人生観


俺の直属の上司が突然、辞意を表明した。
副店長と呼ばれる職位にある人で、常に冷静に物事を判断し、的確な指示そして処置を施すその仕事ぶりに俺は憧れを抱いていた。俺もあんな管理職になりたいという、目標の人である。
早期退職制度という制度を利用して、会社を辞めるのだそうである。退職金が厚めにもらえるらしいのだが、その制度にまったく興味のない俺にはよく判らない制度だ。会社からしてみれば給料ばかり高くて年齢の高い人は早々に切り捨てて、安い給料で若い人員の雇用に切り替えたいという図式が手に取るように判る、リストラ推進の邪悪な制度だ、と俺は認識していた。

その人は「これから特に事業を始める予定もなければ、宝くじに当たった訳でもない」と言った後で、「これは人生観の違いだ」と説明してくれた。
俺たちに説明したくない何かがあるのかもしれないし、言葉通りの意味なのかもしれないが、何か他にやりたいことがあるから今の仕事を辞める訳ではないらしい。

人生観って何だろう?と考えた。
俺は一生この会社にしがみついて生きていくのだろうか?
今の仕事に誇りを持っているだろうか?この先もやりがいを持って取り組んでいくことが出来るのだろうか?
ただ何となく、惰性のように何も考えずに楽なサラリーマンを演じているだけなのだろうか?本当にやりたいことが他に何かあるとするならば、それはいつ実行に移せばいいのだろうか?
俺がそれに気づく日は来るのだろうか??

2003.5.29.




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