その19. 2000年10月27日の星見
(群馬県高山村ぐんま天文台)


今日は金曜日ですが、会社は休み。昨晩、職場の仲間と浅間山にある会社の保養所に泊まったので、そこから星仲間の待つ、ぐんま天文台に一人で移動しました。昨晩というか、今朝の7時頃までお酒を飲んでいたので、保養所を追い出された後、14時過ぎまで、車の中で爆睡しました。そろそろぐんま天文台に移動しないと、仲間との待ち合わせに間に合いません。待ち合わせの仲間は、ホームページの掲示板で知り合い、数週間前に赤城山の観望会でお会いした、太田市に住む茂木さんです。当初、八千穂高原で星見をしようと思っていたのですが、今年のゴールデンウイークに里美牧場で知り合ったグランツさんが、茂木さんとぐんま天文台の一般観望会に行くということで、私も合流することにしました。茂木さんは一般観望会後に、群馬天文台の設置望遠鏡を使って、冷却CCDで撮影するそうなので、私も持ち込み望遠鏡スペースを借りてもらって、一緒に星見をすることにしました。

16時半、ぐんま天文台の駐車場で、茂木さんと合流。機材があるので天文台の中に車で入ると、グランツさんとその奥さんのアネモネさんが天文台の入り口のところにいました。一般観望会が始まる時刻は19時。時間が随分あるので、明るいうちに持ち込み望遠鏡スペースに自分の望遠鏡を運び、設置しました。設置スペースの場所は車が入れるところからかなりの距離があり、普段、車のすぐ横に望遠鏡を組み立てて星見している私にとっては、機材運びは重労働でした。その後、一般観望の時刻までみんなでおしゃべりをしていました。一般観望の間は、天文台の150センチと65センチの望遠鏡でいろいろな天体を見せてもらいましたが、シーイングが悪いせいか、はたまた、望遠鏡の光学系が悪いせいか、感動するほどの像は見られませんでした。ただ、ここ最近の一般観望会では天気が悪く、これほどの快晴となったのは、7月の台風が過ぎ去った直後に行った観望会以来だそうです。途中で、小山星の会の小倉さんもやってきて、みんなでいろいろな話をしながら楽しみました。

一般観望会の時間が終わり、占有使用の時刻となりました。茂木さんは天文台の設置望遠鏡を借りたので、どんなものか見に行きました。茂木さんの借りた望遠鏡は高橋のBRC250です。EM3500赤道儀の上に載せられており、一緒にFCT150も同架されています。他の設置望遠鏡も、みな凄いシステムで、を天文台の免許さえ取れば、一晩500円で使えるのです。深谷の千村さんも、冷却CCDでの撮像に来ていました。対象天体の導入と冷却CCDの操作は、すべて部屋の中で行えるようになっており、寒空の下でも、室内でぬくぬくと画像が撮れるようになっています。そんな様子を見ていると、自分の望遠鏡で撮影する気力が失せてしまいます。

宿の門限のために、グランツさんとアネモネさんが帰るのを見送った後、いよいよ自分の望遠鏡で撮影です。自由に借りられる大きな望遠鏡が近くに沢山あるのに、わざわざ自分の望遠鏡を持ち込んで撮影するなんて、やる気が起きないのは当然のことです。快晴で空の状態はかなり良いので、だらだらしているくらいならと、試し撮りで、アンドロメダ座アンドロメダ大星雲 M31 / NGC224 (多胡カタログ番号 8) を、ノータッチガイド15分露出で何枚か撮影してみることにしました。ちなみに、今の季節ではフィルムの初めのコマの試し撮りは、アンドロメダ大星雲に決めています。あと2ヶ月ぐらい経つと、試し撮りにはオリオン大星雲を使います。

再撮影 NGCカタログ 種類 所在 写具合
M31 No.8 NGC224/M31 系外星雲 アンドロメダ座


いつの間にか、夜半を過ぎてしまいました。気分があまりのらないままに、なにかを撮ろうと、多胡カタログのリストを眺め、赤緯0度近辺のエリダヌス座系外星雲 NGC1637 (多胡カタログ番号 78)、オリオン座散光星雲 NGC1788 (多胡カタログ番号 79) を狙ってみることにしました。最近、対象となる天体が暗いものばかりになってきたので、今までの8分露出では心細いものもできてしまっています。そこで今回から、10分露出をベースに撮影しようと来る前から考えていました。

多胡カタログ NGCカタログ 種類 所在 写具合
NGC1637 No.78 NGC1637 系外星雲 エリダヌス座


多胡カタログ NGCカタログ 種類 所在 写具合
NGC1788 No.79 NGC1788 散光星雲 オリオン座


さすがに10分露出で撮影を進めていくと、1つの天体を目盛環とウラノメトリア星図で導入して、最低2コマ撮影するだけで、30分を要してしまいます。前の2天体を撮影し終わるのに、1時間以上かかってしまいました。24枚撮りフィルムを入れたのですが、朝まで撮ってもフィルムは余りそうです。そこで、露出時間はそのままでペースだけ上げるには、導入を短時間にしなくてはなりません。近くの多胡カタログ天体を捜していると、いっかくじゅう座散開星団 NGC2236 / Cr94 (多胡カタログ番号 102) が入れやすそうなので、撮影することにしました。

