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K's Room Odds & Ends

コマーシャル「2」


 消費者金融の武○士には、本当にお世話になっている。

 ぬあんてことを言うと、「あいつは、ギャンブルにでもはまって、そうとう借金してるなあ!」などと、痛くもない腹を探られそうだが、ここで言う“お世話になっている”は、街頭で満面の笑みのお姉さんが差し出すポケットティッシュに、実に感謝してやまないと言いたいのである。

 どういったご縁か、無料でいただけるあのティッシュ、これが我が家の家計にとってどれほどの助けとなっている事か(・・・)、本当にありがたい話である。

 バブルの頃などには、街を歩けば5メートルおきに人が並んでいるくらい、様々な企業がこぞってまさに湯水のように配っていた街頭のティッシュペーパー。しかし、深刻な不況の昨今、その配布量、ティッシュの厚さは目に見えて少なくなり、今では駅前で配られる物のそのほとんどが消費者金融の物であると言っても過言でないような気がする。

 そんな中、さすがに飛ぶ鳥を落とす勢いの武○士さんである。そのティッシュの配布量も他社を圧倒し、その厚さも、パンパンに膨れ上がったビニールは、わずかな力加減でも気持ちよく切り取り線が破れるほどのサービスぶりである。

 まあ、しかし、物だけ貰っておきながらなんとも申し訳ないのだが、個人的にはいまだ武○士さんの本業のほうにはご縁のがない。そんな人間が、こんな事を言うのも実に何なんではあるが、この膨らんだティッシュを見る度に、この不況下、いったいどれだけの人の血と涙がこの中に濃縮されているのであろうか(・・・)と、想像してしまわずにはいられないのである。

 まあ、今回ポケットティッシュがどうこうと言うわけではなく、相変わらずその圧倒的な勢いをティッシュのみならず(・・・)テレビのCMでも誇示し続ける武○士を始めとするこれら大手消費者金融。そして、そんなCMの数々。見ていると、どうしてもただ笑っているわけにはいかないと考えてしまう内容が実に多い気がするのである。

 「どうする、ア○フル」のCMがある。

 最近では続編も作られたりしてるようだが、あの眉毛に色気のあるお父さんが、“チワワ”にぞっこんになってしまう例のあれである(ちなみにこのチワワ、名前をくぅーちゃんと言うらしい)。

 とあるペットショップ。小犬の入ったショーケースを娘が覗き込む。

「かわいー、ねえ、お父さん、買ってよお」

 その声に、ぜんぜん関係ない棚を物色していたおとうさんが一言、「ボーナスまで、(振り向きながら)待ちなさ・・・・・・」

 そして、チワワを食い入るように見るお父さん(ちなみにこのお父さん、かつてはドラマ「噂の刑事トミーとマツ」で、何とも不甲斐ない係長の役をやっていた・・・ふる)。

 で、ここで言いたい。なぜ「ボーナスまで待ちなさい」なのか。「買ってよ」に対する答えが、娘が欲しがっているその物も見ずに、「ボーナスまで待ちなさい」。これは、絶対におかしいっしょ!

 これは明らかに教育の問題であり、親のその責任放棄のなにものでもないと僕は思うわけである。

「娘が欲しい=買ってあげる」で、こんなに大きくなるまでこんな短絡的な行動で子を育てて来たとしたら、この娘一体どんな人間になってしまっているのだろうか?

 本人は金でなんでも解決できると思っているから、いいように利用されるだけで友達の一人も出来ない。そして、独善的な考えしか持てないから、誰にも協調できず仲間からは鼻つまみものにされ、挙げ句の果てに九分九厘いじめに遭う。そして、私を分かってくれるのはここだけよと、とんでもないカルト教団に嵌まり、訳の分からない教祖のためにせっせと布教活動をして生涯を終えるなどとくだらない妄想をしてしまうが、実際CM中の彼女はなんか良い人そうだから不思議でもある・・・。

 まあ訳の分からない話はさて置いても(・・・)、あのシーンで娘のおねだりに対してオヤジが取るもっともなリアクションとしては、「家はマンションだから飼えないだろう」とか「散歩は誰がするんだ」とか、「生き物なんだから、うんちだってするし、第一死んでしまうんだよなどと言い、考えを、思い止まらせようとするのがもっともな答えであるはずである。

 そして、なんでしょう、ボーナスより前にお金が必要だから、「どうする?」「ア○フルで借りましょう」と来るわけである。CMの展開に思わず目を奪われて、何気に見過ごしてしまいそうだが、何ともおいおいな話である。

 で、この続編、犬にタキシードを着せるなんてのは、動物虐待も甚だしい!・・・、もういいって?!

 まったく同じ主旨のCMで、「たまには、ババンと」もいただけない。僕らが少年の頃、カトちゃんは多少下品ではあったものの、転げ回るほどの笑いと夢を与えてくれていた。そして、エンディングの「エンヤーコラヤ」では、風呂に入れとか、歯を磨けとか、宿題の心配までしてくれていた。それが、今は「ババンと」って・・・。

 やはり、ババンと借金をしてしまっちゃ駄目でしょう。

 “簡単ですよ”

 “後ろめたくないですよ”

 “物を買うための、一つの方法です”

 そんな考えを消費者に植え付けることに躍起になっているとしか思えないこれらのCM。やはりちょっと待てよと言いたい。「やむにやまれぬ」理由でこういった手段を取るしかない人も確かにいるはずである。しかし、単に今買えない物を買うことや、より贅沢な行動を実現させるための手段であるならば、それははっきりと間違っている。借金は借金でしかないのだ。

 以前にもこのコーナーの「コマーシャル」で、同じ主旨のことを言ってはいたが、相も変わらぬこういった業界の姿勢には、何とも辟易させられてしまうので、また怒ってしまったわけである(笑)。

 しかし、そんな中、インパクトのあるそんなCMの数々を見て、「ババンババンバンバン アーキャッ○ュワン」と歌っている我が子に、「お父ちゃんは保証人にだけはならんぞ!」と言ってみるしかない、今日この頃の僕なのであった。

(03.7.12)

K's Room

東京大田区バドミントンサークル



 

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