特集

「脱ダム」宣言のその後。

2006.3.11


 「脱ダム」宣言から2月20日で5年が経過しました。
 そんな時期にあたり、長野県地方自治研究センターが「長野県政の民主的改革と長野県政の発展のための検証委員会」を設置し、田中県政全般に関する検証を行い発表することとなり、私に「脱ダム」宣言後の「代替案」の検証を行って欲しいという依頼がありました。
 以下に、その依頼を私が承諾し提出した「『脱ダム』宣言のその後」を掲載致します。
 なお、地方自治研センターでは田中県政の他の課題の検証とともに編集し、4月中に冊子としてまとめ、広く県民の皆さんを対象に発行する予定です。

竹内 久幸



はじめに

 田中康夫氏が2000年10月15日の知事選で当選し、「脱ダム」宣言を行ったのは4ヶ月後の2001年の2月20日であった。
 この宣言は、その手法をめぐって県議会との対立を決定的なものとし、遂には知事不信任案可決のひとつのききかけになるとともに、一方で「無駄な公共事業の見直し」や「自然環境の保全」に対する知事の姿勢として多くの県民にイメージを植えつけ、2002年8月の出直し知事選挙の圧勝という要因ともなった。
 しかし、「脱ダム」宣言から5年が経過し、最近行われたマスコミの世論調査では「ダムに代わる治水対策」に関する問いに「良い方向に向かっている」は14.1%、「変わらない」44.6%、「良くない方向に向かっている」が35.1%と、多くの県民は、その後の知事の対応に疑問を抱いていると思われる。
 つまり、今日では「脱ダム」宣言は往時の輝きを失って色あせ、今では田中知事を評価する上で、「言葉で飾ることや、理念のみが先行し、結局は何もしていない」典型として使われている感がある。
 今回、長野県地方自治研究センターが「田中知事の検証」を行うに当たって、「ダムの代替案はある」としていたはずの「脱ダム」宣言から5年、長野県における「治水・利水対策」の現状はどうなっているかを検証した。

知事の「脱ダム」宣言と県議会の検証条例の制定

 2001年の2月20日、田中知事によって突如行われた「脱ダム」宣言は、2月22日から開会する2月定例県議会を直前にし誰も予想していない出来事であった。
 それは田中知事となり浅川ダムや下諏訪ダム中止に関する様々な論議はあったが、既に2月議会に提案する当初予算の知事査定が終了し、その中に下諏訪ダム関連予算案として用地費等が計上されていたからである。
この突然の「脱ダム」宣言は、各議員や関係市町村長に衝撃を持って受け止められた。
それは、無駄な公共事業の見直しやコンクリートによる地球環境への負荷を無くすというより、下諏訪ダムや浅川ダムをめぐる反対運動に知事が依拠したと受け止められた。
 また、「脱ダム」宣言には、下諏訪ダムに変わる治水・利水対策について「治水は堤防の嵩上げや河底の浚渫を組み合わせて対応する。利水の点は、県が岡谷市と協力し、河川や地下水に新たな水源が求められるかどうか、更には需給計画や水利権の見直しを含めてあらゆる可能性を調査したい。」とし「代替案」が不明確であり、浅川をはじめ他の河川のダムに変わる対応については一切触れられていなかった。
 従って、2月議会では多くの議員が、これまで関係市町村の要望を踏まえ検討された計画を、十分な手続きと合意もなく突然中止したトップダウンの手法は、洪水の危険により不安を招く県民や、安全な利水環境を求める県民の声に、十分な合意形成が得られていないとし、一般質問等で知事に撤回を求めた。
 しかし、知事の答えは「撤回するつもりはない」というもので、強大な知事権限(執行権)に対して、議会は何らかの条例を可決する以外に知事の暴走を止めるすべはなかった。
そこで当時の社会県民連合が提案したのが、「治水・利水ダム等検討委員会条例案」であった。当時の社県連の出した提案書には「知事は議会答弁で『宣言は議論の終局でなく、はじまりである』『平成9年6月に改正された新たな河川法により、住民参加の治水づくりにより、具体案を検討する』としているが、であるとすれば、現在施行されている新河川法の趣旨により、既に認可されているダム計画も含め関係市町村や住民との必要な協議を積み重ねながら、対応することが出来ないのか疑問するところである」とし、「河川法の趣旨を生かした住民参加の検討を行うことが最低限必要な責務」と指摘している。
 つまり、平成9年6月に改正された河川法の第16条の2には、河川管理者に対し河川整備計画を定めることを義務づけ、この計画を作成する場合には、河川に関し学識経験を有する者の意見を聴くことや、公聴会の開催など関係住民の意見を反映させること、関係市町村の意見を聴くことが定められているにも係わらず、「脱ダム」宣言はダム中止に関し関係市町村長や流域住民の意見を聴くことなく一方的に打ち出されたものであり、宣言を一旦白紙に戻し、検討委員会や住民参加の部会を設置し再検証を行うというものであった。
 そして、この「治水・利水ダム等検討委員会条例案」は賛成多数で可決され、条例が規定したダム計画のあった9つの河川について検討が開始された。

