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K's Room Odds & Ends

自動販売機


 日本の街中至る所に自動販売機があふれているように思う。日本ではとわざわざ言っているのは、アメリカなどでは、屋外に自動販売機などとはとても考えられないと聞いた事があるからだ。もし屋外にそんな物を放置していたら、一日目に中のお金がなくなり、二日目には商品が奪われ、三日目には機械自体がなくなっているだろうなどと何かに書いてあった。

 もっとも日本でも、徐々にそれに近いような状態に陥っているようで、破壊され見捨てられた自動販売機や、センサー付の物々しいステッカーを貼ったもの、ライオンでも繋いでおくような太い鎖で扉をロックされた物などを最近は見かけるようになった。それでも、まだまだ治安の良いらしい日本では、ジュースを販売する物、テレフォンカード、CDを販売する物、花束やぬいぐるみを売る物まで、探し出せばそれこそあらゆるジャンルの自動販売機が存在し、自動販売機を一手に集め、一つの売店を構成するような場所さえ存在している。

 先日テレビで、「おでんの自動販売機」というのをやっていた。経営の思わしくないおでんの“たね屋さん”が、苦肉の策として編み出したカップ入りのホカホカおでんの自動販売機である。実はこれが隠れたヒット商品となり、冬の寒い日などには良く売れているらしい。それを見てアイデア一つでまだまだうまい商売がある物だなあなどと感心させられた。

 そんな日本でも、タバコの自動販売機と、酒の販売機はどうも外国人からひんしゅくをかっているようだ。誰でも無許可で買えてしまうそれらの機械は、未成年者の非行を助長するようなものだという理屈らしい。確かに売店で酒を買うにも身分証明が必要になるような国の人から見たら、少々信じられないような話なのだろう。もっとも最近では国内の世論でも取り上げられる事が多いようで、PTAなどを中心に、酒や、タバコの自動販売機の規制などといった動きもあるようだ。

 ある日千円札一枚で、自動販売機からジュースを買った。

 皆さんも経験がおありだろうとは思うが、ちっとも認識してくれない自動販売機の紙幣投入口からお札を入れて、100円なんぼのジュースを買うのはひどく煩わしい。

 その日も何度となく投入口から千円札がはじき出された末、それでも、何とか目当てのジュースのボタンを押すまでにいたった。搬出口からジュースが転がり出て、返却口には小銭が次々と落とされ山となっていった。その当時の、ジュースの値段は110円であった。千円札で購入すると、実にお釣は890円、500円玉一枚に、100円玉が3枚、50円玉一枚に、10円玉が4枚である。

 小銭の返却口は実に狭い、おまけに僕の指はひどくでかい(爆)。そんなこんなで、握ってしまうと壷からお金が取れないイソップのキツネ同様(犬だったかな?)、一度に返却口から硬貨を掴み出す事は不可能に近い。不可能なのだから、丁寧に数回にでも分けて取り出せば言いものを、せっかちな僕は一度に全ての硬貨を、片手数本の指だけで掴み取ろうとした。案の定、掴みきれなかった硬貨が一枚滑り落ちた。次の瞬間、事もあろうにその一枚の硬貨は、道路の溝へ吸込まれ、公共下水道の深遠なる闇の中へ消えていったのである。

 まあ、いい。お釣として受け取った9枚の硬貨の中の一枚である。確率的にも4枚ある10円である可能性が一番高い。1枚しかない50円玉ならまあアンラッキーだなあ、100円だと結構痛いよなあなどと、漠然と考えながら手の平を広げてみた。そこに足りないのは紛れもなく500円玉だったのである。

 まさにマーフィの法則である(ふる)。考えうる予測の最悪の一つの結論が出ると言う奴だ。「エレベーターの押しボタンはいつも振り向いた方と反対側にある」「たった二人しかいないのにその広いロッカー室で隣り合わせになる」「落としたトーストは必ずバターを塗った面が下になる」等々。

 こんな経験をしてからは、これを教訓にして(・・・)、自動販売機で買い物をする時には、極力細かいお釣が出ないよう端数をお札と一緒に入れるという技を使うようになった。まあ、こんな事は誰でもやっている事とは思うが、例えば110円の物を買う時、100円玉がなければ、1000円札に、あらかじめ10円を足して入れるという事である。

 そんなわけで、160円の切符を買うのに、210円を入れて、50円玉のお釣が出てきた時などは、一人にんまりとし、あろう事かバラの10円玉が飛び出てきた時には、なんとも落胆したりしているわけだ(笑)。

 自動販売機の中で切符の券売機について不思議に思っている事がある。それは、以前にテレビのバラエティ番組の中でやっていた話なのだが、券売機の様々なボタンの中に、まとめ買いをするための人数を入力するボタンがある。金額を押す前に、絵表示された人数ボタンを押すと、その枚数だけ切符が買えるというやつだ。そして、そのテレビの中で、そのボタンの中の「一人用ボタン」の使い道についてあれやこれやと話題にしていたのだ。

 二人、三人と人型が並ぶ中の一人用ボタン。元々機械自体デフォルトで一人なのだから、改めて一人用ボタンを作る必要はないのではないかというのである。普段、一人用ボタンを押してから切符を一枚買うという人はいない筈である(と、思う)。

 その番組の中でもそれらしい答えを導き出した人はいなかった。で、僕も考えてはみた。そして、一応使える答えとして思いついたのは、二人用を押した後、何かの都合で一枚に変更する場合である。例えば、気配り屋の人が友達の切符も買おうと二人用を押した、しかし、その友達はそれに気付いたか気付かぬか、そそくさと自分の切符を買い始めてしまった。仕方なくその気配り屋は一人用ボタンを押し、枚数を一枚に戻す。そんな使い道もないではないなあと思った訳だ・・・。

 何か他に使い道があるのでしょうか?

 まあいずれにしても、非常にくだらない文章をまたしてもつらつらと書いてしまった訳ではあるが、「当り」の機能があるくらいで、何らコミュニケーションの機能も持たない自動販売機が街にはびこり続けている現状は、この不景気でしょ気返っている街中を更に暗くする元凶となっているのではないかと憂いたりしている。

 チャリン、ガシャンの世界。

 ジュースを取り出した後に、何とも言えない虚しさを感じるのは僕だけだろうか(んな、大袈裟な)。BGM付の電子音で「アリガトウゴザイマシタ、マタノオコシヲオマチシテオリマス」なんて言われた日には、“もう絶対買わねえよ”などと思い、やっぱりジュースやたばこは売店でおばちゃん相手に買う物なんじゃないだろうかなどと考えたりしている。

 失業率が過去最高を更新し続けている現代、もし全ての自動販売機を撤廃し再び手渡しの経済に戻せれば、どれほど雇用の促進に繋がる結果となっていくだろうかと一人考え、小泉さんに提言したいなあなどと空想している今日この頃の僕なのであった。

(02.01.19)

K's Room

東京大田区バドミントンサークル



 

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