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K's Room Odds & Ends

禁煙、分煙、タバコのお話


 今の日本の社会の中、禁煙の動きが大変な勢いで拡散しているようである。僕自身は喫煙とはまったくの無縁で、ただひたすら迷惑だけを被って来た側でもあり、こういった流れにはなんともありがたい思いでいる。しかしながら、つい最近まで国が堂々と販売していた嗜好品を愛煙し続け、その結果としてニコチン中毒者に仕立て上げられた処遇の人達には、一抹の同情を覚えたりすることもある。日常的にコーヒーを飲む事と何も変わらなかったはずの行いが、今の世では犯罪者なみに“煙たがられる”わけである。

 今現在多数の人間が出入りするような場所で灰皿を見つける事はほとんど奇跡に近いようである。しかしながら、現在のように徹底的に喫煙者が淘汰される時代の前の段階として、分煙などといった表現で一ヶ所に喫煙者を集めるような時代もあった。その結果、自分の居場所を求める流民と化した喫煙者達が、わずかな灰皿を目指して列挙する事となったのである。駅のホームの喫煙ゾーンに、ビルの入口に設けられた灰皿の前に、事務所の一角の喫煙室に、特急列車の喫煙席で・・・。そして、この時集中的に発生した煙の量は半端ではなく、どなたもが経験した事もあろうとは思うが、怨念のこもったその煙たるや、不意にその場に出くわした瞬間一瞬何が起こっているのかと立ち止まらずにいられないほどの勢いであった。

 少し話は逸れるが、古い建築物の水道の蛇口を捻った時、錆を含んだ赤い水が出てくる事がある。古い建物だと建物の中縦横無尽に這い回っている水道管が鉄製だったりして、管の中で発生した錆が水に混じり赤水となって出てきたりする訳である。これを防ぐ為に、管の内側にあらかじめ樹脂でコーティングを施したライニング管と呼ばれる管を使用する工法がある。しかしながらこの時、継ぎ手などのわずかな部品が鉄製だったりすると、当然ながらその部分には錆が発生してしまう。そして、この時発生する錆の勢いは大変激しくて、管全体に発生するほどの量の錆が、そのわずかな部分に集中してしまうのである。まあ、仕事の関係で何やかんやとこんなウンチクは知っているのだが、まさにこういった局所集中の動きが、分煙の結果として発生した喫煙場所に起こっていた訳である。

 そして、この分煙、必然的に成立不可能な性質のものである事が周知の事実となった。一線を引いた事によって、かえって際立つ存在となってしまった喫煙という行為は、まるで宿命のように淘汰される動きへと変わっていったのである。駅からは完全に灰皿が撤去され、歩道で吸えば条例に引っ掛かる。事務室から大変な無駄を呼ぶスペースとなる喫煙室は取り除かれ、もはや新幹線さえも全席禁煙の動きがある。喫煙者にとっては妥協案を提出された末に、止む無く分煙に納得したはずのルールが、まるで巧妙な手法によって排除される方向へ置き換えられてしまったわけである。

 何度も言うが僕は正真正銘のノンスモーカー、どちらかといえば激しい意識を持つ嫌煙者である。考え方の根底にはただひたすら喫煙は迷惑な行為という基盤がある。しかしながら、今では円筒型の郵便ポスト並みに絶滅しつつある街角の灰皿を発見して、情けない顔をしてまずそうに煙草を吸っている一極集中のお父さん達の姿を見た時、あーあ、なんか気の毒だなあと、一抹の同情を感じたりもするのである。

 まあそんなこんなと、所詮は人事と楽しんでる訳ではあるが(笑)、最近関係ないやと笑ってもいられない出来事に気づき、なんとも気になっている。それは、昨今義務づけられた消費税込み表示のことである。いつ議論され、いつ議会を通った事なのか勉強不足の自分にはまるで分からない事なのだが、ある時一斉に店先で売られる商品の表示を消費税込みとするよう義務づけられた。確かに面倒な計算がいらないなどといったメリットもあるようだが、新聞などが取り上げる、実感を伴わせずに徐々に消費税率を引上げる為の政府が仕組んだ布石、巧妙に段階的に自分の財布の中から税金を搾取していく手法などということは本当にないのであろうか。人の事はともかく(・・)、いざ自分を取り巻く大きな流れに気付いた時、夜もおちおち眠れなくなっている今日この頃の僕なのである。

(04.5.8)

K's Room

東京大田区バドミントンサークル



 

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