「治水・利水ダム等検討委員会」設置後の検討経過

 2月議会での条例制定を受け入れ田中知事は、同年6月25日に第1回の「治水・利水ダム等検討委員会」を開催し、9つの「総合的な治水・利水対策について」諮問を行った。
 しかし、知事は条例に規定する検討委員会委員の人選について「まずダムによらない治水を検討する」として、メンバーのうち8名を学識経験者とし「脱ダム派」と言われる人を多く任命し、他の委員構成からも15名の委員のうち半数以上が「脱ダム派」と思われる人選を行い「はじめから結論が見えている」と批判された。
 なぜこうした知事の「結論先にありき」の手法が可能であったのかは、議会側が条例案を検討した折に、検討委員の構成について学識経験者、県議会議員、市町村長や同議会の代表者、関係行政機関の職員のそれぞれの人数を規定しようとしたが、他の条例にそうした規定は無く知事の執行権に抵触するとして断念した経過があったからである。
そしてこの事は、後に議会の出した条例が「代替案が無かった知事を助けたのでは」ともささやかれた。
 こうして発足した検討委員会は、審議が終了する2003年6月20日まで合計32回開催され、この審議の過程では条例に定める流域部会を7部会に設置し、それぞれ浅川部会13回、砥川部会13回、黒沢川部会15回、郷士沢川部会15回、上川部会14回、駒沢川部会10回、角間川部会12回が開催され検討や公聴会が行われた。
また、各部会の構成員(20名以内)については、検討委員から人選された担当者や流域の市町村長を除いて、構成員の半数以上を公募委員とすることが確認され、住民参加の検討が重視された。
 さらに、清川と薄川については検討委員会内に小グループを設置し検討を行うとともに、個別の課題については「森林」、「財政」、「基本高水」、「利水」のワーキンググループが設置され検討が行われた。
 これらの検討過程で一番の争点になった事は、その流域の河川整備の水準を決める基本高水流量(洪水防御計画の基準となる流量)が妥当であるかどうかということであった。
 基本高水流量は、洪水防御計画の目標である治水安全度を他の河川との比較や流域面積、資産等社会的経済的重要性、過去の災害履歴等々から設定し、過去の流量観測所のデータから実績降雨群の抽出を行い、流域の森林本来の保水力を盛り込むなどの流出解析等々によって求められダム等の治水計画を定めるうえでの基本的な事項として設定されて来た。
 そして、そのことが「ダム建設先にありきの過剰なシステムである」というのが「脱ダム」を主張する方々の共通認識として議論展開され、ダム建設ありきの過剰な基本高水流量の設定に基づく無駄な公共事業として、県の考え方を見直すべきであると主張した。
 一方、「推進派」は、基本高水流量や治水安全度は高い方がより安全とし、これまでの各流域の歴史の中で経験した水害の実態や、水道水や農業用水等が不足していることを主張し双方の意見は激しく対立した。
その結果、検討委員会として優先的に検討を行った砥川(2004年3月24日にまとめた部会報告書)及び浅川(同年3月31日にまとめられた浅川部会報告書)の部会報告では、両論併記であったにもかかわらず、検討委員会が6月に出した答申は、浅川について基本高水流量を330トンとし、砥川については200トンとするということを多数決で採択するというものであった。
 しかし、その過程で検討委員の中から、「基本高水流量を下げて国の認可が得られるのか」との問いに、認可を得なければ「法律違反」との「脱ダム」委員の発言や、基本高水流量の設定について賛否両論が割れたままであった結果を受けて、この検討委員会の答申は現実的に難しいとの判断により、その後県が平成14年6月示した「枠組み」では、浅川の基本高水流量を450トンとし、砥川を280トンとするダム計画と同じ流量に修正せざるを得なかった。
 そして、それ以降は検討委員会の審議では基本高水流量論議はタブー視され、浅川・砥川以外の流域の治水対策の検証に当たっては既存の基本高水流量を前提とした代替案が検討された。
 また、検討委員会でもう一つ大きな争点となったのは当時民主党が提唱していた「緑のダム構想」であった。
それは、コンクリートのダムに変わり、流域の森林整備を行うことによって森林の持つ保水力を高めれば洪水は防げるというものであった。
 しかし、この主張についても日本学術会議による「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について」の答申で、「大規模な洪水では、洪水がピークに達する前に流域が流出に関して飽和に近い状態になるので、このような場合、ピーク流量の低減効果は期待できない。」とか「森林は中小洪水においては洪水緩和機能を発揮するが、大洪水においては顕著な効果は期待できない。」、貯留関数法等は「あくまで森林の存在を前提にした上で治水・利水計画は策定されており、森林とダムの両方の機能が相まってはじめて目標とす治水・利水安全度が確保されることになる。」等々の見解が指摘され、森林整備至上主義である「緑のダム構想」は、ダムに変わる治水対策案としてはプラスアルファーとして評価するにとどめることとなった。
 こうした審議経過を経て、治水・利水ダム等検討委員会は諮問された9つの流域についての検討を終了し、知事に対し答申を行い平成15年6月24日全ての審議を終了した。
 しかし、検討委員会の審議と結果は、ダムによらない治水・利水対策について「代替案」としての可能性があるメニューを示しただけであり、その後、答申内容の検証のため設置された県の対策本部において流出解析や水道水確保に関し水源調査等が行われることとなった。
 以下、各流域毎の答申の概要と、その後の状況について簡単にまとめるとともに、問題となっている浅川流域を中心に検証してみたい。

