その1. 多胡カタログに挑戦するぞ!



ここ数年、星見に行くと、星雲星団写真撮影を行っている。はじめは、長時間露出で一つの天体を狙うにしても、多くの星雲星団があるのにどれを対象にしたらいいのか判らなかった。天文雑誌投稿写真コーナーを見ると、アンドロメダ大星雲オリオン大星雲プレアデス星団など、メジャーな天体がたくさん載っているが、実はマイナーな天体でも、とても綺麗な天体や、自分で気に入る天体があるのではないだろうかと、思っていた。

そこで、まずは一通り撮ってみないと、何が本当に撮りたい天体なのか判らないので、仮にM天体を一通り撮ってみることにした。できれば短時間で撮ろうと、F3という低F値イプシロン光学系に、フジSGA800という高感度微粒子カラーフィルムを使い、5分から10分での短露出で、撮っていくことにした。観賞用の写真ではあるが、露出中に流星や人工衛星が飛び込むかも知れないし、万が一、新天体を知らぬ間に撮っていても、フィルムの傷やゴミと判別が付くように、同じ写野で、最低2枚は撮影することを自分の決め事として撮影していった。また、そこそこ良く撮れた写真は、六切りに伸ばしてA4サイズクリアファイルに入れていくことにした。通常は、一つの天体を同写野の6分、7分、8分の3枚撮ると天体を導入する時間を含めて30分に1つの天体を撮影できる。一晩に5時間ほどあれば、36枚撮りフィルム1本、約10天体の撮影ができる。

こんなことを言うとかっこいいが、実はそんなにまじめに撮影しているわけではなく、撮影をしながら仲間の望遠鏡を使って眼視を楽しんだり、星に関する雑談をしたり、鍋をしたり、ワインを瓶ごと暖めてホットワインにして飲んだりと、結構、不真面目に撮影している。というか、性格上、まじめに没頭して撮影できないのが、現実である。

でも、そんなこんなしているうちに、M天体も数個を残してほとんど撮り尽くし、六切り写真も、持ち運びができないくらいの量に増えていた。そろそろ、毎回一つの対象天体を決めてじっくり撮るのか、あるいは、さらに多くの種類を撮っていくのか、分かれ目にさしかかっていた。そんなときに、インターネットで自分のホームページを作り始めた。人に見せられるような出来の写真ではないのに、ほとんど自己満足で、画像の種類を増やしていくことに楽しみを感じ、もっと多くの天体を載せていこうと思った。


ゴールデンウィーク、今年は月回りが良くないので星見に行かず、家でごろごろしながら、天文書や星図や自分の撮影した写真を眺めていた。眺めていた天文書の一つに、誠文堂新光社天体観測ハンドブック(太田原明著:1995年8月7日発行)があった。その中に、多胡カタログというものがあった。

本書をお持ちの方であれば、お読みになればわかると思うが、多胡カタログとは、彗星捜索者の多胡昭彦氏が、彗星捜索をしながら15年間にわたり彗星によく似た天体のスケッチしたデータをまとめて1984年に自費出版した物(多胡スケッチ集)だそうだ。彗星捜索用15cm双眼鏡15cmニュートン反射望遠鏡を使用して彗星状天体の位置と周辺の恒星をスケッチした物なので、そこそこの機材で見たり撮影したりする事が可能であろうし、529個という数は、M天体の数を一回り多くした感じだし、日本から見える天体ばかりなので、空の状態さえ良ければ、気軽に撮影できる物ばかりである。

しかし、一般のカメラレンズ小望遠鏡で撮影可能な星雲星団のすべてを網羅しているわけではない。プレアデス星団ペルセウス座の二重星団h&χのように、明らかに星団と判別できるような散開星団ものはリストから外されているし、眼視では見にくい淡くて大きな散光星雲、例えばバラ星雲カリフォルニア星雲も載っていない。本来が彗星捜索用のカタログなので、これらの天体は意味をなさないからである。


さてはともあれ、私にとっては都合の良い目標が見つかったと思った。全529個は、年間50個程度撮影して、ざっと10年かかる計算である。もちろん、撮影しづらい天体も数多くあるだろう。でもそれは、その時々で考えることにしよう。ちなみに私は、本物の多胡カタログ(多胡スケッチ集)を所有していない。天体観測ハンドブック中の多胡カタログリストをもとにしての撮影となる。本物の多胡スケッチ集を手に入れたいが、気に留めておけば、そのうち手に入れられる機会ができるだろうから、まずは撮り始めることにしよう。

題して、「多胡カタログに挑戦」スタートである。


1999/05/09
1999/05/10.Update

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