味覚障害


実録、俺の味覚障害の体験記である。

2010年7月27日、俺は味覚を失った。
毎朝の習慣である缶コーヒーを飲んだ時にそれを感じた。
甘い味の缶コーヒーが好きな俺は、いつもの缶コーヒーを飲んでいるにも係わらず、その味を「甘い」だけではなく、味自体をまったく感じなかったのである。
風邪気味だったせいもあり、この時点では特にこの状況を深く考えていなかった。

俺自身、この時期は通常の仕事以外に引き受けていた、かけもちの役割があったので、肉体と精神とともに、とても切羽詰まっている時であったので、今思うとかなりの負担を、俺自身の体と心にかけていたのだと思う。
風邪は約1週間で治ったにも係わらず、何を食べても、何を飲んでも、とにかく口にする物すべての味が判らない状態が続いた。

とても正確に表現すると、特に「甘み」を感じる事が出来ない状況であった。砂糖をスプーンですくってそのまま舐めても、まったく味が判らないのである。
匂いを感じる嗅覚の能力は正常であったので、匂いを嗅ぎながら、以前の学習した記憶を基に食物を流し込むという、食事の取り方の日々が続いた。

これはマジでやばいかも、と感じたのは、味覚を感じなくなってから2週間ほど経過したお盆の時期であったと思う。
専門的な医者に相談しようとも思ったのであるが、実際問題、自分の休日すらろくに取得出来ない忙しい日々が続き、結局最後まで医者には相談出来なかった。
ネットを駆使していろいろな情報を得る事に試みた。
世間には味覚障害という名前の物がある事をこの時期に知った。
様々な事例があるようだが、俺の場合は嗅覚は正常であった。
この時期は、情報収集に明け暮れた。

亜鉛というものが不足すると好ましくないという情報を複数知りえた。
速攻、コンビニで亜鉛のサプリメントを購入し飲み始めた。
匂いを頼りに、味の判らない食物をひたすら飲み込む日々であった。

気が付いてみれば、味が判らなくなってから約1ヶ月が経過した。
8月も終わりに近づいた頃、何となくではあるが、甘みを感じる様になった。
今までは、味覚の中でも特に甘みを感じる事が出来なかったのであるが、これは俺にとってはたいへん嬉しい事であった。
今まではチョコレートを食べても何も感じなかったのが、それとなく感じる事が出来る様になったのである。

味を感じる器官である「味蕾」と呼ばれる細胞の寿命は10日程だという情報や、生まれ変わりに必要な期間は約1ヶ月という話もある。
俺の場合は、味覚を失ってから約1ヶ月が経過した頃に、味覚を感じる兆しが現れ始めた。亜鉛のサプリが効果に寄与しているのかどうかは、定かではない。

9月中旬。仕事は相変わらず忙しいが、かけもちで担っていた役割が解放されたので、ある程度は精神的に楽になった。
味覚を失った時は一瞬の出来事であったが、回復はとてもゆるやかな感じなので、何となく味が判るようになってきたなぁ、という日々が続く。
相変わらずサプリは飲み続けている。

10月。100%の回復宣言を宣言したい所ではあるが、正直な所、今の俺の味覚が以前と比べて同じレベルまで戻ったのかどうかを自分でも判断出来ない。
まだ何となく、味覚に関しては自信が持てないでいるが、とりあえず何とか味覚が判る体に戻ったような気がするので、ここに記録を記す決意をした。

今年は猛暑であったし、肉体的にも精神的にも、本当に追い込まれるくらいのストレスや作業量の日々が続いた事は自覚している。
しかし、まさか自分が一時的にとは言え、味覚を失う事になるとは思いもしなかった。

あらためて健康のありがたさを感じる日々である。


2010.10.26.


体の悩み (2010.8.2.)




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