お盆


転勤してからというもの、認識を新たにさせられることも多い。
今までは当たり前だと思っていた事も、実は当たり前だは無かったりだとか。

「お盆」という風習がある。
今までは実家に住む俺にとっては、帰省と言うものもしたことが無かったし、俺の職業的にも、仕事が休みになるわけでもないし、今までのそれに対してのたいした感情を抱いた事はなかった。
どちらかというと都会的な生活の中で過ごす「お盆」というものは、何らいたって変わり映えの無い生活の続きでしかなかった。

どちらかというと田舎的な土地で生活するようになった今回の「お盆」は、まさしく衝撃的なものだった。町の人口は、普段の倍以上にはなっているんじゃないかと思われるほど膨れ上がり、それも普段はあまり見かけない若い人口の増加に驚かされた。学校や仕事など、都会の生活を求めて出ていった人間が帰って来るのである。
過疎化が進む田舎では、普段は若い世代の人間を1度にこんなに目にすることはなかなか無い。
大規模な祭りや花火大会が連日の様に各地で開催されるは、これこそまさに「お祭り騒ぎ」である。同窓会や成人式もこの時に合わせて開催されたようである。
また、普段は渋滞など見たことのなかった道路でも、県外ナンバーの車であふれかえり、まさしく帰省ラッシュ!たいへんな騒ぎになっていた。

小売業という仕事にたずさわる俺にとっては、商売機会の拡大という事で、かなり鼻息も荒かったのだが、それ以上に消費者の鼻息の方が数段上を行く荒さで、そのパワーに圧倒されっぱなしであった。大事な家族やお客様をもてなす為の料理の準備、また郷土名産品と言われるもののお土産品需要などはものすごいものがあった。
食材など、普段はなかなか売れないような高級品が、大量に売れていくのである。しかも1人当たりの平均購入単価がやたらと高い。たくさんの量を1度に買っていくのである。
普段は比較的質素な生活をしつつも、ここぞという時には、人をもてなす気持ち、なんとなくだが暖かいものを感じた。
なかなか物を売ることが難しいこの御時世ではあるが、必要とする所にはきちんとお金は使われているのである。
朝から晩まで、過酷な労働条件の中で働きつつも、「お盆」っていいかも、なんて感じることが出来たのは、俺的には収穫だったか。
集まる人と人の暖かさを少しだけ垣間見ることが出来たからかもしれない。

そして、お盆が終われば冬支度に入る。

2000.8.27.




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