ムカシの話


誰でも、昔話を他人に話して聞かせる事は好きなものだと思う。
俺はそういった話を聞く側の立場として、少しばかり苦手な部分があった。具体的に言うと相棒の昔の相方との恋話、想い出話である。なんというか、自分は今現実に目の前に相棒といるのに、相棒の心がここにいなくなってしまう事を、俺が話を聞いていることによって認めさせてしまっている事実が許せないと言うか、まぁちっぽけな嫉妬心みたいなものなのであろう。・・・俺の相棒は、昔の相方との想い出話を俺に話して聞かせるのが結構好きなのである。
自分自身がその昔の相方と比較されているようで、なんだか嫌な感じだったのだが、最近になってなんとなくそれも楽になってきたような気がする。話を聞かされることが苦痛ではなく、普通の事として受け止められるようになってきた気がする。慣れとかそういうものではなく、俺自身が相方の気持ちや考え方を少しずつでも理解出来てきたのであろうか。
相棒は、昔の相方との想い出話が好きで、特に旅行に行った時にこういう理由で喧嘩してこんな風に大変だったんだよ、とか、リアルに話をしてくれる。別に俺と喧嘩したから引き合いに昔の話をしている訳ではないのだ。自分の大切な想い出としての話をしているに過ぎないのだ。
それなのに俺は常に、ひょっとしたら比較されているのではないかとか、喧嘩をふっかけられているのではないか、とか余計なことをいろいろ考えてしまうのである。男と女とかそういったものでは無く、ただ人それぞれに考え方が違うだけなのだろうが、俺は今目の前にいる大切な人の前で、自分の昔の人の話をするのはタブーと勝手に錯覚しているだけなのだと想う。
今、目の前にいる、自分が大切だと思っている人に対して、自分がその人に対して心をどれだけ開いているか、そんな心の器の大きさを測る物差しみたいな、・・・なんだかそんな気がしてきたのね。
誰にだって、現在の自分がある為には、過去のいろんな積み重ねがあってこそ、今の自分があるのである。そんな簡単なことは理解しているはずでも、未だに相棒の昔の相方の話にはドキマギしてしまう俺なのである。


※ 相棒=彼女、相方=彼女の昔の彼氏。



2003.3.19.




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