ため息


「ため息をひとつつくと、幸せがひとつ逃げてくんだって」

ため息をついている自分に気がつく度に思い出す言葉がある。
モト彼女が言ってた言葉だ。

俺は自分で言うのも何だが、そんなにため息をつく方ではない。
モト彼女は結構ひんぱんにため息をつく方であったと思う。
本当に何かに対して嫌になったり、疲れてたりしたんじゃなくって、単なるクセのようなものだったと思うが。
いい若いもんがしょっちゅうため息をついている姿は、はたから見ればはっきり言ってあんまり美しいものではない。
どこの誰だか知らないが、あまり美しくない行為をしているモト彼女に向かって戒めの意味を込めておくった言葉なんだそうだ。
いつものようにため息をついた後、その話を俺に聞かせた。

・・・・・

あれからちょっとした月日が流れた。
ため息をついている自分に気がつくと、必ずこのコトを思い出す。
少し前まではモト彼女のことなど思い出したくなくて、逃げてた。
思い出してしまいそうになるヒントになりそうなモノはすべて封印してた。

それがどうだ。
今では自ら封印を解いているではないか。
時の流れというものは、悲しみや憎しみをイイ思い出へと変化させてしまうものらしい。




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