報の中でNさんにお話を聞いたときに聞かせていただいた。
 今の神戸鉱山廃坑は、入り口もふさがれ、元の地主のNさんの自宅の横にひっそりと存在する。その廃坑跡の片隅からは、綺麗な水が湧き出てきていたが、水の底は鉄バクテリアによってオレンジ色になっていた。また、直径10Cmくらいの黒い管が坑道から延び、それが「あきのの湯」に引かれているそうで、その湯につかりながら、往年の神戸鉱山を思い、旅の疲れを取るのは、石屋にはたまらない贅沢のように思えた。(もちろん、そんなことを思っているのは家族の中で私だけであるのが寂しいが・・・。)

   家に持ち帰ったが、長年外に野積みになっていたもので、ヤケがひどく、何とか表面のサビが取れないかと、塩酸で処理してみたところ、盛んに泡を噴いていた。
 磁硫鉄鋼や黄銅鉱ならこんなに泡を噴くものではないと不思議だったが、思いついて黒石鉱山にもよく見られた白い劈開のある鉱物を入れてみると、前にもまして勢いよく泡が出てきた。この泡の出方は方解石である。岐阜の赤坂の石灰岩もこんな感じだった。
 1時間ばかりそのままにして引き上げてみると、白い鉱物はほとんどなくなり、金属鉱物の塊も、方解石の分だけ穴があいていた。
 しかし、目的の、ヤケ(サビ)は全くと言ってとれていなかった。塩酸には鉄も溶けにくいし、銅に至ってはさらに溶けにくいのでもっともである。
 鉱石を浸けてあった塩酸の残りの方は緑色に変化していたが、鉄のコロイドの色であろう。
 良い標本にするには、大きな鉱石から割り取るしか道はなさそうである。
 そう思って、何とか割り取る努力をしてみたが、クラックというか、割れ目というか、の間に、金色の金属光沢の何かが見える。それも少し色違いの2色あるのがわかる。
 これは何かの鉱物だろうが、2次鉱物なのかも何も分からず、このくらいが、個人だけで石屋をやっている限界なのだと思う。どこかの石の会にでも身を寄せてX線解析でもしないことには、分からないのだろう。


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