コン コン・・・
遠慮がちにジョーの部屋のドアがノックされる。
返事は・・・できない。
部屋の主はまだベッドの中。といっても眠っているわけではなく、体がいうことをきかないのだ。

「おかしいわね・・・。」
ドアの向こうには確かにジョーの気配がするのに、返事がないことを疑問に思ったフランソワーズはそうっとドアを開けてみた。

見慣れた部屋はまだカーテンも閉められたまま薄暗く、そして、ジョーの苦しげな息遣いが聞こえる。

「ジョー!」
びっくりしたフランソワーズはジョーのベッドに駆け寄る。
赤みを帯びた頬。呼吸のために苦しげに忙しないテンポで胸を上下させている。かなりの高熱らしい。
(フ・・・フラン)
声を出すこともできず、脳波通信でわずかに返事を返す。

「いくら呼んでも返事がないし、朝食に下りて来る気配もないからヘンだとは思ってたんだけど。
それにしても、スゴイ熱ね。」
脈を診るために手を取ると、ものすごく熱い。しかも、湿り気を感じることのない、乾燥した砂漠のような熱さ。これは、まだこれから体温が上昇するであろうことを示している。
「待っててね、ジョー。今、ギルモア博士を呼んで来るから」
(フ・・・フラン)
力なく見開かれた瞳は、高熱の為に潤んでいて、何かを訴えているかのように見える。

「大丈夫、すぐ戻ってくるから。」
小さな子供をあやすかのような微笑みを残すと、フランソワーズはギルモア博士を呼びに、部屋を出た。






「うぅ〜む、こりゃ、風邪じゃのぅ。これだけの高熱じゃ。おそらく、昨日の夜のうちから発熱しておったのじゃないかのう〜。」
「え?だって、今朝方までは、何ともなかったんですけど・・・??」
フランソワーズ自身も気づかないこの爆弾発言に、ギルモアは赤面したが、そこはそれ、彼も大人であるから、素知らぬ顔で言った、
「薬を調合しておくから、ジョーに飲ませてやっておくれ。」
「はい。あら、博士・・・。」
「ん?なんじゃ?フランソワーズ。」
「博士も顔が赤いですけど、熱がでてるんじゃ・・・?
ジョーの風邪がうつったのかしら?」
フランソワーズが本気で心配している風なので
「あ、いや、ナンでもないわい。第一そんなに早く風邪がうつったりするわけなかろう?」
そう言って笑いながら、ギルモアはジョーの部屋を後にした。

ドアを閉めると、溜め息交じりに、ギルモアはひとりごちた。
「ふぅ〜〜。アノ子があんなに天然じゃったとはのう〜。こりゃ、ジョーも苦労するわい。
あ、もっとも、ジョーも同類じゃったか・・・。こりゃ、似たもの同士っちゅうわけじゃな・・・。ふぉっふぉっふぉっふぉ・・・」







数時間後、フランソワーズはジョーの様子を見に、ジョーの部屋を訪れた。
「具合はどう?」





長い前髪をそうっとよけて額に触れるヒンヤリした華奢な手。
「フラン・・・」
「ジョー・・・熱は下がった?」
蒼い瞳が心配そうにジョーを覗きこむ。
(うぅ・・・フランの顔が近いのに手も出せない・・・)
「まだ高いわね・・・何か欲しいものはない?」

「フ・・・フランソワーズが・・・ほ・・・しい・・・」
「ば、ばかっ///// こんな熱のある時まで何言ってるのよっっ」
(熱のある時は本能だけになるんだよ)
「じゃ、熱のない時には、煩悩も同居してるのかしらね?」
「げ・・・」
さっきまで、熱の為に赤みを帯びていたジョーの顔が一瞬青ざめた。
「ジョー、脳波通信機のスイッチを切り忘れたわね(笑)」

