The light of the line in the darkness
闇だ・・・。
闇が広がる・・・・・・。
際限もなくどこまでも続く闇の世界。
一条の光も差し込まないその空間に、何故か立っていた。
いや・・・浮いていたというのが正解かもしれない。
足元にあるはずの地面はなく、硬いものを踏みしめている感覚がなかった。
なのに、落下していくこともなく、ただ自分は闇の中で独り。
いや・・・落下の感覚がないだけで、実は落ちているのかもしれない。
だが、それを計るものが何もないのだ。
自分の身体すら、何も見えないほどの闇。そこが狭い場所なのか、物凄く広大で広い場所なのか見当もつかない。
ここにいる自分は、ちゃんと存在するのか?
ちゃんと身体はあるのか?
ジョーは自分の身体を動かしてみた。右腕が自分の意思どおりに動く。だが、それが目で確認できるわけではない。
今、動いた気になっただけで、実際この右腕は存在するのだろうか。
意識のみが覚醒して、この空間に漂っているのだろうか・・・。
全ては闇に支配され、感覚さえも奪われてゆく・・・。
ジョーは、その絶望的な孤独と静寂の中で、たった独りだった。
「・・・・・・・・・」
だが、その口から漏れるのは、微かな笑い。
彼は笑っている。
この、何もない、普通の人間ならば間違いなく、ここにいるだけで発狂したくなるほどの静寂の中で、声もあげずに唇を少し上げて笑っている。
見えない闇の中で、ジョーの意識は、はっきりと自分が笑っているのを感じていた。
ここは・・・何もない。
夢も・・・希望も・・・未来も・・・・・・過去も―――。
彼は、1つも恐怖感を感じない。
むしろ、この闇が心地いい。
何も・・・時さえも存在しない圧倒的な無の世界。
全ては麻痺し、正常な思考能力が奪われてゆく。
小さな人間にとって、これほどの無と静寂の孤独に耐えうるはずもないのだ。
なのに、彼は笑う・・・・・・。
ここは自分の世界だ・・・。
彼は思う。
ここは自分こそがふさわしい場所なのだ。
そうだろう?
何も考えず、何も見ず、何も期待することもなく・・・・・・。
ずっと思っていたはずだ・・・。
楽になりたい―――――。
ここが。
その世界だ。
ああ 静かだ ―――――――・・・・・・。
闇にそのまま横たわろうとした彼のその瞳に、一条の光が映った。
ここからはどれくらい離れた場所だろう。
さっきまで何もなかった闇の中ですうっと一筋の光が差し込んでいる。
だが、その距離を推し量ることができない。
遠くなのか 近くなのか。
光は、やわらかく仄かに、しかしハッキリと存在していた。
ふんわりと包み込むような温かさを、見ているものに感じさせる。
闇を切り裂くような光じゃない。
闇をやんわり照らし、なおかつその内に安らぎを与えようとでもするかのように優しく・・・でも、決して闇と完全に溶け合って消えてしまうことはなく、しっかりとそこにある。
闇を邪魔することなく。
それに触れることが出来たら・・・。
その瞬間、彼の内で何かが変わった。
猛烈に、その光に近づいてみたいと思った。
さっきまでは、闇こそが心地よいと思っていたのに。
彼は光に向かって歩いてゆく。
一歩、二歩。
しかし、足を前に出して歩いているはずなのに、進んでいる感覚がまるでない。
左右の足を交互に出して、歩けど歩けど、光に近づくことはない。
相変わらず、遠いのか、近いのか。
それすらわからない。
自分は、そこに近づいているのか?
果たして辿り着くことが出来るのか・・・。
もどかしい・・・・・・!!!
一向に光に近づかないことに、急に苛立ちを感じ始める。
あの光を・・・手に・・・・・・!
届かないとわかっていても、彼は右手を大きく伸ばした。
何もいらない。
何も考えたくない。
何も・・・自分は無になるのだ。
そう考えていたはずだったのに。
あの光が、どうしても欲しくて欲しくて・・・・・・!!!
ジョーは目を開いた。
真っ暗な部屋の中で、むくりと身体を起こす。
(・・・・・・・・・・・・?)
なんだか変な感じだ。
さっきまで、何か夢を見ていたような気がする。
とても・・・・・・変わった夢を。
(何の夢だったんだろう・・・?)
