子供の頃から映画が好きでよく見ている。
父親が映画好きだった事もあり、学校の夏休みや冬休みとなれば、よく連れられて映画館へと通ったものであった。
「ゴジラ」(旧作)のシリーズなどは欠かさず見ていたし、「ガメラ」(旧作)や、「大魔人」(!)などもテレビとごちゃ混ぜになりながらもに一通り見ている。
小学生の高学年から、中学生くらいになると、仲間同士で映画館に足を運ぶようになった。その頃見た映画には、「ジョーズ」や、「ロッキー」、「スターウォーズ」(これも旧作 笑!)などがある。
東京に出てきた当時、「名画座」の存在には歓喜したものである。「名画座」などといえば、今ではすっかり寂れてしまった印象であるが、少し前のロードショー作品を数本まとめて数百円で上映する映画館という存在は、当時の僕にとってはまさに夢のようであった。
今でこそ、もう何本もまとめて映画を見ようなどとは思わないが、その当時は朝から映画館へと勇んで出かけて行き、もう以前に見ているにもかかわらず「スターウォーズ」三部作や、降旗監督の「高倉健シリーズ」三部作(し、渋い・・・)などといった映画を、体力任せに見ていたものであった。
先日お昼のテレビ映画で、「大魔人」の再放送(再々々??)をやっていた。
今の若い人などは、きっと「大魔人」などといえば、マリナーズで頑張っている佐々木投手の事でしかないのだろうけど、僕にとっては、思い出の映画と言っても良い(う〜っ、本当に年を感じる!!)。
しかし、改めて見てみたこの映画、なかなか面白くて、ついついのめり込んで見てしまったのである。
「大魔人」の主役である、「魔人様」は (・・・)口から火を吐くわけでもなく、強力な武器で相手を倒すわけでもないのだが、その圧倒的な大きさで、悪代官の作った町をただひたすらパンチとキックで壊しまくる。
そして、最後には、まるでターミネーターのように、どこに隠れようとお見通しの眼力で逃げまくる悪代官を掴まえ、これ以上はない残虐さで殺してしまうのである。
ここで目的を達成して、引けに引けなくなった「魔人様」が、さてこれからどうしましょうかという時、どこからともなく貧しい境遇の美しい娘が現われ、「魔人様」の足元にホロリと一筋の涙を流す。
すると、その涙にほだされた「魔人様」は、お怒りを静め、火の玉と化して空へと消えていく。
水戸黄門ばりの、お気まりのパターンではあるが、今見ていても映像には迫力があり、最近のジャンル分けでこの映画を表現するならば、正真正銘「パニックホラー」映画となるはずである。
何も語らずひたすら破壊し続ける「魔人様」には、圧倒的な存在感を見せ付けられるのであった。
そして、この映画、何ともストーリーがシンプルなのがいい。今の映画では考えられないくらい単純なストーリー(「MATRIX」のあらすじを書けなどといわれたら、原稿用紙10枚くらいは必要になりそうだ)は、やる事もなくヌボーッとしている昼下がりなどには、うってつけの映画だといえるのではないだろうか。
何だかんだと理屈をつけるのが好きな僕の中で、「お気に入りの映画ベストスリー」というのがある。
“なんだ、またくだらねえ話になってきたな”などと思わずに、ここはぐっと堪えていただきたい・・・。
で、その「お気に入りの映画ベストスリー」。そのタイトルを、せん越ながら上げさせていただくと、堂々の第1位が「ストリート・オブ・ファイヤー」。そして、第2位が「ランブルフィッシュ」。そして、第3位は「恋のゆくえ(邦題)」と続く。
ここでも引かずに、グッとお踏み止まりをいただきたい(笑)。
で、このベストスリー、この中では一番新しいといえる「恋のゆくえ」でさえ、すでに10年以上も前の作品である。
僕の中では、最後にこの「恋のゆくえ」が「グランブルー」と入れ替えにランキングしてからは、ずいぶんと長い間変化のしていないベストスリーなのである。
この「お気に入りの映画ベストスリー」の中に、新しい映画が登場してきていないのは、なにも新しいものは駄目だとか偉そうにウンチクをたれているわけではなく、どうやら、ただ短に自分が歳とってきて、新鮮な感動を感じられなくなってしまった現われなようなものである。美しい景色を見るのは若い内だという事を、身を持って感じているような始末なのだ(とほほ)。
で、このベストスリーについてしばし解説を・・・。
1位の「ストリート・オブ・ファイヤー」、この映画は1985年に上映された作品である。
“当時には大ヒットしていたのか?”などと聞かれれば、そういうわけでもない。
今ではなくなってしまったが、蒲田の駅ビルの中の名画座で、その当時ちょっと前まで鳴り物入りでロードショー公開されていた「フットルース」が、都落ちで上映されていたことがあった。そして、その時の“おまけ”の映画として併映されていたのがこの作品だったのである。僕にとっては予備知識もないままに、本当に“たまたま見た”にすぎない映画だったのだ。
