五代君と響子さん


高橋留美子の漫画 「めぞん一刻」 って知ってる?
非常に有名な作品だから、俺が説明をするのもおこがましいんだけど少しだけ。

五代君は大学進学を目指す冴えない浪人生で、響子さんはその五代君の住むぼろアパートの管理人を職とする若い未亡人という設定。
長い派茶目茶な物語のあとに結局二人は結ばれるという結末なのだが、それにいたるまでの二人の気持ちの進行というか、心の内面の描写がリアルなのである。
俺がこの作品に出会ったのは確か高校生の時だった。その時はただ面白い漫画だなぁ〜くらいにしか思わなかったのだが、今になって考えてみると、と言うよりも、今になったからこそ考えられるのだろうが、二人から学ぶべきことがあると感じるんだよね。
手元に漫画が無いので、細部は違っているかもしれないけれど、記憶を頼りに・・・。

響子さんは若くして惣一郎さんという人と結婚するんだけど、すぐに旦那は死んじゃって、響子さんは未亡人になっちゃうのね。でも響子さんの心の中で惣一郎さんはずっと生きている訳。大抵の場合、想い出というのは美化される傾向があるようで、相手が死んじゃった場合なんかは特にその傾向が強いのではないかと思う。
それでも現実の人生を生きて行くためには、想い出を整理しなくてはならない場合や、想い出を心の奥深くに閉ざして仕舞い込んでしまわないといけない場合もあったりして、響子さんは想い出を捨てきれずに五代君と結婚することを決めるにあたって、その辺の踏ん切りがつかなくって少し悩むのね。
で、日頃は優柔不断なのに、プロポーズだけはすっごくカッコイイの。
五代君の決めのセリフ、「響子さんの中に住んでいる惣一郎さんも何もかもひっくるめて、響子さんが全部好きです」という感じ。 いや、俺のあやふやな記憶をもとにこれを書いているから、ちょっと違うかもしれないけど、確かこんな感じだった。

現実の恋愛とか、結婚とかって、自分から進んで自分の過去のそういう話をする人ってあんまりいないと思うし、俺自身も相手のそういう過去とかってあんまり知りたく無いと思う。興味はあってもわざわざ聞いてみたりとか、調べてみたりって言うのはちょっと違うと思うんだよね。

しかし、昔の恋人や結婚相手の影響っていうのはかなり大きなウェイトを占めるものなんだよね、現実には。いろんなつらい恋やら平凡な恋をいくつも重ねたうえで、現在のその人がそこにいる訳なんだ。
だから今、目の前にいる君が好きだ!って言うのは、詳しいことは知っていたとしても、知らなかったとしても、その人の過去をも全部ひっくるめて好きだ!って言うことだと思うんだ。

たまに、初めてお付き合いした人が今のカミさん(or ダンナ)です。って言うパターンもあるけれど、それはそれ。そういうのも一途な感じがしてとってもうらやましいし、あこがれる一面もあるけれど、世の中の大多数はそうではないはず。


今の自分の色は、自分だけで作った色じゃない。
いろんな人から染められて、そしてその色でまた誰かを少し染めて・・・。

君は俺の色で染まる事を善しと思ってくれているかな?
俺はもうだいぶ染まっているよ。

いい色に染まろうぜ。




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