各流域の答申概要と、その後の現況

 検討委員会の答申が行われ、県庁内に設置された「長野県治水・利水対策推進本部」が答申を踏まえ同年7月28日に9河川の「新しい治水・利水対策の検討方針」を定め、その後、各流域河川の「河川改修原案」を決定した。
 また、平成16年3月までに9河川全てに流域住民を交えた検討の場を目的として、「流域協議会」が設置され、多くの流域協議会では現在も検討を行っている。
 検討委員会の答申概要や県の方針、流域協議会の開催状況、各対策の取り組みの現況は以下の通りである。

■上川(茅野市) (平成15年3日3日答申)

当初計画
  地域整備ダム事業=ダム上流の宅地等開発に伴う流出増対策を治水ダム事業と一体事業として実施するもの
    治水計画=ダム地点の計画高水流量毎秒250トンのうち、140トンの洪水調整を行う。
    利水計画=上川沿川の既得取水の安定化及び河川環境の保全のための流量確保。
  答申概要や県の方針
    ダム計画を中止し、流域全体を視野に入れた総合的対策によって実施。
    治水対策
      最終的には1/100確率の治水安全度とするが、当面は1/50確率の河川改修とする。
      弱堤部や危険箇所の整備は優先的に実施する。
      流域対策は、流域の自然的・社会的特徴を考慮し、水田、遊水地、溜池、森林整備等による雨水の流出抑制・貯留機能の効果について必要な調査、研究を行い、実施可能な対策を講じることとし、将来的には1/100確率の治水安全度に対応した整備を目指す。
    利水対策
      茅野市南部地域において予想される農業用水の不足については、地元農家の協力を得たうえで、不足する時期や量について今後十分な調査を実施し、溜池等の設置について検討して行く。
    その他の課題
      蓼科ダム建設予定地の取得済み用地については、その扱いを今後検討していく。
  その後の動き
    平成15年9月10日、河川改修原案の決定
    流域協議会 平成19年9月27日結成し、16回開催
      平成16年3月25日「提言書」を提出
    平成16年4月、5月 長谷工へダム建設事業負担金の返還 880,271千円
    平成16年10月14日第13回流域協議会で諏訪圏域河川整備計画について了承
    平成16年11月17日~26日、諏訪圏域河川整備計画公聴会を茅野市、下諏訪町、岡谷市、諏訪市で開催。
    上川を含む諏訪圏域河川整備計画について、平成16年12月24日に国に申請し、17年3月9日に認可を受けた。
  今後の県の対応と課題
    河川整備計画の認可を受けた20年間を目標に、当面は1/50確率の治水安全度確保に向けて暫定断面での河川改修を優先度の高い箇所から行うとしている。
 しかし、国庫補助の優先的位置付けは難しい現状。
    河川整備計画の認可を受けたことにより、正式にダム計画を中止することとなると思われるが、最終的な1/100確率の治水安全度の確保のための、ダムによらない具体的治水対策(「代替案」)は示されておらず、棚上げとなっている。

黒沢川(旧三郷村・現安曇野市) (平成15年6月12日答申)

