星雲星団を楽しもう

星雲星団の本


星雲星団に関する本は多数発行されています。ほとんどの物はメシエ天体が中心で100程度の対象しか書かれていません。しかし、中には数多くの天体について載せている物や、時代の枠を越えて名著の物もいくつかあります。以下に、私が多数所有している星雲星団の本の中から、お気に入りの物を紹介したいと思います。


全天 星雲星団ガイドブック
藤井旭 著 誠文堂新光社 1978年発行

藤井旭氏による星雲星団を対象にした名著です。メシエ天体に加え、小口径の望遠鏡で見える星雲星団や標準レンズで写すことができる散光星雲が掲載されています。前身は、同著の星雲星団ガイドブックで、当時としては、星雲星団を初心者が楽しむ上でのバイブル的な本でした。対象天体について部分的な星図と詳細な説明が書かれており、読み物としても楽しめます。ただし、写真については、標準レンズから300mmまでの望遠レンズを使って、トライXや103aEフィルムでの撮影がほとんどで、現在の光学系からみれば物足りなさを感じるかも知れません。

私も20年程前に、メシエ天体を全部見ようと頑張っていた頃、この全天星雲星団ガイドブックと全天恒星図を使って、楽しんでいました。今ではほとんど使わなくなってしまいましたが、ページを開くと当時の書き込みがいっぱいあり、懐かしく思います。この本は、古本屋でも良く見かけますので、簡単に手に入れることができると思います。
2002/02/23記


エリア別ガイドマップ 星雲星団ウォッチング
浅田英夫 著 地人書館 1996年発行

現在、日本で発行されている初心者向け星雲星団の本としては名著でしょう。メシエ天体を含む約200個の星雲星団が掲載されており、ページを開くと左には大まかな星図が、右には対象天体を中心に入れた7度円の星図が書かれています。恒星も10等程度まで描かれており、5センチ双眼鏡や望遠鏡の5センチファインダどほぼ同じような見え方の星図となっています。非常にわかりやすく、使いやすい星雲星団の本です。初心者であれば、観望にも写真撮影にも、この1冊を持っていれば事足りると思います。

私もこの本は、星見の時には必ず持参しています。掲載されている星雲星団はすべて撮影済みですが、実は、開いた右ページの星図を良く利用しています。新彗星が現れて、予報位置の赤緯赤経しかわからないときに、重宝しています。この本の星図を使うと、1等星や2等星の赤緯赤経が星図に描かれているので、それを基準星にして望遠鏡に導入し、その場で目標天体との赤緯差と赤経差を計算して赤道儀の目盛環を使えば、簡単に彗星を導入することができるからです。この本の本来の使い方とは違うかも知れませんが、結構気に入って使っています。ちなみに、本は夜露に濡れてボロボロ、泥だらけです。あまりにも汚れすぎていて、野外ではともかく、部屋でページを開くのには気が引けるので、そろそろ2冊目を買おうかと思っています。
2002/02/23記


写真で見る銀河系の星雲星団I 散開星団
古田俊正 著 誠文堂新光社 1978年発行

星雲星団を楽しむ人たちにとって、バイブル的な本、俗に言う「古田本」です。31センチ反射望遠鏡にドライアイス冷却の6×6判のトライXを使い、日本で見ることのできる天体を多数カバーしています。「写真で見る…」シリーズはこの他に、球状星団、小宇宙I、小宇宙II、小宇宙IIIの計5冊あります。

発売当時、私は高校生で、全5冊購入するほどお金を持ってなくて、いつも本屋で立ち読みをしてました。廃刊した後しばらくして手に入れたいと古本屋を回りましたが、名著のためか手に入れることができませんでした。少し前に、インターネットのあるオークションで小宇宙3冊が売りに出されていたので21,000円の入札をしましたが、軽く蹴落とされてしまいました。今でも古田本は人気があるんですね。
2002/02/23記