「この様子ならば、じきに元気になりそうだけど、お薬だけはちゃんと飲んでね、ココに置いておくから。」
「え?いつものように飲ませてくれるんじゃないのかい?」
ジョーはびっくりして、がばっと起き上がる。
「ご冗談でしょ?本能だけになってるヒトにそんなコトしたら、余計に熱が上がっちゃうわよ。」
「そんなぁ〜」
「アトで、張大人に頼んである風邪に効きそうな薬膳粥を持って来てあげるから・・・」

「ボクにとっては、キミが一番の薬なんだってば・・・」
「だぁ〜め!今は、ちゃんと寝ていてもらいます。」
「フラン〜・・・」
そうでなくとも、高熱の為にうるうると潤んでいるジョーの瞳が、オネダリ光線を発するようにゆらゆらと揺れる・・・。

他の女の子ならばイチコロだったろうが、なにせ、相手はフランソワーズ。ジョーの作戦は(いや、無意識にやっていることであっても)お見通し。容易に屈するわけがないのである。
「はい、イイ子は文句を言わずに、大人しく寝るの!それとも・・・」
いきなり目の前に突き出されたフランソワーズの右手にはスーパーガンが冷たく光っている・・・。

「わ・・・わかったよ。」
「ならば、よろしい・・・。」
(やっぱ、最強だよ、キミは・・・)
ジョーは脳波通信機のスイッチをよーっく確かめた後で、そうボヤいた。





《 お・ま・け 》

「あ、コレね」
とドアを開けながらフランソワーズは振向いて、さっきジョーを脅す(?)のに使用したスーパーガンを玩びながら、ニッコリと微笑んだ。
「ジェットが造ってくれたの、護身用だって♪」
唖然とするジョー。
「うふ、ヨクできてるでしょ?」
そう言いながら銃口をジョーに向けて引き金を引くと、ポン☆といい音がして、手品に使うような花が飛び出した。
「いくら薄暗いところだからって、コレとホンモノの区別がつかないなんて、ジョーあなた重症のようね。うふふふ・・・。」

「ジェットのヤツ、なに考えてんだよ、こんなモノをフランに持たせるなんて。こんなんじゃ、本当の護身用になんか、なるわけないじゃないか!」
本気でジョーが怒り出しそうになった時、
「あら、大丈夫よ。コレは、対ジョー専用スーパーガンですもん!」
フランソワーズが、あんまりにこやかにそう言うものだから、ジョーはまたまた唖然とする。

「フラン・・・。ボク、やっぱりオトナシク寝ることにするよ。」
「そう!最初から、そうやってオトナシク寝ていればよかったのよ♪
じゃぁ、おやすみなさい、ジョー」

最強の女性(ヒト)フラーソワーズは、ニンマリとして、ジョーの部屋を後にするのだった・・・。








<管理人より>
 
 わたくしがいつものようにいつものごとく、熱を出して寝込んでいると、オエビで梶野さんがお見舞いのイラストを描いて下さいました〜♪ ラッキー♪
 それに、私がスレでジョーの心の内の本音を冗談で書いたら、それを元に今度はMIYUさんがSSを作ってくれました〜。 倍ラッキー♪♪
 梶野さんとMIYUさんの夢の♪コラボです。
 熱はしょっちゅうだけど、たまにはいいこともある・・・じ〜〜ん。
 お二方、ありがとうございました(>_<)

 ちなみに、私のアホなスレの部分は

 「ジョー・・・熱は下がった?」
 (うぅ・・・フランの顔が近いのに手も出せない・・・)
 「まだ高いわね・・・何か欲しいものはない?」
 「フ・・・フランソワーズが・・・ほ・・・しい・・・」
 「ば、ばかっ///// こんな熱のある時まで何言ってるのよっっ」
 (熱のある時は本能だけになるんだよ)

 ・・・の部分です。ホホ・・・。

 なんつうか、らしい二人ですよね、天然同士(笑)
 この熱出して情けな〜い顔してるジョーも妙にツボ。