当初計画
  「生活貯水池整備事業」=洪水調節と併せてかんがい、上水道等の補給を目的とし、有効貯水容量がおおむね1,000千トンまでのもの。
    治水計画=基本高水流量は犀川合流点で毎秒215トン・治水安全度1/30確率
    利水計画=三郷村の平成20年の上水道需要量9,600トン/日をダムや井戸水で確保し、他に農業用水や雑用水必要量の確保(三郷村は黒沢川から実態として水道用水4,800トン/日を取水しているが、水利権を取得しておらず河川法上問題がある。)
  答申概要や県の方針
    ダム計画を中止し、ダムによらない治水・利水対策を策定する。
    治水対策
      治水対策は、1/30確率の治水安全度を目標とし、調整池を組み合わせた河川改修とする。
      万水川は現計画による河川改修を継続することとし、また、調整池を計画するにあたっては、黒沢川・万水川における流下能力に配慮するなかで、環境調査等を実施して、流域住民の合意に努める。
    利水対策
      適正な水需要量の把握について三郷村と調整を行い、その上で黒沢川の水利権の取得を優先に検討するなど答申に示された基本方針を踏まえ、三郷村と協調し取り組んでいく。
      新たな水源確保については、「水道水源確保に係わる県の支援策」に基づき支援していく。なお、新たな支援策を適用しても、実際の事業費がダム建設の際に支出したであろう村の負担を上回る場合は三郷村と協議する。
      水道水源としての豊水利用については、実状に適合した対応策の具体的な実例の把握に努めるなど、豊水の利用可能な対策を検討する。
  その後の動き
    流域協議会 平成15年9月10日設置し、9回開催
    平成16年3月26日河川改修原案決定
    治水対策
      平成16年6月1日、第6回流域協議会で河川改修原案(調整池案)の概ねの了解がされた。
      平成17年9月21日、調整地変更決定(地元中学からのビオトープの提案を受け、合併した旧三郷村が策定した自然公園計画との整合を図るため、当初調整池2池とした河川改修原案を調整池1池とし、同年11月1日の第9回流域協議会で了解された。)現在、地質調査、地形測量等を実施している。
      これで治水対策案は決まり、松本圏域の奈良井川水系等の具体化を待って河川整備計画の申請を準備中である。
    利水対策
      調整会議を5回開催し、水道水需要は、余裕水を含め日9,600トンが妥当であることを双方で確認した。
      利水対策は、黒沢川からの水利権取得による取水と新規井戸を含む地下水により水源を確保することで確認した。
  その後の県の対応と課題
    平成16年12月補正予算で地下水調査の支援費として100万円を計上し、地下水調査を行ったが期待される揚水量は日、1,000トン程度であった。
    豊水水利権については、国土交通省と協議中であるが、暫定豊水水利権は一年更新となるため、他の水利権との調整の可能性も視野にある。
    流量観測の10年間のデータが整ったので再検証を行う。合併を含め総合的に判断。
    治水対策は松本圏域の河川整備計画の認可申請準備の段階となったが、利水対策は結論が出ていない。

薄川(松本市) (平成15年6月12日答申)

当初計画
  治水計画=基本高水流量毎秒580トンのうち、「大仏ダム」で230トンの洪水調整 治水安全度1/80確率
    利水計画=昭和62年に塩尻市、平成11年に松本市が利水を辞退
    平成12年8月の与党三党の「公共事業の抜本的見直しに関する三党合意」の対象となり、平成12年11月に国の了解のもと事業が中止された。
  答申概要や県の方針
    ダム計画を中止し、河川改修で対応する。
    治水対策
      治水対策は、1/80確率の治水安全度を目標とした河川改修とする。また、基本高水流量は、最近の雨量資料等を用いて薄川を含めた奈良井川水系全体を考慮のうえ決定する。
  その後の動き
    流域協議会 平成15年9月20日設置し、25回開催
      平成17年2月9日「提言書」提出(河川改修部分について)
      平成17年11月16日「提言書」提出(総合的な治水・利水対策について)
    平成17年11月22日「治水・利水対策推進本部会議」で、「薄川の河川整備計画に関する基本的な考え方」を決定
      薄川を含む松本圏域河川整備計画の計画対象期間を認可後20年間とする。
      20年間に実施する治水対策として河川改修を位置付け、田川合流部から逢初橋までの約700m区間で改修を実施する。
      今回の整備計画期間の後に、次の段階として目指すべき治水安全度を1/80とし、流域対策により対応するよう検討を続ける。
  その後の県の対応と課題
    奈良井川水系全体の河川整備計画に位置付けられるため、現在認可申請に向け準備を行っている。
    奈良井川と田川の改修を先行して行い、支川の薄川は、その後の改修となる。

郷士沢川(豊丘村) (平成15年6月12日答申)

