その5. 1999年7月9日の星見
(栃木県粟野町粕尾峠)



夕方、会社の窓から外を見ると、青空が広がっていました。明日は土曜で休みなので、前々から今日天気が良かったら、フレックスで仕事を早めに切り上げて粕尾峠に行こうと計画していました。ところが、午前中あまり天気が良くなく、先ほどにわか雨もあったので、今日は無理かなと、油断していました。時刻は18時、とにかく速攻帰りです。帰りがけに携帯TELで、星仲間の鈴木君に連絡をとりました。彼の住む行田市は曇りだそうで、家に帰って夕飯を食べてから、再連絡して行くかどうか決めることにしました。19時過ぎ、再びTELすると、「粕尾は久しぶりだから行くだけ行って、晴れなくても夜半ぐらいまではいるつもりだ」とのことで、私も22時到着予定で出発しました。

行く途中、携帯TELで何人かに連絡をしましたが、捕まりませんでした。東北高速栃木インターで下りると、空には星が出ていました。途中何度か車を停めて空を見る度に、雲の無い星空が広がっていました。粕尾峠の登り始めから雲の中に入ってしまいましたが、峠の頂上から前日光牧場に向かう道を進むと、雲は無くなりました。現地の駐車場に到着すると、鈴木君も着いたばかりでした。空の透明度はここ1年で一番良く、夏の空とは思えないほど澄みきって、天の川が濃くはっきりと出ていました。南のサソリ座いて座方面も低空まで晴れ渡っていました。

まずは互いに邪魔にならないよう赤道儀の場所を確保し、組立を始めました。今日の私の目的は、撮り残しているM天体5つ、M54M55M70M73M75をできるだけ撮ること、並行して50mm標準レンズ夏の星座を撮りたいと思ってました。準備の途中、辺りに雲が走り、北極星が見えなくなることもありましたが、しばらく待つと、まったく問題のない星空が出てきました。

最初の狙いはいて座球状星団であるM54-NGC6715(多胡カタログ番号T479)です。南斗六星ののひしゃくの先、いて座ζ星を5センチファインダに入れれば、同視野に入ってきます。

多胡カタログNo. NGCカタログ 種類 所在 写具合
No.479 NGC6715
(M54)
球状星団 いて座


望遠鏡の上に自由雲台を載せて、一眼レフで星座の撮影も同時に行っているので、撮影開始までに時間がかかります。レトルトのおでんパックを持っていったので、食べながらのんびりと撮り進めました。次に狙ったのは、同じいて座球状星団M55-NGC6809(T489)。実はその前に、5センチファインダでM55と同視野にあるM70-NGC6681(T474)を狙ったのですが、運悪く、手前の電線が入ってしまったので、M55を先に撮影し、電線からずれたところでM70を撮影しました。

多胡カタログNo. NGCカタログ 種類 所在 写具合
No.489 NGC6809
(M55)
球状星団 いて座


多胡カタログNo. NGCカタログ 種類 所在 写具合
No.474 NGC6681
(M70)
球状星団 いて座


先ほどから、ファインダになかなか星団が入りません。いて座の低空を狙っているので、空の状態が悪くなってきているのかと思いましたが、肉眼ではかなり低いところまで星が見えています。気がつくとファインダの対物レンズが露でびしょびしょになっていました。多少の曇りならちっと拭くだけできれいになるのですが、ここまで濡れてしまうと、どうにもなりません。星野写真用のカメラには、露対策で白金カイロを着けていたのですが、ファィンダは油断していました。念のため、イプシロンの鏡は曇ってないか覗いてみると、こちらは自作フードが長いためか、まったく問題ありませんでした。白金カイロは、いつも3,4個は持ち歩いているので、早速、カイロを1個取り出して着火、タオルにくるんでファインダに縛り付けました。10分もすると露が乾き、良く見えるようになりました。かなりの低空まで、星がはっきり出ています。

いつの間にか、細いが昇っていました。今日ここ迄で、撮り残しているM天体もあと2つです。時刻はもう2時半、この日の薄明始まりが2時50分頃なので、撮れるだけ撮ろうと、いて座球状星団M75-NGC6864(T495)に向けました。

多胡カタログNo. NGCカタログ 種類 所在 写具合
No.495 NGC6864
(M75)
球状星団 いて座


薄明始まりの時刻が過ぎました。でもまだ何とか撮影できそうです。残すところ、みずがめ座散開星団M73-NGC6994(T500)のみ。数個の星からなる散開星団なので、多少の薄明の中でも、写ってくれるでしょう。

多胡カタログNo. NGCカタログ 種類 所在 写具合
No.500 NGC6994
(M73)
散開星団 みずがめ座


空が明るくなり、東の空には木星が昇っています。きれいなので、先ほどまで星野写真を撮影していたカメラを外し、数枚撮りました。もう夏なので、明け方でも寒くありません。明るくなってから望遠鏡を分解しました。空は深く紫色に近い青空です。星見に来られなかった人は、目が覚めてからこの空を知って残念がるのだろうなぁと思いながら、帰りました。


1999/07/17

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