送別会


どこの職場でも送別会というものはあると思う。
人事異動や退職によってその職場を離れる人を送る会のことである。

俺の会社は比較的人事異動が多い方だと思う。ちなみに俺は現在入社11年目で7つ目の職場である。
定期的な人事異動は春と秋の2回発令されるのだが、それ以外にも突発的に発令されるものが意外と多く、平均すると月に一度くらいのペースで異動者をたたえる為の送別会が開催されることとなる。
送別会というものは、異動者に深く関わりがあった者が参加する訳で、その参加者の人数の多さや顔ぶれによって、その人のすごさや人気が判ってしまったりする訳である。
技量や器だけでは測る事の出来ない「人望」というものが、あからさまに判ってしまう訳で、送別会に参加すると、普段はなかなか見ることの出来ない社会の縮図を見ているような気がする。

ちなみに俺の職場においては、歓迎会というものは公には行わないことになっている。これから一緒に働く者をたたえる会は設けないくせに、去って行く者をたたえる会は盛大に行われるのである。ま、去っていくとは言え、人事異動の場合は会社を辞める訳ではないので、長い目で見てつきあいは続いていくのだし、特に問題はないと思う。
送られる者から見た、送別会の効用としては、次の勤務地で赴任してからしばらくして、くじけそうになったり弱気な気持ちになった時に、送別会で盛大に送ってくれた仲間たちの顔が思い浮かぶのである。あいつらに負けてたまるか、とか、あいつらの顔を汚すような事は出来ないと思えたらしめたものである。
赴任してすぐの時期は本人も周りも、緊張したり気を遣ったりするもので、あっという間に時間が過ぎていくのだが、落ち着いてきた頃が問題である。違う環境の中でいかに自分を出していくのか、いろいろ悩んだり考えたりする時期が必ずやってくるものである。歓迎会という形で新しいメンバーとより親密になれる機会を設けることよりも、ひょっとしたら送別会での熱い思いや気持ちを思い出すことの方が、よりプラス思考で頑張れる事の出来る糧となるのかもしれない。
俺は過去に6回、自分の為の送別会を開いてもらっている訳だが、そのすべてを鮮明に思い出すことが出来る。異動には親しい仲間との別れというつらい現実が伴う訳だが、その仲間たちの声援がずっと記憶に残る訳なのだ。
送る側、送られる側も、名残惜しい気持ちは変わらない。どこかの地できっと頑張っているあいつには負けられない、またきっとどこかで会った時には、この時の想い出話もしてみたいと思いつつ、それぞれの道を進んでいくのだ。

先日の送別会で送った仲間は、とても紳士的な爽やかな好青年タイプの男だったのだが、送別会での最終の本人スピーチで、彼は男泣きに泣いていた。自分の感情を出すことの出来る人間は俺は好きだ。人前で泣くことが出来る人間は美しいと思った。

俺が現在の勤務地に赴任してもうすぐ2年。自分自身が初心を忘れそうになってきていた頃、人を送る送別会に参加することは数多くあったが、自分自身を重ねてみて、もっともっと頑張らねばと強く感じた。

2002.5.24.




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