当初計画
  生活貯水池建設事業
    治水対策=基本高水流量毎秒138トンで治水安全度1/30確率
       ダムと河川改修の組み合わせ
    利水対策=水質が悪化している井戸水源に替わりダムから1000トン/日の取水を行い豊丘村の水道水源を確保する
  答申概要や県の方針
    ダム計画を中止し、ダムによらない治水・利水対策を策定する。
    治水対策
      治水対策は、1/30確率の治水安全度を目標とした堤防の嵩上げ及び引堤による河川改修とする。
      洪水時の異常な土砂流出や流木を防ぐ対策を実施していく。
    利水対策
      虻川からの取水、既存井戸及び新規井戸の最適な組み合わせにより計画水量を確保することを利水対策の基本方針とすべき。
      新たな水源確保について、「水道水源確保に係わる県の支援策」に基づき支援していく。新規水源の調査等の実施方法、実施時期について豊丘村と協議する。
      地下水の硝酸・亜硝酸性窒素汚染を抑える対策について、豊丘村に必要な助言・協力をするほか、全県的な課題として取り組む。
  その後の動き
    流域協議会 平成15年12月6日に設置し、10回開催
      平成16年12月14日提言書提出
    平成16年2月3日河川改修原案決定
  その後の県の対応と課題
    硝酸・亜硝酸性窒素汚染の高い井戸を順次切り替えるため、平成16年当初予算で地下水調査の支援費用(補助額1,155万円)を計上し、地下水調査を実施。
    硝酸・亜硝酸性窒素汚染の原因の究明、保全対策検討については、平成15~16年度で原因を特定するための「地下水保全対策モデル事業」での調査(全額県費)を実施し、平成17年3月23日に地下水保全対策連絡協議会で報告。
    試掘井戸の水質と水量が確保出来たため、平成17年度、豊丘村により本掘削及び導水管の布設を行い北部簡易水道の利水対策は完了した。(県は17年9月補正で、1,400万円補助)
    平成18年度県予算に「水道水源確保支援事業費」として南部簡易水道の井戸掘削への補助金370万円が計上され、県は利水対策は18年度で完了予定としている。
    治水対策については、提案書を踏まえ、もう一度流域協議会に諮り了解されれば、部分的に維持修繕的なところから河川改修に手を付ける。
    「洪水時の異常な土砂流出や流木を防ぐ対策」については、今後、砂防事業での可能性を調査するとしている。

角間川(山ノ内町) (平成15年6月24日)

当初計画
  治水計画=基本高水流量毎秒1,020トン(千曲川合流点)・治水安全度1/100確率
    利水計画=中野市、山ノ内町の水道用水として新たに13,000トン/日を取水
  答申概要や県の方針
    ダム計画を中止し、ダムによらない治水・利水対策を策定する。
    治水対策
      治水対策は、1/100確率の治水安全度を目標とした河川改修とする。具体的には、堤防へのパラペット設置と、河床掘削及び床固め工の水通し断面の拡幅を組み合わせたものとし、事業の実施にあたっては景観的配慮を行う。
      現在実施している地すべり防止工事、砂防工事、治山工事を引き続き実施すると共に、河床堆積土砂の除去に努める。
    利水対策
      まず、中野市及び山ノ内町の広域的な水源調査を実施し、段階的な井戸による水源整備を行いながら、適正な水需要量を把握すると共に、新規井戸による水源と併せて角間砂防堰堤の利用を考慮に入れた、複合的な利水対策を基本方針とする。
      新たな水源確保について、「水道水源確保に係わる県の支援策」に基づき支援していく。なお、新たな支援策を適用しても、実際の事業費がダムの建設の際に支出したであろう負担を上回る場合は中野市及び山ノ内町と協議する。
      水源調査や角間砂防堰堤の水道水源としての利用を検討してもなおかつ水資源に不足を生じる場合には、適正な不特定容量を合わせ持った新たな利水ダムを考慮することもやむを得ない。
  その後の動き
      流域協議会 平成16年3月1日に設置し、11回開催
      平成16年5月21日河川改修原案決定
      中野市の水需要23,234トン/日が妥当であると双方で確認。
      山ノ内町の水需要は、既存水源で当面賄えることを双方で確認。
      平成16年6月補正で中野市の地下水調査の支援費用(416万円)を計上し、地下水調査を実施。
  その後の県の対応と課題
    中野市での電気探査、試掘及び解析、揚水試験の結果、適正揚水量は512トン/日であり、水質もヒ素0.03mg/l(基準値0.01)、ホウ素1.10mg/l(基準値1.0)で、量・水質とも良い結果は出なかった。
そのため、中野市としてはダムによる利水対策を求めている。
    治水対策については、「余裕高」が不足している部分について、パラペットにより確保する計画だが、流域協議会で観光地としての景観上からも反対意見が多く、河川改修の見通しがたっていない。

清川(飯山市) (平成15年4月7日答申)