メシエ天体ガイド PC-9801で見る星雲星団の世界
根本泰人 大熊正美 アストロアーツ 編著 アスキー 1993年発行

メシエ天体のカラー写真を見て楽しむのであれば、この本が一番です。美しい写真と共に、詳細な説明が入ってます。また、当時主流のパソコンPC-9801でも、画像として見ることができます。写真集としては最高の出来ではないでしょうか。

余談ですが、私はこの本を1993年の胎内星祭りの現地販売のテントで購入しました。知人がアストロアーツに勤めていたので、販促も含め、その場でアストロアーツ全員にサインをしてもらい購入しました。「1993.8.21 胎内星祭り PIZさんへ」と入れてもらったので、サインを見るたびに当時を懐かしく思います。ちなみに、パソコン画像の方も、部屋にあるほこりをかぶったパソコンで、いまだに見ることができます。当時のメディアは5インチフロッピーディスクですが。。。
2002/02/23記


写真で見る星雲星団の観測 メシエ天体アルバム
天文ガイド5月号臨時増刊 誠文堂新光社 1967年発行

アマチュア向けのメシエ天体写真集としては、日本で最初のものではないでしょうか。1965年7月から雑誌「天文ガイド」で連載された「写真で見るメシエ・カタログ」をまとめたもので、アマチュアの写真よりも天文台の写真が多く使われています。堂平観測所、東京天文台、岡山天体物理観測所が撮影した写真がほとんどで、当時、この写真集を発行するために、天文台がかなり協力をしてくれたものと思われます。ただし、写真自体は、1960年代のプロの天文台よりも現在のアマチュアの方が数段上です。アマチュアが使用できる撮影機材の向上に加えて、写真フィルムの感度と画質が向上したためでしょう。2センチ双眼鏡での見え方の解説があるところは、機材が裕福になった今のアマチュア天文家からすると考えられないかもしれませんね。

余談ですが、広告のページにビクセンの超広角接眼レンズが載っています。広角アイピースが当たり前の今、当時のエルフレ20mm、見かけ視野70度、価格2,000円というアイピースは、どんな物だったのでしょうか。
2002/02/23記


天体観測ハンドブック
太田原明 著 誠文堂新光社 1995年発行

メシエ天体の写真や木曽シュミットカメラで撮影した写真、簡単な星図や主な星雲星団の星表などが掲載されています。中でも、多胡昭彦氏が製作した多胡スケッチ集に掲載されている天体が、多胡カタログとしてリスト化されています。

私自身、この本に出会うまで多胡カタログの存在を知りませんでした。大まかな星雲星団をほとんど撮り尽くしてしまったときにこの本の多胡カタログのリストを知り、星雲星団の撮影の枠を広げることになったきっかけの本です。また、この本の星雲星団表は全30ページ程度で使いやすく、星見の時に、本格的な厚い星表を持ち歩かずに、この本を使っています。
2002/02/23記


彗星捜索者のための 多胡スケッチ集
多胡昭彦 著 多胡スケッチ集出版会 1984年発行

彗星捜索者である多胡昭彦氏が、星雲星団を彗星と見誤らないように作成したスケッチの数々をまとめたスケッチ集です。15センチの双眼鏡および望遠鏡で、日本から見ることのできる星雲星団をすべてカバーしており、スケッチに加えて、そのデータや見え方の特徴などが記載されています。その天体の総数は529個。1700年代にシャルル・メシエが彗星捜索用に作成したメシエカタログと同じ目的であり、この多胡スケッチ集は現代版メシエカタログと言えるかも知れません。ただし、彗星と見誤ることのない大きな散開星団は除いてあります。

この本は、多胡昭彦氏とその仲間達が自費出版で作成した物で、現在では手に入れることができません。私自身も、入手することができないまま、多胡カタログの天体を撮影し続けていましたが、ある日、多胡氏本人からこのホームページを通してメールをいただき、本人が所有しているただ1冊の本を直接お借りしてコピーさせていただくことができました。多胡カタログ天体のカラー写真撮影は、今では私のライフワークとなっています。
2002/02/23記


