京都府相楽郡加茂町法花寺野


採集できる石
鉱物名コメント
バラ輝石少ないいいものは少ないですね
園石少ない見分けることができません
ガーネット少ないないです
隣灰ウラン鉱少ない見つかりません
しのぶ石少ない汚いものばかり

石を見る


1995年8月14日

 お盆で妻と子供がいないのをいいことに、法花寺野に行くことにした。1987年くらいにK氏に教えていただいたことのある産地で、場所は判っていたが、どういう訳か良い標本が家から消えてしまい、標本箱の中に一つもなかったのである。まだあまり石に興味がなかったころで、その辺にほり散らかしてあったために、家族に捨てられてしまったのだと思う。結婚をしてあまり暇がなくなったこともあり石の趣味から遠ざかっていたが、子供が産まれて一緒に石採りに行ってくれそうな年頃になって、また石取りの虫が起き出してきたようである。また、最近は産地の紹介の本が発刊されたり、インターネットで石の情報が割と簡単に入手できるようになったのでよけいである。今回も「地球の宝探し」の中に木屋の産地紹介があったので、法花寺野と一緒に行くつもりであった。
 家から国道24号線を京都に向かって北上する。京都との県境を過ぎてすぐ木津川を渡る。渡るとすぐに右折して国道163号線に入る。木津川の堤防を走ることになるのだが、2Kmほど走ったその対岸の突き出たところが、法花寺野である。次の橋を渡って後戻りする形になるが、道がいいのでこの道を走ることにしたのである。しかし、この日ばかりは失敗だった。お盆ですごい車の出だったので、なかなか目的地に着かなかったのである。近道として、大阪に続く国道163号線の交差点を過ぎてすぐ右折すると、JR木津川駅の前に出る。そこを左折して木津川の堤防をめざすと、法花寺野に到着するのであるが、道が細いので敬遠したのである。


 到着して川の方のバラスの置いてあるところに車を止めようとしたが、大阪ナンバーの車が一台止まっているのが目に入った。法花寺野にお盆に来る人といえば石取りの人だろうと思い近づくとどうも違うらしい。若い結婚前だと思われるカップルだった。まさかデートにバラ輝石を取りに来る人もないだろうと思っていると、向こうの方から話してこられた。「バラ輝ですか?」とおっしゃるのでこちらがびっくりしてしまった。今ちょうど石を取り終わって車に戻ったところだったそうで、女性の方も気さくな楽しい方で、これから水晶を採りに行かれるということだった。ここの近くに小さいながらきれいな水晶の採れるところがあるそうで、一緒にどうですかと誘っていただいたが、デートに同行するのも無粋だし、バラ輝石も欲しかったので辞退させていただいた。本当は私は一人だし一緒に行きたかったが、涙をのんで分かれることにした。しかし、爽やかな青年達であった。

 事務所に向かったが、どなたも居られないようで、1987年に来た頃には盛大に採石をしており、事務所にも必ず誰かが居られたのだが、今はしばらく使った形跡もなかった。だれも居られないが、一応声をかけて、中に入った。夏の暑い日で、下からは木津川で水遊びをする家族の声がよく聞こえていた。
 まずは、前回来たときの事を思い出し、バラ輝石のあったところを探すが、採石もかなりすすみ全く様子が変わっているので場所が特定できなかった。転石を追って行くしかなさそうなので、下を見ながら崖沿いに移動して行った。しかし、バラ輝石の露頭は全く発見できず、大きな転石に少しよさそうなものが3つほどあっただけであった。取りあえずその岩から良い部分だけを中ハンマーで採って置いておいたが、この岩が大変硬い。岩をぶちかいた時、私に向かって、長さ1.5Cmくらいの小さなかけらが、目をめがけて飛んできた。そして、プラスチックレンズの真ん中に刺さったのだ。もし眼鏡がなかったらまともに目に刺さっていた所であった。硬度もそれほど高くはないが、粘り強い性質のバラ輝石は、扱いにかなりの注意を必要とするので気をつけていただきたい。

 道路から見て左側にベンチカットした部分が新たにできていたのでそちらにも足を向けた。ベンチカットは5段ほどあり、一番上にはコナラとクヌギの木が見える。下まで行くと割ときつい斜面で、もし砂質でこの角度ではすぐに崩れてしまいそうな角度であったが、全面が岩盤なので崩れることはないのであろう。一番下の岩盤は全部見たが、中央に一カ所だけ質の悪いバラ輝石の脈が走っていただけだった。そのまま4段目まで登ってみたが、割と高い上に急な斜面で怖くなった。もし落ちたり、落石で怪我でもしたら、ただではすみそうにない。相変わらず下からは子ども達のはしゃぐ声がしている。ここまで露頭はくまなく調べたが、先ほどの続きの脈があるだけで新たな発見もなかったので、戻ることにした。しかし降りるのがあんなに怖いものだと思ったのは初めてだった。登りは上を見ていくのであまり怖くないが、降りるのは下が見えるので怖いのだ。やっとの思いで下まで降りたが、やはり誰かと一緒に来るのが一番だったと思った。何かあったときにはすぐに対処できるからである。
 車への戻り道で花崗岩の中に1mm以下の小さなガーネットが入った物を見つけた。また、バラ輝石がピンク色にだんだん変化していくきれいな物も見つけた。ただ、マンガンは時と共に黒変していくのが常なのでいつまで持つやらわからないのが、残念である。しかし、太陽光にさえ当てなければかなり長く持つそうではある。
 その後今までに5回はここを訪れているが、大きなガーネットや燐灰ウランやしのぶ石にはとんとお目にかかってはいない。しのぶ石自体は二酸化マンガンなので出る確率は高いと思うが、それらしい物はあってもとても標本に値するような物には出くわしていない。もう少し通い詰める必要があると思うが、1997年に引っ越しをし、法花寺野まで20分の所に越してきたので、チャンスだと思っている。(思っているのは私だけ?)

木屋へと続く


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