奥羽山脈焼石連峰駒ヶ岳におけるカマアシムシ類とその垂直分布


駒ヶ岳の位置図
駒ヶ岳の位置図
駒ヶ岳山頂の遠望
駒ヶ岳山頂の遠望
駒ヶ岳での調査場所
駒ヶ岳での調査場所
St.6の状況
St.6の状況

Proturan species compositions at 6 sites on Mt. Komagatake
Site St.6 St.5 St.4 St.3 St.2 St.1
elevation (m) 620 710 820 920 1010 1130
Acerentomidae
 Baculentulus morikawai 10 4 56 4 109
 Imadateiella shideiana shideiana 1 93 4 11 21
 Nipponentomon nippon 2
 Tuxenentulus ohbai 9 2 15 4 20 4
 Verrucoentomon shirampa 1
 Yamatentomon yamato 1 7
 Acerntomidae sp. 1
Eosentomidae
 Eosenotmon asahi 1 1
 Eosentomon sakura 24
 Eosentomon udagawai 2
 Eosentomon sp. cf. yezoense 10 43 4 9
 Eosenotmon sp. cf. udagawai 2
 Eosentomon sp. Ko.1 4
 Eosentomon sp. Ko.2 2
 Eosentomon novemchaetum ? 1 1
 Eosentomon sp. cf novemcahetum 2
 Eosentomon ? sp. 1
 Paranisenotmon tuxeni 3
No. of individuals 48 8 188 58 37 150
No. of species 6 4 11 6 5 5
2001年8月に岩手県南部に位置する焼石連峰の一峰である駒ヶ岳の南東斜面で, 標高620mの登山口から山頂(1129.8m)にかけて,土壌動物相と垂直分布を調査 した.その結果,2科8属18種(種名の確定できたものは10種)のカマアシムシ類が 確認された.種名の確定した10種は全て岩手県での既知種であった.

得られた種類をみると,クシカマアシムシ科の7種に比べてカマアシムシ科が11種と多いことが特徴である.クシカマアシムシ科の種は乾燥に強く,カマアシムシ科の種はより安定した湿潤な環境を好むことが知られている(今立,1991).今回カマアシムシ科の出現種が多かったのは,調査地がブナ林などの自然林で土壌も豊かであり,安定した湿潤な環境を反映しているからと考えられる.
 


A dendrogram based on Two-Way Indicator Species Analysis

A dendrogram showing the similarity among 6 protura communities
based on binary data

A dendrogram showing the similarity among 6 protura communities
based on precentage similarity
2.垂直分布
1)種数,個体数
 出現種数はSt.4の11種が最も多く,最小はSt.5の4種であったが,St.4以外の調査地での出現種は4から6種であり安定していた.標高の変化に伴う種数の明瞭な変化は認められなかった.
 各調査地点で採集個体数にバラツキがあり,標高の変化に伴う個体数の変化は認められなかった.

2)多様度指数
 各調査地点における種類組成の構造変化を計量化するために,多様度指数で測定解析した.各指数と標高との相関係数は,いずれも有意な相関は認められなかった.しかしながら,全体としてみれば,低標高域よりは高標高域の方で値が低くなる傾向が窺われる.このことについては,今後,気温・地温などの生息条件の年間変化を考慮して解析する必要がある.

3)群集構造
 二元指標種分析(two-way indicator species analysis: Twinspan)による分類では,最初にSt.6と残り5地点に分岐した.次にSt.4と残り4地点に分岐した.4地点はそれぞれ,St.1とSt.2のグループとSt.3とSt5のグループに分岐した.また,出現種の二元データに基づくデンドログラムでもSt.6とその他の地点に分かれた.これらの結果は,St.6の出現種の構成が他地点と異なることを示している.この違いには,St.6だけが高木層の優占種がミズナラであるため,その植生の違いが影響しているのかもしれない.
 さらに,個体数を加味した百分率指数をもとにクラスター解析を行った結果,St.6とSt.5のグループとSts.1〜4のグループに分かれた(Fig. 5).これは,標高710mの地点を境にして,群集構造に違いが現れていることを示している.出現種の構成で異なっているSt.6が群集構造ではSt.5と類似性があることが示されたことにより,標高の低い方の2地点とそれよりも標高の高い4地点の二つのグループに大別された.この結果は,標高にもとづく環境要因の違いが群集構造になにがしかの影響を与えていることを示唆していると考えられる.

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