ジョーは自分の胸をそっと右手で押さえた。
どうしたんだろう・・・。妙にドクドクと心臓が言っている。
妙に喉の奥が渇いていた。
闇の中でうっすらと見える自分の部屋の家具を、ぼんやり見ながら、なぜか
(ああ・・・また、闇か・・・)
と思っている自分がいた。
なぜそう思うかはわからない。
でも・・・目が覚める瞬間、自分は何かを求めていた・・・。
そう、確かに何かを求めていたのだ。
そのままじっと闇を見つめるジョーの目が、その端に仄かな光を捉えた。
闇の中のたった一つの光。
ゆっくりと右手を突いて、身体を捻ると、その光の方を向いた。
ジョーは無意識に手を伸ばしていた。
柔らかく手の中に握られた、細い髪の毛。
それはこの闇の中にあっても光を失わない。
ジョーは、そっとその光をすくい上げた。
(思い出した・・・僕はこの光を追いかけて追いかけて・・・どうしても手に入れたいと切望したんだ・・・・・・)
そっと、口付ける。
「ん・・・・・・」
もぞもぞと、身体を捻りながらフランソワーズが寝返りを打った。
するすると手から逃げてゆく髪の毛。
背中を向けていた彼女が、ジョーに向き直る形になった。
起こしてしまったかと気にかけるが、再び彼女の口からまたすうすうと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。
ジョーはフッと笑みを溢すと、自分もまたフランソワーズの横に寝転んだ。
しばらくそのまま、彼女の寝顔をじっと見つめる。
長い睫毛、スッと通った鼻筋。あどけない寝顔。
いくら見つめていても、飽く事のないその姿。
ジョーはそうっと、彼女を起こさないように気をつけながら、自分の腕を彼女の背中に回して抱き寄せた。
しっとりと吸い付くような肌が、彼の肌に触れる。
そして、目の前にはあの光があった。
どこにあっても色褪せることの無い、彼女の髪の毛。
この光が 欲しくて 欲しくて ――――――・・・・・・。
どうして、僕は この光を一瞬でも忘れたのだろう。
あの闇の世界にいたいと、思ったのだろう・・・。
フランソワーズの背中に回した腕を、ゆっくりと持ち上げて、その光に触れてみた。
するり。
さらさらと音を立てて流れる彼女の髪の毛。
ジョーはいつまでもそれを眺めていた。
「ん〜・・・ジョー・・・?」
ジョーの腕の中にすっぽり納まったまま、フランソワーズが身じろぎした。
「あ・・・ごめん。起こしちゃった?」
ジョーがささやくように声を掛けると、フランソワーズは眠そうな目で、ジョーの腕の中から彼を見上げた。
「ううん・・・いいの。――眠れないの?」
フランソワーズの問いかけに、ジョーは髪の毛に触れていた腕を彼女の腰に回して、さらに残った方の腕も強引に彼女の身体の下から背中に回すと、思い切りその細くて柔らかな身体を抱きしめた。
「ジョー・・・?」
その腕の強さに、少し苦しさを感じながらも、フランソワーズの白い手が、そっとジョーの背中に回される。
「君の寝顔を見ていたら見とれちゃって、すっかり目が覚めちゃったよ」
「・・・・・・バカ」
ジョーの喉からくっくっくと笑い声が漏れる。
(きっと、今君の顔は真っ赤になっているんだろうな)
その表情は、ジョーの胸に伏せられていて見えないけれど、簡単に想像がついた。
手に 入れた・・・・。
僕のたった一つの光。
離さないよ ―――・・・ 僕だけのもの
<管理人より>
i-maさんから、某イベント会場で、半ば無理やりイラストのお願いをして、頂いてしまったこのイラスト〜〜〜〜!!!!
なんって色っぽいイラストなんでしょうか。なんってツボにくるジョーなんでしょうか!!!
コレを頂いたとき、パソコンの前で悲鳴を上げましたよ、あたしゃ。i-maさん、ありがとうございます〜〜!
・・・なのに、付けたモノ(駄文)が、こんなに暗くて訳のわからんものでスンマセ〜〜〜ン!!!(しかもベッタベタな話やがな)
自分でもよくわからないままに書き始め、そして50分後に書き終りました。
なんっにも先を決めずに、なんっにも考えずに、手が勝手に動くままに書いていたらこうなってしまいました。決して自分が書かないであろうと思っていたタイプの話かも・・・。こういうのを書いたことに、本人が一番びっくりです。
うううううん。ちゃんと浮かんでからお話は書きましょう・・・(汗) イラストに合わせてお話作るなんて慣れない事、するもんじゃありませんやね。今回はたまたまできましたけど・・・もう二度と無理な気がする・・・。
やっぱ短いSSは苦手だ〜〜〜〜〜!!!
もう、この駄文はさらっと流してくださいませ!(だったら付けるな、自分!)
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