CASSIOPAIA ( カシオペア ) の旅


2005年6月、北海道旅行を計画した俺たちが選んだ移動手段は、寝台特急「カシオペア」号での旅だった。
上野から札幌までを16時間以上という長い時間をかけて「移動する時間そのものを楽しむ」という少しばかり贅沢な 大人の旅である。飛行機なら1時間半の距離をわざわざ16時間以上もかけて移動するなんて金銭的なスケールでは測ることの出来ない心の贅沢だと思う。
旅行って、旅先でのイベントを楽しむものでしょ、という考えではなく、移動そのものを楽しもうという思いからの選択である。

牽引機 EF81_1

牽引機 EF81_2
カシオペアの特徴と言えば、全室A寝台の全室個室という豪華寝台特急である。1編成は12両であり、全87室で定員は174名というものである。客室は大まかにスイート、デラックス、ツインの3種類から構成されており、その中でも俺たちがこだわったのはホテル並みの豪華装備を備えたスイートである。さらにスイートは1編成につきたったの1室しかない展望スイートと、1編成につき6室の設定がある2階建てのメゾネットスイートに分けられるのだが、俺たちが手にしたチケットは残念ながら後者の方だった。1号車2番個室のメゾネットスイートである。
チケットは鉄道会社の規定により正式には乗車日の1ヶ月前からしか発売をしないのであるが、俺たちは4ヶ月ほど前から旅行代理店等を複数廻り、チケットの手配を予約という形でお願いし続けた。事前に得た情報ではスイートのチケットを取るのは至難の業だと聞かされていたからである。

切符

列車ということで、乗車券の料金は上野→札幌で 16,080円(/1人) かかるのだが、 それに加えて寝台特急料金として 56,760円(/1室) がかかる。まさしくスイートな感じである。
全12両編成のカシオペアは、食堂車とラウンジカーを備えたまさしく走る豪華ホテルなのだが、なんせ全室個室というだけあって、自分の部屋にいる時は他の客とのかかわりが全くないので、気兼ねなく自分たちの時間を過ごすことが出来る。
夕食時に食堂車に行ってみて初めて他の乗客に接したようなものくらいである。全体的に年齢層はかなり高めで、時間をかけた優雅な旅は若者はあまりしないんだろうな、という印象。列車の中なのに、ガラスの器でデザートは出てくるし、陶器のカップでコーヒーは出てくるし、まさしくホテル並のサービスに感動させられた。

個室2階
メゾネットタイプの個室ということで、俺たちが使える部屋は階上と階下の2階に分かれた2部屋分である。階上は写真のリビングスペースとシャワールームからなり、階下はベットスペースという構成になっている。
この頃つわりのひどかったかみさんはほとんどの時間を階下のベッドで過ごし、俺は階上の部屋で酒を飲んだり、テレビを見たりして過ごした。
テレビは、列車の現在位置を知ることの出来るナビチャンネルもあり、ほとんどそのチャンネルにしていた。電波状況が悪くてまともに映らない衛星放送チャンネルよりも、まだ俺たちの知らない地名や駅名等の情報を得ることの出来るナビチャンネルの方が面白かったのである。

カシオペアは約1,200kmという長距離を走る列車なので、その地域を管轄する鉄道会社も変わるものらしく、牽引車が付け替えられて旅が進んでいく。特に俺が楽しみにしていたのは、青函トンネルの運行。
夜中の2時49分からトンネルに入るとの車掌からのアナウンス情報が最初にあったので、めざまし時計のアラームをセットして短い眠りにつく。それまでかなり揺れていた車内がピタリと揺れが収まった。なんでも青函トンネル内は継ぎ目の無い1本のレールが敷かれているという。これは驚き、本当に揺れなくて静か。
窓の外は真っ暗で何も見えないけれど、一生懸命窓の外を見たよ。時々見える非常用の明かりが神秘的だった。なんでも3階建ての建物がすっぽりと入る大きさのトンネルなんだって。そんな大きなトンネルの通過に1時間半もかかるって凄い。

外観

揺れる車内での個室シャワーも堪能し、函館で積み込まれた朝食も味わった頃、あっと言う間に旅の終わりはやって来た。
約1週間の北海道旅行の始まりでもある札幌駅が目前に近づいている。
旅行の始まりであるはずなのに、カシオペアの終着駅が近づいているというのが何となくジレンマ。このままずっとカシオペアに乗っていたい、そう思う気持ちが強く強く働いた。

札幌駅に降り立った俺たちは、これから始まる自分たちの北海道巡りの旅行への期待感よりも、カシオペアの旅の終わりに対する寂しさがあったのかもしれない。車内点検を終えて回送されていく車両をいつまでもホームの上で見送ったよ。

2005.6.


(リンク) 寝台特急カシオペア JR東日本




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