やわらかいお肉が食べたい


お肉を販売する立場の俺にとって、言わせていただきたい事があります。

お客様にお尋ねをいただく内容でいちばん多いのは「このお肉やわらかい?」です。
これは本当によく、毎日のようにお尋ねをいただきます。

美味しいかまずいかを問われるのではなく、やわらかいことが求められているのです。
過去によほど固い肉を食べて苦い経験をされた人が多いのでしょうか。
いや、そんなことよりも、やわらかい肉を食べたいという需要が多いことを真摯に受け止めています。

販売する側の意見としては、やわらかいだけじゃなくて、
濃厚なコクのある旨みだとか、味わいは淡泊ながらもヘルシーでこういう料理に合いますよとか、料理の用途によってこういうお肉をお勧めします、とか、提案させていただきたい事はたくさんあるのですが、求められていることの第1番は「やわらかい」事なんですね。

食べ応えのある食感も味の一つだと俺は思うのですが、やわらかいお肉 = 良いお肉 という図式が成り立ってしまっている消費者心理も理解しつつ、ここでは どうしたらやわらかいお肉をゲット出来るかを追求してみたいと思います。


味と食感と食味
味とは、濃いとか薄いとかを意味します。
食感とは、固いとかやわらかいを意味します。
そして食味とは総合的に味と食感を合わせた物を表現する意味として使います。


やわらかいお肉 = 美味しいお肉 ?
消費者心理としては、やわらかければ = 美味しいお肉 なのかもしれません。
が、あえてここでは提言させて頂きます。
それだけではありません。


美味しいお肉 ≠ やわらかいお肉
料理用途、料理方法の提案がされているか、また相談に乗ってもらえるか、がポイントとなります。聞いてもまともな返答がもらえないような店でお肉を買ってはいけません。大型量販店等では、お肉の知識のない販売員も多々存在します。それらの店ではまず質問してみましょう。どんな返事が返ってくるかで、その店のレベルはすぐに判ります。


特売品 = 固い(まずい)お肉 ?
一度でも嫌な思いをしたら、その店で買うのはやめましょう。
それがいちばんの抗議です。
まともな店ではそんな事はありませんから。

まともな店では、特売品のお肉でもやわらかいです。


値段の高いお肉 = やわらかいお肉 ?
ほぼ当たりです。 ・・・が、それでは答えになっていませんよね。
店を選びましょう。
良い店では安いお肉もやわらかいのです。(本当)
逆に悪い店では高い値段のお肉もまずいし固いです。(とても本当)

少しだけ考えてみてください。
良い店では品質の良くない肉など、もともと仕入れないのです。
良い店では、鮮度にもこだわりがあります。鮮度が悪くなってから安くするのではなく、悪くなる前に安くして売ってしまおうという姿勢が見受けられます。

悪い店では仕入れ自体に不安があります。高級部位と言われる肉であっても、たかだかその品質はしれているかもしれません。
企業はある程度の利益を得なければ、存続出来ません。高級部位が破格に安い価格で売られている場合は、仕入れ自体が安い(=品質や鮮度に問題がある)と考えて良いかもしれません。


やわらかいお肉をゲットする為には
→ 店を選びましょう。
近所にあって便利だから、というのはもう終わりにしましょう。
お肉のやわらかさは、仕入れているお肉のグレードはもちろん、カッティングの技術によってもその食べた時のやわらかさは変わってきます。
筋目の入り方や方向など、部位によっては複雑に交差している他、厚めにカッティングしてもやわらかい部位もあれば、そうでない部位もあるからです。
お肉は職人としての知識と技術が必要なのです。

お肉専門店であろうが、量販店であろうが、知識のある人がその店にいて、質問にきちんと答えてくれることが消費者にとってはいちばん大切なのではないでしょうか。

小間切れや挽肉など、価格が安くて食卓に並ぶ頻度の高いものにこそ気を使って、品質・鮮度・価格 に配慮している 良い店を選ぶことが大切です。


安売り店
元の値段をわざわざ高く設定して、そこから値引きして見せかけの安さをアピールしているお店には要注意。
安さだけをアピールしている店で扱っている商品のグレードや品質なんて、ここで敢えて語る必要も無いでしょう。品質重視のお店で 安い肉を買う方が賢いです。高級店・品質いちばん店の安売り商品を狙うべきです。

大手チェーンストアなどでは、外部の下請け企業に商品を作らせて、パックされた商品を陳列しているだけなんていう場合もあります。
安ければ良い、というのはここでは語りません。


消費者にも覚えて欲しいこと
やわらかいお肉の為には、調理方法にも幾らかの知識が必要となります。
赤身肉は基本的に煮込み料理には向きません。ぱさついて固い食感になってしまいます。スネ肉でしたら煮込むほどにやわらかくなります。

厚切りにしたカツやステーキをダイナミックに食べたい場合は、筋切りをすると良いでしょう。専用の道具もありますが、家庭用の包丁の先を使って格子状に切れ目を入れたり、ビール瓶の底部分で叩くだけでもかなりやわらかくなります。


やわらかい ≠ 満足
やわらかい事が求められていることは判っていますが、それだけではないのです。
美味しいという満足は、やわらかいだけではなく、料理用途に合った部位の提案や、ボリューム・調理方法の紹介など、品質+αの部分が欠かせないと考えます。
いつも相談に乗ってくれる店が見つかると良いですね。





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