Sincerely 〜心から〜






夜の間に音もなく降り積もった雪は、ほんの数時間で景色を変える
穏やかな曲線になって、純白になった山の色
小鳥がとまって、僅かな木の実を食べていた樹木
川魚が透明な水の流れに身を任せていた小川
一瞬にして、白い世界に統一される
まるで白い砂漠のように…
空からは途切れることなく、大粒の雪が舞い降りてくる

このぶんだと、まだまだ積もりそうだね
君を起こさないように、そっと窓を開ける
凛とした静かな世界
冷たい空気が顔に当たって、寝間着の隙間からも流れ込んで来る
手を伸ばすと、一粒の雪が舞い降りてきては、消えていく

僕はあたたかい
僕の体温で溶けていく白い粒

風が吹き込んで、一瞬にして部屋に雪が舞い散る
気温が下がり、はく息が白くなる
冷気が…寝ている君の元へ届かないようにそっと窓をしめる

「ジョー…」
振り返ると眠そうな目をした君が僕を見ている
「ごめん、起こしたね」
君はゆっくりと体を起こし僕の隣にやってくる
「きれいねぇ…」
この雪の下にはたくさんの命が眠っている
暖かい春を信じて待っている

僕には春が来たんだろうか…?

君を背後から包みこむようにして、そっと抱き寄せる
すんなりと僕の腕の中に納まった華奢な身体

君はあたたかい
溶かされていく僕の心

君だけの香りがして、とても心地よい気分になる
君の温もりで、優しさで、満たされていく
こんなにも君が愛しい



「フランソワーズ…」
背後から耳元に囁かれた、朝独特の低いジョーの声
彼の胸に、彼の腕に包みこまれた幸せな身体
その指先や腕を、ぼんやりと見つめる
何度、この胸に抱かれ、何度この腕に守られただろう
彼の匂い
彼の体温
彼の声
そのすべてが愛しくて堪らない気持ちになる
外の寒さとは対照的に、ここはあたたかい
ゆっくりと…
じわじわと満たされていく
深い愛情に
彼の腕に両手を重ねる



もう一度、夢の続きが見たくなって、君を抱き寄せる手に力が入る
君の香り
君の体温
君の声
堪えきれない 熱情
少し遅いチェックアウトの時間まであと5時間
フランソワーズ、あと少し、あと少しだけ…
僕だけの君でいて

Fin



あとがき

なまこさん、拙作を快く貰って頂いてありがとうございました。
しかも素敵なイラストまで描いて頂いて、感激しました。感謝の気持ちでいっぱいで
す。そして読んで下さった方、ありがとうございました。
フランソワーズに対する、ジョーの気持ちが少しでも伝われば嬉しいです。

 


みさやんさん素敵なSSありがとうございました。頂いたのは確か太陽がまだぎらぎらしている季節だったような気がするのですが・・・気がつけばこんなに隠匿してしまっていた・・・すみません。で、でも季節がぴったりということでご容赦を〜。
みさやんさんのSSを読んで浮かんだイメージをその場で描いてしまいましたが(描いたのがまだ太陽がぎらぎらしている時期だったなあ・・・)、雰囲気が壊れてないといいな。

かの美声を持つ(笑)河村隆一が好きだとおっしゃるみさやんさんに、オススメの隆一の歌を聞かせていただきましたが、バラードがロマンチックな曲がみさやんさんのツボだそうで。その曲を聴きながら絵を描くと、ジョーが隆一になってしまいます。みさやんさんのSSも隆一ジョーの雰囲気にぴったり♪
(ただ私はあの隆一の歌う顔が浮かんでしょうがないんだけど・・・)

なまこ