時間薬


物理的なダメージとは違って精神的な傷というものは、その治療はなかなか難しい。
友人や家族など周りの人々の励ましや支えが、その傷を癒すのに効果的な場合もあるが、それらが根本的な解決になる訳ではなく、自分の気持ちがふっきれない限りは完治とは言えない。
時間薬 (じかんぐすり) とはよく言ったもので、時間の経過がそのまま薬になるという意味なのだが、これほど的確な意味を持った言葉は他にはなかなか無いように思われる。

人間の記憶というものは、生きて行くための本能としてとても都合がいいような構造をしているらしく、つらいことや悲しいことというのは、時間の経過とともにその記憶が薄れていくようになっているものらしい。
つらく苦しかった日々も、年月が過ぎて振り返ってみればいい想い出になっている、というパターンもありがちだ。

しかし、そう簡単には癒すことの出来ない傷というものもある。

言葉で言い表すことの出来ないような、深い悲しみというものが存在するからだ。

先日、俺とは従兄弟の関係にあたるやつが交通事故で死んだ。
年はまだ若く高校生だった。
本人もさぞかし無念だったことだろうと思うが、その親の悲しみぶりは俺なんかにはとても想像のつかない深いものなんだろう。

ふいに時間薬という言葉を思い出したのだが、時間薬は効くのだろうか?
早く効いて欲しいような気もするし、風化させてはいけない事のようにも思われる。

毎日、全国のどこかで交通死亡事故は発生している。
その犠牲となってしまった人たちの冥福を祈る。




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