当初計画=ダム建設事業
  治水計画=清川ダム地点で洪水調節を行う。(基本高水流量毎秒175トン、ダムで110トンをカット、1/100確率)
    利水計画=清川沿川の既得用水の供給と飯山市の流雪溝用水確保(毎秒0.37トン)
  答申概要や県の方針
    ダム計画を中止し、ダムによらない治水対策を策定する。
    治水対策
      治水対策の目標は、他河川とのバランスを考慮してD級河川と位置付け、1/50確率の治水安全度に対応した河川改修とする。
    利水対策
      利水対策については、飯山市が策定し、その後見直した平成13年度流雪溝整備計画を尊重することとし、今後飯山市と連携して清川からの新たな取水の方策について検討する。
  その後の動き
    流域協議会 平成16年3月24日に設置し、5回開催
        平成17年2月28日「提言書」提出し、今後、県が対応して行くことが約束された。
      改修計画のない山間地においても浸食防止を目的とする河川整備が必要。
      上流域の土砂流出・流木対策の推進と森林整備。
      河川改修の早期着手。・下流JR橋付近の安全な通水の確保。
      事業完了までの流域協議会の活動の継続。
    平成16年5月21日河川改修原案決定
      利水については、飯山市が対応することとなった。
  その後の県の対応と課題
    治水対策については、北信圏域の河川整備計画策定作業に県がまだ入っていないことから、見通しがたっていない。

駒沢川(辰野町) (平成15年6月24日答申)

当初計画=生活貯水池建設事業
  治水計画=基本高水流量毎秒52トンを、ダムで16トン洪水調節し、その後河道で36トンを流下させる。治水安全度1/30確率
    駒沢川沿川の既得用水の補給を行う等流水の正常な機能の維持と増進を図る
  答申概要や県の方針
    ダム計画を当分の間凍結し、治水計画を根本的に再検証する。(答申)
    ダム計画を中止し、ダムによらない治水・利水対策を講ずる。(県方針)
    治水対策
      治水対策は、1/30確率の治水安全度を目標とした河川改修とする。
      基本高水流量は、流域面積の決定方法や流出解析パラメータの決定方法に問題があるとの答申を尊重し、概ね5年間流量観測等を実施して検証を行うこととし、その結果が出るまでは、維持管理等必要な対策を行う。
    利水対策
      水道水や農業用水の確保は、早急に対応すべき問題であり、治水計画の検討期間においても、水利対策を行う必要がある。
      水道水については既設の水源と新規井戸の開発を組み合わせることにより確保し、農業用水の不足分については細洞ため池の拡張により補うことを利水対策の基本方針として早急に対応すべきである。
      新たな水源確保の調査等の実施方法、実施時期について辰野町と協議するとともに、財政面については、「水道水源確保に係わる県の支援策」に基づき支援していく。
      細洞ため池が断層破砕帯上にあるため、辰野町やため池管理者と協議し、堤体の安全性を確認するための調査の実施に向けて調整を進める。補強工事は国庫補助対象となるが、拡張工事は国庫補助対象とならないため、実施にあたってはコスト低減を図るとともに、何らかの県の支援を検討する。
  その後の動き
      流域協議会 平成16年3月14日に設置し、3回開催
      治水対策については、概ね5年間は流量観測、水位観測(流域界の設定のための観測)を行い、この検証結果を受けて具体的な治水対策案を策定することとなった。
      現状の水需要は、既存及び16年度に整備する水源で当面賄えることを双方で確認。
      下町水源については、ヒ素等の汚染については現状では基準を下まわっていることから、もう少し見守ることとした。後の対応を調整中である。
  その後の県の対応と課題
    治水対策については、概ね5年間は流量観測、水位観測等を行い、この検証結果を受けて具体的な治水対策案を策定することとなっており、今後の検証が課題である。
    水道水や農業用水の確保については、今後の検証が課題である。

砥川(下諏訪町) (平成14年6月7日答申)