The Night Sky Observer's Guide
Kepple Sanner Willmann-Bell, Inc. 1998年発行

ヘビーな星雲星団観望派なら誰でもご存じの本です。約3,000個の星雲星団に加えて、約2,500個の重星・変光星が掲載されている最高峰のアマチュア向けガイドブックです。2冊組になっており、Volume 1 が秋冬版(写真の左)、Volume 2 が春夏版(写真の右)となっています。星座ごとに対象天体がまとめられており、星図に加えて写真やスケッチが豊富に掲載されています。大口径のドブソニアンやシュミカセが流行りだして、既存のガイドブックに載っていない天体を数多く見られるようになりました。それに合わせるかのように、17.5インチ(約45センチ)クラスのドブソニアンを使用して描かれたスケッチが多数載せられています。星雲星団の観望派には無くてはならない一冊です。本が重いのが、持ち運ぶのにやや難点です。
2002/02/23記


Planetary Nebulae
Hynes Willmann-Bell, Inc. 1991年発行

惑星状星雲だけを集めた本で、惑星状星雲を撮影している人なら誰もが知っている本です。約1,300個の惑星状星雲が掲載されており、アマチュア向けの惑星状星雲ガイドブックとしては最高峰の一品です。惑星状星雲のいろいろなカタログのクロスインデックスや、50ページに渡る惑星状星雲の星表、80ページに渡る261天体の詳細な星図が掲載されています。その星図は、惑星状星雲自体が1分以下の小さな物が多いので、倍率が高く暗い恒星まで描かれている詳細な星図となっています。
2002/02/23記


Sky Catalogue 2000.0 Volume 2
Sinnott Sky Publishing Corporation 1985年発行

Volume 1 は恒星の星表、Volume 2 は重星と変光星の星表と星雲星団の星表が掲載されています。星雲星団を楽しむ人であれば、Volume 2 のみで充分だと思います。散開星団、球状星団、散光星雲、暗黒星雲、惑星状星雲、系外星雲ごとにデータが載せられており、散開星団においては各種カタログのクロスインデックスも掲載されています。私が散開星団のCrカタログ天体を狙うときには、このクロスインデックスを活用しています。

私は、前々からこの本が欲しいと思っていたところ、数年前の石川町スターライトフェスティバルの最終日抽選会で手に入れることができました。非常にラッキーでしたが、抽選会場に来ていた人たちの中で、おそらく私がこの本を一番有効に使えるだろうと、当たるべき人に当たったのだなぁと思っています。たとえ望遠鏡や双眼鏡が当たったとしても、この本が当たった人と交換してしまったかも知れませんから。。。
2002/02/23記


天文観測年表
天文観測年表編集委員会編 地人書館 毎年発行

星雲星団の本というわけではありませんが、星を楽しむには、星図と共にその年の天文イベントが載っている本が必要ですね。

私は天文年鑑と共に20数年買い続けています。星見の時に必ず持参しますが、実はこの本を使って赤道儀の極軸を合わせています。毎月の天文現象のページに書かれている、その日の21時の北極星時角は、極軸望遠鏡を使って正確に極軸を合わせるのに必要で、簡易的な早見盤では合わせられない精度にまで追い込むことができるからです。極軸さえ正確に合わせてしまえば、あとはのんびり撮影できるわけですから、どうしても必要な一冊です。
2002/02/23記


天文年鑑
天文年鑑編集委員会編 誠文堂新光社 毎年発行

天文観測年表と並び、その年の天文イベントを知る上で必要な本です。天文観測年表か天文年鑑のどちらか一冊を持っていればよいでしょう。あるいは天文手帳(地人書館)でも良いかも知れません。

私は最近では、天文年鑑は持ち歩かなくなってしまいました。天文観測年表があれば充分といった感じですが、1970年代から毎年購入しているので、今では惰性で買っているところもあります。ただし、はじめのページに載せられている前年度の天文イベントの写真は、その年にどんなことがあったのか、一目でわかって良いと思います。
2002/02/23記




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