何が欲しい?







「今年は何が欲しい?」
「そうね、今年は…」







12月××日。
まぁ取り敢えず、クリスマスまで10日を切った頃。
そろそろ世界各国に散らばる仲間がメンテナンス以外で集合する時期。
毎年クリスマスから年明けにかけてはなるべく全員で過ごす、これが暗黙のうちの了解になっている。
でも、数年前から全員で過ごすのは25日から、になりつつもある。
24日だけは、彼に彼女を譲ってやろうと、これも誰が言い出した訳でなく決まった。
仲間にとっても、二人は自分達が人間で居る証であり、希望だから…。
そんな、気がするから。

「今年のクリスマス、何か欲しい物、ある?」
彼女を胸に抱いて、そのさらさらとした金髪を撫でながら彼が尋ねた。
「欲しい物…?」
うとうとしていたらしい彼女は、微妙に呂律が回らない。舌足らずな感じのする返事。
日ごろの彼女からは想像出来ない、こう、甘えた感じの。
彼だけの特権。
「そう、クリスマスプレゼント」
柔らかな体温を胸に抱き寄せる。
「…特に思いつかないわ、そんな、急に言われても…」
「何も?」
「何も…」
彼が困ったような顔をした。
「困ったなぁ、何か、無い?」
「だから、特にリクエストは無いのよ…」
アナタガクレルモノナラ、ナンデモイイワ。
ぽふっ、っと彼のフワフワとしたセーターに、広い胸に顔を埋める。
「勝手に買って来て…、それでいいの?」
問い掛けるも、答えは無し。
恋人はすでに夢の中。
どうしようかなぁ…。
誰に聞かせるとも無く呟いた。


知っていますか、花と同じなんです。
石にも、意味があるんです。
そう、例えば…。


12月23日深夜...。
彼女の部屋の扉を3回ノック。2人が分かればいいから、秘密の合図。
リズムよく3回、今入っても大丈夫?
すぐに返ってくるノック1回、ええ大丈夫。
「おじゃましまーす」
おどけて見せる。
「いらっしゃい」
微笑が返って来る。
額に軽くキス。
2人っきりも今日までだし。
ギルモア博士は気を利かせて、コズミ博士の邸宅へ泊まりに行ってる。ありがたい気遣い。
明日には仲間達が全員揃うだろう。皆と逢えるのは嬉しいが、ちょっとだけ2人の時間が惜しく感じてしまったり。
くすぐったがって彼女が身じろぐ。
時計が12時を回った。
「メリークリスマス…、イブ」
「ふふ、メリークリスマスイブ」
唇に軽くキス。
未だにちょっと照れたような顔をする彼がおかしい。
「んふふ」
「笑わないでよ…」
ちょっと赤身の注す顔を隠すように彼女の肩口に顔を埋める。
「…はい、プレゼント」
どうにか顔を上げて、綺麗にラッピングされた小箱を渡す。
「ふふ、ありがとう…。開けてイイ?」
「勿論」
白く細い指がするするとラッピングのリボンを解いて行く。
真珠色に似た輝きの、小さな小箱。そっと開けてみるとピンクゴールドの台座、表面に赤と青のサファイア2石とダイヤのついた華奢なデザインのリング。
「綺麗…、でも高かったでしょう?」
「…安物だよ」
「相変わらず嘘つくのが苦手ね」
小箱からリングを取り出して、彼女の左薬指まで持っていき、ちょっと戸惑う。
「…ここでいいですか、お嬢さん」
照れ隠しにおどけて見せた。
「oui monsieur」
サイズはピッタリ。
彼はほっとした顔。
「…あのね、石にも意味があるんだってさ」
「意味?」
彼女の指を彩る指輪の石を一つ一つなぞりながら。
「サファイアは不運を払いのける力」
「天然ダイヤには…、高貴な輝きで未来を明るく照らす力」
その2つが合わされば…。
「ね、キミにピッタリだろ?」
そう言って微笑んで見せる彼を前に、嬉しくて少し涙が滲んできた。
広い胸に顔を埋めて、小さく呟いた。
「…は」
「え?」
「欲しい物、思いついたのよ」
彼だけに見せる、極上の笑みを湛えて。
「貴方と一緒に歩む未来が、一番のプレゼントよ」

二人一緒に歩いていけたらいいね。
永久に、永遠に。
2人で1人のように、寄り添う歩こう。


「今年は何が欲しい?」
「そうね、今年と言わず永遠に…」
貴方と歩む、未来が欲しいの。










         



管理人より

柴川カズサ様から、頂いていたSSと、サイトのトップでフリー画像になっていたので強奪してきたイラストです〜。
とっても大人っぽいお嬢さんとクールなジョー!! カッコいいです〜〜。
「何がほしい?」と聞かれて、「ずっと一緒にいること」と応えるお嬢さんがまた健気でかわいいですっ。
やっぱええ子や〜〜〜〜。お嬢さんは最高や〜〜〜。
柴川さん、ありがとうございました〜♪

(すいません、ただいま原因不明で画像が来てません・・・↑素敵なイラストつきなんですよ〜本当は!)