監督は、ウォルター・ヒル、主演はマイケル・パレ、ダイアン・レイン、脇役が、まだこの頃ほとんど無名だった、ウイレム・デフォー(プラトーンのジャケットで両手を広げている人です)という面々である。
この映画、当時欠かさず“ぴあ”を購読していた僕でさえ、いつの間にロードショー上映されて、いつの間に打ち切られてしまった映画なのか、皆目見当がつかないくらいであった。映画初出演、初主演という輝かしいデビューをしたはずのマイケル・パレが、この後に見事なまでに鳴かず飛ばずであった。そんなことで、後にもますますこの映画はマイナーなイメージを深めていってしまったように思える。
で、この映画、何が面白いのか。
大まかにこの作品のジャンルを言うと、「ヒーロー活劇物」である。
ある時代のある街で、ロックンロールのコンサート中に、バンドのボーカルであるヒロインが、偉大な悪のリーダー率いる皮ジャンで身を固めたバイク軍団「ボンバーズ」によって誘拐されてしまう。それを聞き付けた元恋人のヒーローが颯爽と登場し、ヒロインを救出、その後、その落とし前を着けるために、悪のリーダーとのクライマックスの決闘へと物語が進んでいく。
と、こんな感じである。この映画も「大魔人」同様(・・・)、今では考えられないくらいシンプルで、果たしてこんな話を映画にしたところで、娯楽性があるのだろうかと誰もが考えてしまうようなストーリーなのである。
結局のところ、この「ストリート・オブ・ファイヤー」、本当に意味などないというのが僕の結論なのだ(何せパンフレットの中で、監督自身が本当に言っているくらいなのだ)。
「自分のやりたかったシーンを全てこの映画の中に凝縮した。ロックンロール、ヒーロー、ヒロイン、カーチェイス、雨の中のキス、ネオンサイン、ダンスホール、決闘・・・」
ただ短に、普段はシリアスな映像で定評のあった監督が、全てのしがらみや呪縛を解き払って、童心のまま好き勝手に映画を作った、とうのがこの映画の全てのようだ。
しかし、この好き勝手さに、僕はビビッと来てしまったのである。目の前に差し出された宝箱の中身の全てが、僕が欲しいと思っていた物とびったり一致してしまったのである。
実際のスクリーンでもこの映画3回は見ているし、持っているビデオでも10回は見ている。サントラのLPは、もうプレーヤーもないというのに唯一手放せない一枚で、CDと合わせると、いまだにMDにダビングしてまで聞いている。要は、この映画に限って、まるっきり僕はオタクになってしまった訳なのである。
そして、2位の「ランブルフィッシュ」、監督はフランシス・コッポラ、主演がマッド・ディロン、共演にまたしてもダイアン・レイン、そして、ミッキー・ローク、ニコラス・ケイジ。
今考えてみれば、驚くべきことに、これらの面々はまだほとんどデビューしたての頃だった。この映画で始めて僕が知ったニコラス・ケイジなどは、主役のマッド・ディロンと対立するこの劇中の役から受けた嫌悪感で、つい最近まで彼の映画を見る気になれなかった程、当時から存在感のある俳優だったのである。
最後に、3位の「恋のゆくえ(Fabiulas Baker Boys)」、この映画だけは前に紹介した映画に比べて、ずっとメジャーだと言える。アカデミー賞を数部門も獲得しているので、ご存知の方もいらっしゃるだろう。この映画の中、吹き替えなしでステージで唄うミシェル・ファイファーには、ビビッと来たものであった(笑)。
映画の内容もさる事ながら、ジャズで構成されたサントラがなによりもお薦めで、僕の「お気に入りのCDベストスリー」(・・・)の方にも、いまだランキングされている作品なのである。
同じ映画を見たとしても、その時の自分の体調や、先入観との戦い、どこまで自分の中にそのジャンルに許容力があるかなど、様々なファクターによって、その映画の受け取り方はまちまちになると僕は思う。だから一概に、これよりあれが良いなどとは言えないはずで、よく仲間との話の中で、あれは面白かった、これはつまらなかったなどといった話にもなるが、テレビの再放送で見てみたら、あの時つまらないと思ったものが、“なんだ面白いじゃん”となったりするもので、結局のところは人間の主観など何ともあてにならないなと思う。
だからというわけでもないが、これらの映画、みなさんがもし見られたときに面白いと感じるかどうかは、とうてい想像も付かない。
もし休日などに死ぬほど退屈してしまったときの暇つぶしの映画としてでも、頭の隅にでも入れておいて頂きたいとは思うのである。ただ、お近くのビデオ屋さんに置いてあるのかという点では、保証の限りではありませんが(笑)。
(00.11.18)