当初計画
  治水計画=基本高水流量毎秒280トン(ダム80トン・河川改修200トン)・治水安全度1/100確率。
    利水計画=岡谷市及び下諏訪町の水需要計画に基づき、ダムからの取水により岡谷市に日量10,000トン、下諏訪町に日量1,000トンを供給する。
  答申概要や県の方針
    ダム計画を中止し、ダムによらない治水対策を策定する。
    答申では、基本高水流量毎秒200トン(河川改修で対応)としたが、後に県が示した「計画原案」ではダム計画と同じ280トン(河川改修220トン・流域対策60トン)で対応するとした。
    利水対策は、新和田トンネルからの湧水利用及び掘削を含め新規水源の開発によるとされた。
  その後の動き
    平成14年6月25日県の「枠組み」を県議会に提示
      基本高水流量をダム計画と同じ毎秒280トンとし、河川改修で約8割(220トン)、流域対策で約2割(60トン)を対応するというもの。
      流域対策=森林整備・遊水地・土地利用規制等
      利水は、「まずは、新和田トンネル湧水の利用をはじめ、高度浄化処理施設や新規井戸の掘削の是非等について、総合的な観点から関係者との調整を進め、整備手法、財政措置等について検討を行う。」というもの。
    平成15年5月8日河川改修計画原案の流域説明会
    流域協議会 平成15年6月28日設置し、18回開催
        平成15年11月6日提言書提出
      河川改修を何よりもまず最優先として実施すること。
      ワカサギの遡上に必要な流速、流量、水位を確保すること。
      流域対策原案は否定しないこととし、個々の遊水地の具体的な位置や規模など、実施    に際しては意見交換しながら協力・支援していく、等々。
    平成16年6月11日の流域協議会で「砥川の河川整備計画に関する方針」を了承
      「諏訪圏域河川整備計画」の計画対象期間を20年間とし、20年後のあるべき姿として、1/50確率の治水安全度を目標とし、河川改修計画を盛り込む。
      今回の整備計画期間の後に、次の段階として目指すべき治水安全度を1/100とする。
    平成16年11月17日~26日、諏訪圏域河川整備計画公聴会を茅野市、下諏訪町、岡谷市、諏訪市で開催。
    砥川を含む諏訪圏域河川整備計画について、平成16年12月24日に国に申請し、17年3月9日に認可を受けた。
  その後の県の対応と課題
    平成17年度に護岸工事着手、富士見橋・鷹野橋の架け替えなど詳細設計費等1億5,000万円計上。
    平成18年度、護岸工事の促進等2億5,000円予算化。
    平成15年9月補正により岡谷市の地下水調査へ236万2,500円を補助し、調査を行ったが、岡谷市が必要とする日量10,000トンに対し1,500トン程度が期待できる水脈が確認された。
    岡谷市の姿勢は、ダムによる元からきれいな水1万トンの代替案であり、岡谷市と山梨大学が地域連携事業として実施する「砥川水系からダムなしでも取水が可能となる方策をテーマとする」調査研究事業(H18~19年度、総額5,000万円、全額長野県負担)に、平成18年度2,500万円を県として助成するとしている。

浅川(長野市) (平成14年6月7日答申)

当初計画
  治水計画=基本高水流量毎秒450トン(ダム100トン・河川改修350トン)・治水安全度1/100確率。
    利水計画=長野市の水需要計画に基づいて、ダムからの取水により日量5,400トンを供給。
  答申概要や県の方針
    ダム計画を中止し、ダムによらない治水対策を策定する。
    答申は基本高水流量毎秒330トン(河川改修330トン)としたが、後に県が示した「計画原案」ではダム計画と同じ毎秒450トン(河川改修360トン・流域対策90トン)とした。
    長野市の水需要計画は、過大であり水不足はないと考える。
  その後の動き
    平成14年、県の「枠組み」を県議会に提示
      基本高水流量をダム計画と同じ毎秒450トンとし、河川改修で約8割(360トン・10箇所の橋梁の架け替えが必要)、流域対策で約2割(90トン)、+内水対策(排水機場の増設・放水路・遊水地)というもの。
      流域対策=森林の整備、遊水地や貯留施設の設置等
    流域協議会 平成15年8月9日に設置し、13回開催
    平成15年5月7日~5月26河川改修原案の流域説明会(11地区)
    平成15年12月1日流域協議会からの中間提言
    平成16年3月14日「手戻りの無い範囲で」ダム計画と同じ河川改修を表明
    平成16年9月27日流域協議会にコンサルタントによる浅川の流出解析結果を説明
      外水対策(浅川)について基本高水流量毎秒450トン、治水安全度1/100確率とし河川改修で350トン確保を前提とした、ケース①~⑥(ため池・ダム地点での河道内遊水地・檀田遊水地・田子遊水地の組み合わせで、ため池でのカット量は2池で15トンと共通だが、①と②案は他の施設河道内遊水地規模により下流の遊水地のカット量が変化し、ケース③~⑥については、檀田遊水地・田子遊水地のどちらかを想定しない内容)が示された。
  その後の県の対応と課題
    平成17年9月、コンサルト案について「県として責任案」を求めて来た長野市と「浅川総合治水対策連絡協議会」に、「ケース②」が説明された。
      ケース②の内容は、基本高水流量毎秒450トンの内、河川改修を前提とし、ため池(猫又池・大池)で15トン、河道内遊水地で62トン(堤高36.5m・治水容量453千トン)、檀田遊水地で17.1トン、田子遊水地で21.2トンというもの。
    平成17年11月22日に「浅川の河川整備計画に関する基本的な考え方」を発表。
    国土交通省関東地域整備局に説明したが、認可は困難。
    利水については、治水対策が優先されているため進展はない。

