ベルマーク


ベルマークって知ってる?

そう、協賛メーカーの特定の商品につけられた、点数付きのあのマーク。
学校などの教育機関を対象にした制度で、集めた点数に応じて景品がもらえるという仕組み。

俺は小学校の何年生の時だったかは忘れてしまったが、ベルマーク委員をやっていた。クラスのたいていの者は何らかの委員か、係に所属しなくてはならない仕組みだったので深く考えずに適当にその委員に立候補したのを覚えている。
何をどう間違ったのか、俺はその委員会の中でいちばん偉いポストである委員長を任されることとなった。
ベルマークというものを学校で集めていることは何となく知っているという程度の知識でしかなかったのに。

ベルマーク委員の仕事ははっきり言ってとてつもなく面倒臭くて地味な仕事だった。回収したベルマークを集計して点数を数えるのだが、きちんと指定の台紙に貼らなくてはならないのだ。
菓子類の箱から切り抜いたマークは集計しやすかったのだが、ドレッシングなどのビン入り調味料の包装部分に付いていたものや、カセットテープの包装部分に付いていたものは素材が薄いビニールみたいなもので、切り抜いた小さなベルマークは丸まってしまうため、とても扱いにくくて大変な作業であった。
チューインガムに付いていたマークもそのサイズがめちゃめちゃ小さくて、扱いにくいくせに点数が0.6点しかないという非情なものだった。

クラス対抗のコンクールが行われることとなった。いや、正確に言えばそれ以前にも毎年コンクールは行われていたのだが、俺が興味が無かったために知らなかっただけなのだが。
コンクールというのは、ベルマークをいちばんたくさん集めたクラスに賞状プラス何かの景品をあげちゃうから頑張って集めてねー、というやつ。

そのコンクールで俺は異常なまでに燃えた。
何が俺をそれ程までに熱くさせたのかは今考えても判らないが、とにかく考えつく手はすべて尽くして全力でベルマークを集めた。
家族や親戚、親類に頼んで集めてもらうのはもちろんの事、道端に落ちているごみの中からもベルマークを回収した。
もちろん俺ひとりで頑張ってもたかが知れている。クラス全員に毎日のように協力を要請して、みんなで頑張ったのだ。
同じクラスの友人の母親が学校給食センターで働いているというコネで、給食納品用のマヨネーズに付いていたベルマークを大量に獲得出来たのも大きかった。この時初めて見たのだが、そのベルマークは切手シートの様に1枚の大きなシート全面にたくさんのベルマークが印刷されているものだった。これはオドロキだったね。それまではベルマークは切り取った小さな形のものしか見たことなかったからさ。しかもその切手シートみたいなやつが束になってあるんだよ。これは集計も楽だったし、点数も大きかった。

コンクールは見事、俺のクラスが全校でトップの成績をあげた。全校生徒が一同に集まる朝礼と言う場で表彰されるということで俺は当日すっげー緊張してた。
朝礼が始まった。
「○年△組!」俺のクラスが呼ばれて、俺は全校生徒が整列している集団の中から抜け出して、駆け足で校長のいる最前列まで出て行った。

何か様子が変だ。
緊張と興奮で舞い上がっている俺でもすぐに変であることの理由を悟った。
校長の前には、俺のクラスの学級委員長がすでに立っていたからである。そう、表彰式はクラスを表彰するのであって、クラスでいちばん偉いポストの学級委員長がそこに立つ資格を持っているということに俺は気が付いていなかったのである。
表彰式という華やかな場に立つのは、俺では無かったのだ!!
背後で整列している全校生徒の中からはクスクスと笑い声すら聞こえて来る。俺は舞い上がったまま、真っ白になった頭の中を整理することが出来ず、ひきかえすことも出来ずにただその場に立ちつくした。

一生懸命に頑張ってベルマークを集めたのに。
思い出すと今でも恥ずかしい結末となってしまったね。

・・・遠い過去の記憶。




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