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K's Room Odds & Ends

他人の空似


つい先日、通りすがりブラウン管の前で、ハッとなって振り返った事があった。

 それは、何の番組だったのかはまるで記憶にもないのだが、徹子の部屋のような対談番組のセットの中でソファーに腰を降ろしていた「新庄剛」を、「あっ、吉川晃司だあ!」と、思い違えハッとしたのである・・・(ひ、引かないでくださいね)。

 2001年、日本のプロ球団阪神タイガースから、アメリカのニューヨークメッツ(現在はSFジャイアンツ)へ、新庄選手が移籍した。移籍が発表された当初、関係者、マスコミを始め、ほとんどの世間一般の人達は、冷ややかな目で彼の言動を見ていた筈である。そして、誰もが「どうせ、通用しないよ」と嘯いていたに違いない。

 しかし、一シーズンが終わってみると、彼の活躍はその前評判を充分に蹴散らすものだった。イチローの陰に隠れてしまったことは仕方ないとはいえ、シーズン中は日本中の誰もが、その予想に反した「SHINJO」の活躍に一喜一憂した筈である。で、その野球の話ではなく(・・・)、その新庄がオフとなり帰国、テレビのバラエティー番組に出演していた時、居間のテレビに映っていた彼を見て僕はハッとなったのである。

 「吉川晃司」に「似ている」ではなく、「本人が映っている」と思い「ハッ」としたのである。本当にくだらねえ話しになってきたなと思わずに、何とかお付き合いいただきたい(笑)。

 で・・・、そして、その「似ている」という言葉には「十数年前の、デビュー当時の、痩せていた」といういくつかの前置きを付けなければならず、それが逆にハッとした原因でもあった。

 で、何なのか。僕はこんな風によく人を取り違えるんだと言う事を書こうかと思う。

 それでも「今の所は」テレビに映っている人に限ってである。ぶっちゃけた話、耳と鼻には結構自信があるのだが、目はさっぱりである(顔に付いている大きさとか、形の話しではない・・・!)。

 子供の頃はやたらとそれが顕著であった。

 最もひどかったのは、古谷一行と、林隆三の区別がまったく付かなかった事だ。

 おそらく「えっ」と思われる方が圧倒的だろうと思う。微妙に似ていても、区別できないのは大袈裟なのではと思われる筈である。そのとおりであり、今の僕ならば「違う」とはっきり言える。しかし、その当時、子供の頃、僕はこの二人に相当混乱させられていたのだ。二時間ドラマの中で、少しニヒルな刑事役を演じている林隆三を見て、「ああ、この人は金田一耕介の他にも、こんな役が出来るんだなあ」と、真剣に思っていたのだ。

 しかし、その思い込みが覆された時、幼き頃の僕は驚愕と共にひとしきり続く苦悩を抱え込む事となった「いったいどこが違うのだろう?」と・・・。

 僕が同一人物と錯覚しまくっているこの新庄と吉川にしろ、古谷一行と林隆三にしろ、実際の本人にそれぞれにでも会えればきっと取り違える事もないのだろうと思う。写真を並べる、あるいは二人が共演して、同じ画面に納まるかすれば、きっと区別が付いたに違いない。

 しかし、幼き頃の僕には、それを確かめる術がなかった。いたずらに廻りの人に訴えては、似てねえだろうと、一笑され続けていたのだ。そして、こんな風にその思い込みから抜け出す事が出来ずに人を取り違えている状態を、僕は「はまっている」と解釈している。

 こんな「はまったいる」状態でも、別人だと認識して苦しんでいる時はまだいい。最悪なのは、時として、それは今現在も、勝手に同一人物だと思い込み続けている人が存在する可能性があるという事なのだ(・・・)。

 「ああ、朝の連ドラに出ている人は、実はキャスターもやっていて、この番組ではニュースを読んでいるんだなあ」などと、漠然と思っているが、実は別人なんだというような事がないとは言えないとうことである。こうなるともう始末におえないわけだ。

 人の目の映り方は、皆同じではないという文章をなにかで読んだ事がある。一つの絵を見た時のその捉え方は千差万別だというのだ。まさか上下が逆に映る人はいないとは思うが、簡単に言えば、ひとつの細長い横たわる物体の絵を「ヘビの絵」だと言う人と、「女の人」だと言う人がいるという事である。初めから何かを当てはめてしまうのか、想像を働かせるのかの違いでもあるらしい。年齢が若ければ若いほど、子供であるほどその発想は柔軟なようだ。

  映り方が違うのだから、例え、山田花子と、藤原紀香が似ていようが、かっちーとやっちーが(だれじゃ!) 似ていようが、まったくもって本人の勝手なのである。

 だから、僕のこの思い込みが暴露された瞬間、「えーっ、ぜんぜん似てないじゃん!」などと、呆れられる筋合いはないのである。

 そんなこんなで、最近サンマの番組で酔っ払いにクイズを出し、朝の番組でなぜかレシートをチェックしている「安住アナ」と、深夜番組で女の子の部屋に押しかけ、勝手に家賃が高いとか、安いとか診断している人(わかりずれ〜!)とが別人なんだと知り、すっぽり「はまった」まま、いったいどこが違うのだろうかと驚愕しながら日々悩み続けている僕なのである。

(02.8.24)

K's Room

東京大田区バドミントンサークル



 

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