同僚の転勤


転勤族と呼ばれる俺たちにとって、その「転勤」という言葉は非常に重たいものだと感じている。誰しも転勤する事が当たり前なのだが、同じ企業に勤め続けているにもかかわらず、その転勤によって、自己の生活環境はもとより、転勤の度に人生観までもが変わっていくような気がする。いや、気がするだけではなく、実際にそうなのであろうと俺は思う。

部下は上司を選べないし、上司は部下を選べない。
・・・と俺は思っていたのだが、実は上司は部下を選ぶ事も出来るらしい、なんて大人の汚いとも思われる事実を身をもって知ったのも最近の俺なのだが、俺の部下でもあり、同僚でもある後輩が転勤する事になった。
人事異動に関しての情報は秘密にして、機密事項なのだが、俺にはその情報がかなり以前に知らされ、そして俺はその為の準備を秘密裏に行う事が課せられていた。

ぶっちゃけた話、転勤する事になった彼は、仕事が出来ない。作業は出来るのだが、仕事が出来ないのだ。その出来ない彼を、出来るようにする事こそが、俺に与えられた仕事であった。
好き嫌いとかそういう感情ではなく、人材育成という観点で人と接する事は非常に難しいものであると感じられた期間であった。
褒めて叱って、そして叱って褒めて・・・。口で言うのはたやすいが、実際には投げ出してしまいたくなるような日々の連続であった。

まだまだとんでもなく中途半端な俺に、そんな大役を任せてしまう企業というか組織に対しての疑問も抱きつつ、俺自身もそういう課程を経て、今の立場にさらされているんだという現実も知る事が出来たりなんかして、なんだか少しばかり複雑な心境である。

職場で仕事の立場でいろいろ意見したりしてみても、結局は赤の他人なのである。家族よりも誰よりも長い時間を職場という場所で過ごしているにもかかわらず、心を通わせる事が出来なかった俺自身に対して、へこみまくりなのである。
人の性格までは変えられないし、やる気のないやつに「やれ」と言ってみた所で、それこそとんだ間違いであり、勘違いなのである。

人がを人育てる事により、その人が育つ。その仕組みを理解しただけでも、俺は少しは育ったのであろうか・・・・なんてね。

2003.10.18.




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