揚げ物は昔の恋の匂い


昔の話だが、惣菜屋さんで働いている女性と付き合ったことがある。彼女は揚げ物が担当で、朝から晩までフライやてんぷらなどを作っていたらしい。
仕事帰りにデートすると、髪も体も油の独特の匂いがした。
彼女はその事をだいぶ気にしていたが、俺はその匂いが好きだった。一生懸命働いた明かしだしね。それに嫌な匂いではなかったよ。

恋愛ごとって言うのは常に 50/50 (ヒフティー・ヒフティー) の関係だと俺は思っている。「相手が自分の事を好きでいてくれるから、自分も相手のことが好き」などという事はあってはいけない事だと思う。能動的な考え方をする彼女のことが俺は自慢だったし、マジで好きだった。
好きでいる事も、好いていてもらえる事も、そしてこれからもいい関係で付き合うのか、はたまたそうでは無いのかと言うのは、相手だけの責任じゃなくて自分の責任でもある。自分のことは棚に上げて相手ばかりを責めてはいけない。

・・フラれた時には、悲しかったよ。
やっぱり、直後は自分のことは棚に上げて相手の事を責める気持ちでいっぱいだったね。もうだいぶ時間も経ったので、今こうしてその時の事をこうやって文章に出来るのも、ふっきれれている証拠だと思う。
相手を責める前に自分の事を反省しろってね。フられちまう俺が悪いんだよ。

・・・

今は心の通う相棒と一緒なので、もう昔のこの話のことなんかしばらく思い出さないでいたのに、急に思い出す出来事があった。
匂いって記憶を呼び戻すんだよね。
職場で生パン粉付きのとんかつの試食販売をやったんだけど、その時の匂いは昔のちょっと切ないその時を俺に思い出させた。
そう、ラベンダーの香りをかぐと時間を越えてイッテしまう体質と似ているね。

2000.3.8.




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