多胡カタログ NGCカタログ 種類 所在 写具合
NGC2236 No.102 NGC2236
Cr94
散開星団 いっかくじゅう座


だんだん調子が上がってきました。露出している間に、次の対象天体を決めるために、リストを眺めていると、赤緯はかなり違いますが、赤経がちょうど1時間進んだところに、ふたご座惑星状星雲 NGC2392 (多胡カタログ番号 112) がありました。これは、NGC2392エスキモー星雲という有名な惑星状星雲ですが、かなり小さな天体なので私の望遠鏡の焦点距離で小さ過ぎて厳しいものです。そんな理由から狙ったことがなかったので、狙ってみることにしました。また、この天体から赤緯が近くで、赤経が9分進んだところに、同じくふたご座散開星団 NGC2420 / Mel.69 / Cr154 (多胡カタログ番号 115) があります。続けざまに、これも狙ってみることにしました。

多胡カタログ NGCカタログ 種類 所在 写具合
NGC2392 No.112 NGC2392 惑星状星雲 ふたご座


多胡カタログ NGCカタログ 種類 所在 写具合
NGC2420 No.115 NGC2420/Mel.69
Cr154
散開星団 ふたご座


3時が過ぎました。ここは天文台なのでお酒が飲めません。いつもなら、このぐらいの時刻はかなり酔っぱらっているはずです。相変わらず天気も良く、おおいぬからともに抜ける銀河が綺麗です。そこで、ふたご座近辺から南下することにしました。いっかくじゅう座散開星団 Mel.72 / Cr156 (多胡カタログ番号 118)、おおいぬ座散開星団 Mel.71 / Cr155 (多胡カタログ番号 114)、とも座散開星団 NGC2423 / Mel.70 / Cr153 (多胡カタログ番号 117) を狙ってみることにしました。

多胡カタログ NGCカタログ 種類 所在 写具合
Mel.72 No.118 Mel.72
Cr1156
散開星団 いっかくじゅう座


多胡カタログ NGCカタログ 種類 所在 写具合
Mel.71 No.114 Mel.71
Cr155
散開星団 おおいぬ座


多胡カタログ NGCカタログ 種類 所在 写具合
NGC2423 No.117 NGC2423/Mel.70
Cr153
散開星団 とも座


時刻が4時を過ぎました。薄明が始まるのは4時20分頃です。撮っても、あと1枚です。そこで、久しぶりに、いっかくじゅう座ばら星雲 NGC2237 を撮影することにしました。露出は15分にし、撮り終わる頃には薄明が始まる予定です。

再撮影 NGCカタログ 種類 所在 写具合
NGC2237 なし NGC2237 散光星雲 いっかくじゅう座
NGC2244/Mel.47
Cr99
散開星団


撮影が終わりました。片づけですが、暗い中、機材を車まで運ぶのは大変なので、明るくなるまで待つことにしました。設置望遠鏡の隣の建物の中では、冷却CCDで撮影した画像を茂木さんがいじっていました。一晩のうちに、随分いろいろな天体を撮影したようです。

明るくなってきたので望遠鏡を片づけ、星見は終わりのはずだったのですが、実はこれからが大変でした。お酒を飲むのを我慢していた茂木さんと小倉さんがいてもたってもいられないのです。天文台の下の駐車時に移動し、茂木さんのワゴン車の中で宴会となりました。グランツさんと私が差し入れたビールが次々と空いていきます。私は眠くてコップ1杯ほどしか呑まずに、8時頃に自分の車へと引きあげましたが、彼らは昼近く、10時過ぎまで呑んでいたそうです。私は13時頃目が覚め、昼飯を食べながらみんなが起きてくるのを待ったのですが、起きてこないわけです。結局、私も再び寝てしまい、16時半頃、ぐんま天文台から帰路に着くのでした。

帰宅後、ぐんま天文台の貸し出し望遠鏡について考えました。凄い機材が凄い低価格で借りられるシステムは画期的です。ただ、今まで自分が星雲星団を撮影している目的からは、外れてしまう気がします。限られた機材でどの程度まで撮れるかが、一つの目的であり、同じ機材、同じフィルムを使ってここ3年ほど撮影してきました。かなりの天体を撮影しましたが、径21センチ、焦点距離628mmの望遠鏡で撮影できる対象は、まだまだあります。もちろん、ぐんま天文台の機材が自由に使えるように免許を採っておくことに無駄はないでしょう。でも、もうちょっと今の機材で頑張って撮影し続けてみたいと思います。そして、一通り撮影したら、次は1500mmから2000mm程度の焦点距離の機材に替えて、撮影していきたいと思います。ぐんま天文台の免許は、慌てずに、暖かい時期になったら採りに行くことにしましょう。


2000/11/11

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