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K's Room Odds & Ends

2歳児との日々


 我が家には二才半の男の子がいる。まあ、この文を読んでいる方などはよく知ってのとおり、僕自身自他共に認める強烈な親バカ振りである。実際、目に入れても痛くないとはこの事なんだなーと思うし(・・)、これじゃあ駄目だなーなどと自己嫌悪を感じながらも、泣かれたり笑顔を見せられたりするとなかなか本気で怒れない(・・)。まったく持って真性の親バカ振りである。

 ただそんな親バカでも、当然ながら子供の為にストレスが溜まり、“もう頼むから自分の時間を邪魔しないでくれー”とか“ああ、早くこの子が大人になって、手が掛らなくなってくれたらいいのに−”などと思わずにいられない時がしばしばある。

 元々自分の性格は整理好きで、几帳面な方だと思っている。しかしながら、この整理整頓という言葉が子育てという言葉とはまったくリンクしない。それは、二才半の怪獣は家の中に整理整頓してある物を崩す事が自分の生まれてきた使命だと自覚している為である。当然ながら、装飾(花飾りなど)や、芸術(美術品の展示)などは存在せず、それどころか、怪獣の手に物を触れさせないよう細工をこらしている為、壊れ易い物や、小物入れ等は箪笥の上のまたその上まで積み上げられ、バランス感覚やレイアウトすらもはや存在していない。

 平穏、静けさなどといった言葉は、怪獣が寝静まったわずかな時にだけ存在する大変希な環境を表わす言葉となる。テレビを見たり、CDを聴いたりしようなどと思えば、突如大声で叫び回り邪魔を始めるし、それでも無視していようものならティッシュの中身を全部引き出してしまったり、食器棚から一番高価なグラスを取り出してこれ見よがしに遊び始めるという悪行に及び、何としてでも自分に注意を向けさせようとする。

 普段の部屋中を見回してみればオモチャや絵本がいたるところに転がり、使おうと思った爪切りやボールペンがいつもの場所に見あたらず、履こうと思ったスリッパは必ず隠されているか、怪獣に既に履かれている。あるはずのない場所からパジャマやパンツが出てきたり、出社した後カバンを開き、ドラえもんの人形を取り出した事も一度や二度ではない。

 パソコンをやっていると、突然やって来てマウスをクリックし、とんでもない画面を開いてしまったり、疲れてゆっくりしようと寝転がると、「だっこー」と叫んで顔の上を這いずり回る。一度バドミントンの試合を見に来てラケットの使い方を憶えたらしく、部屋の中でフレームを握ってグリップを振り回し、シャトルをケースから全部出して、お手玉の要領で部屋中にばらまく(しかもニューだぞ!)。風邪を引けば遠慮なしに人の顔の直前でゲホゲホ咳をして、一家全滅に追い込むし、「着替えるよー」「お風呂入るよー」と言えば、「いやだー」と、叫んで逃げ回る。当然映画なんて見にも行けないし、上等なレストランでの食事も無理、飛行機で大騒ぎになるのは目に見えているから、海外旅行なんて夢の夢。夜中に思いっきり殴られて、なんだあ!と思って目が覚めると、なぜか熟睡している怪獣の足が目の前にあったり、日曜だって朝早く起こされて日々睡眠不足、こっちも歳だから一緒のペースでなどとても遊べず、毎日くたくたでもう死にそうである。これが偽ることのない二才児との生活である。

 それでも一度眠ってしまうと、寝顔がやたらと可愛いくて、じっと見詰めていると、「つまんねえなあ、早く起きないかなあ」と思い、つい起こしたくなる。結局のところ、あっという間飛び去ってしまうこんな時間がたまらなく愛しく、全ての自分の欲求を先送りにしても貴重な時間を大切にしたいと願う相変わらず親バカ街道まっしぐらな僕なのである。

(04.1.30)

K's Room

東京大田区バドミントンサークル



 

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