初めての告白


あれは小学校の3〜4年生の時のことだったろうか。
普通郵便の白い封筒に入ったそれは、バレンタインデーに俺の元へと届いた。
カラフルな色の付いた銀紙に包まれた小さなチョコレートが2粒。そして、手紙にはこう書かれていた。
「好きだという気持ちに今になって気がつきました」
差出人は、幼少の頃に遊んでいた女の子である。いわゆる幼なじみと言われるその女の子は、当時同じ団地に住んでいたような気がする。
俺は小学校にあがると同時に引っ越しをしていたので、その子とはもう何年も会っていない計算になる。率直な感想として「なんだこりゃ?」ってな感じであった。
小学生くらいの年代というのは、男と違って、女の子はだいぶ考え方がマセているのかもしれないな、と思うようになったのは、それからだいぶ経ってからの事になるのだが、その時の俺は、相手の気持ちに答えてあげられるでもなく、イタズラをされたような不愉快な気持ちの方が強かったように思う。
何年も会ってなくて、しかも離れて生活しているのに、好きも嫌いも判る訳ないじゃん、ってね。その後もずっと会っていないのだが、もし相手もその時の事を覚えていたら、どの程度本気だったのかを聞いてみたいような気もする。

俺が初めて告白したのは、小学校の6年生の頃だったろうか。
同じクラスの、ショートカットで活発な女の子。直接告白する勇気がなくて、年賀状に気持ちを書いた。その当時はやっていた、暗記用のチェックペンという特殊なペンで「すき」とただそれだけ書いたのを覚えている。
チェックペンというのは、赤色のペンで書いた所を、暗記し終わって必要なくなったら、消しペンで消す事が出来るのだが、あらかじめ消しペンで書いておいた文字を、赤ペンでなぞると白抜きの文字が浮かび上がる、という使い方も出来た。あぶり出しの要領に似た、暗号みたいなものかな。
俺が消しペンで書いたメッセージを、相手が赤ペンでなぞってメッセージを読むという方法である。
気持ちは伝わったはずなのだが、学校で会っても、なんだか照れ臭くって、相手の顔すら直接見れなくなってしまっている自分がそこにはいた。それまでは意識することなく、普通にしゃべることが出来ていたのに、気持ちを伝えただけで、その恋は終わってしまった。
ガキの頃の恋なんていうものは、気持ちを伝える事が到達地点であって、そこから先のことは何も考えていないんじゃないかって、今になって思う。
気持ちを伝える事がすべてであって、その目標を果たしてしまった後の事なんて、どうでもいいって感じ。

いつまでも、ドキドキする気持ちは大切にしたいと思うが、到達してしまった時の事なんかは考えたくもないな。
って言うか、到達地点なんてものは存在しないんだと思う。すべては通過地点に過ぎないんじゃあないだろうか。
先へ、先へ。

2000.9.3.




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