各流域の「代替案」は確立されたのか。

 以上、9河川流域での主な検討の経過と現状等について流域毎に示したが、ここでは浅川を除く河川について「代替案」は確立されたのかを中心にまとめてみたい。
 当初のダム計画には、洪水を防止するための治水対策と、水道水源等を確保するための利水対策の両方を目的とした「多目的ダム」がほとんどであり、ダムに替わる対策は両方が課題となった。
 但し、昭和62年に塩尻市、平成11年に松本市が利水を辞退した薄川、飯山市が平成13年度流雪溝整備計画を尊重するとしてダムからの新たな取水を辞退した清川については治水対策が課題であった。

(1)対策の方向が見えてきた河川流域

 まず、松本市の薄川は、平成12年8月の与党三党の「公共事業の抜本的見直しに関する三党合意」の対象となり、平成12年11月に国の了解のもと事業の中止が決まっており、当初示された県の方針でも「治水対策は、1/80確率の治水安全度を目標とした河川改修とする。また、基本高水流量は、最近の雨量資料等を用いて薄川を含めた奈良井川水系全体を考慮のうえ決定する。」とされ、25回に及ぶ流域協議会で了解された。
 薄川は、奈良井川水系全体の河川整備計画(20年計画)に位置付けられるため、現在認可申請に向け準備を行っている。認可後は、奈良井川と田川の改修を先行して行い、支川の薄川は、その後の着手となるため改修までには時間を要すると思われる。
 次に、飯山市の清川についても、市内の流雪への利水を市が辞退したことにより、治水対策を検証した結果、「他河川とのバランスを考慮してD級河川と位置付け、1/50確率の治水安全度に対応した河川改修とする。」こととなった。
 しかし、下流JR橋付近の安全な通水の確保等、流域協議会が「河川改修の早期着手」を求めたが、県が北信圏域の河川整備計画方針の策定に着手していないことから、見通しはたっていない。
 この2つの流域はダムに変わる対策が見えて来たと思われるが、河川改修等の事業には未だ着手されていない例である。
 また、治水・利水両方の対策が問われ、ほぼ対策の方向が確立したと思われるのは豊丘村の郷士沢川である。
 郷士沢川の治水対策については、「1/30確率の治水安全度を目標とした堤防の嵩上げ及び引堤による河川改修とする。」とされ、流域協議会の提言書を踏まえ、部分的に維持修繕的なところから河川改修に手を付けることが了解されれば一定の治水対策は確立したこととなる。
 また、利水対策についても、「虻川からの取水、既存井戸及び新規井戸の最適な組み合わせにより計画水量を確保することを利水対策の基本方針」とし、硝酸・亜硝酸性窒素汚染の原因の究明等について平成15~16年度調査を実施し、汚染の高い井戸を順次切り替えるため、平成16年に地下水調査を実施した結果、試掘井戸の水質と水量が確保できたため、平成17年度、豊丘村により本掘削及び導水管の布設を行いほぼ利水対策は完了したとされている。
 但し、村民の中には「新たな井戸も将来汚染される可能性は否定できない」という声もある。
 さらに、洪水時の異常な土砂流出や流木を防ぐ対策については、今後、砂防事業による可能性を調査するとしており、今後の課題となっている。

(2)「代替案」が未だ具体化していない河川流域

 治水・利水対策の代替案が問われ、このうち治水対策についてはダムに変わる対策が具体化したと思われるのは次の流域である。
 但し、ダム計画そのものが様々な地域の実情から利水を重視し、治水対策とセットで計画された経緯からダムに変わる利水対策が確立しなければ、代替案が確立したとは言えない。
 まず、安曇野市(旧三郷村)の黒沢川については、「治水対策は、1/30確率の治水安全度を目標とし、調整池を組み合わせた河川改修とする。」とし、合併した旧三郷村が策定した自然公園計画との整合を図るため、当初調整池2池とした河川改修原案を調整地1池とすることが流域協議会で了解され、松本圏域の奈良井川水系等の具体化を待って河川整備計画の申請を準備中であるが、旧三郷村が必要とする上水道需要量日量9,600トンに対し、行った地下水調査では期待される揚水量は日、1,000トン程度であり、未だ結論が出ていない。
 中野市と山ノ内町の角間川については、「治水対策は、1/100確率の治水安全度を目標とした河川改修としている。具体的には、堤防へのパラペット設置と、河床掘削及び床固め工の水通し断面の拡幅を組み合わせたものとし、事業の実施にあたっては景観的配慮を行う。」等とした。しかし、利水対策については平成16年に中野市の行った電気探査や試掘、揚水試験の解析の結果、適正揚水量は日量512トンとされ、水質もヒ素0.03/mg/?(基準値0.01)、ホウ素1.10mg/?(基準値1.0)で、量・水質とも良い結果が出なかったため、中野市ではダムによる利水対策を求めている。
 また、治水対策でも山ノ内町の夜間瀬川の「余裕高」不足区間について、パラペットにより通水断面を確保する計画となっているが、流域協議会の中で観光地としての景観上からも反対意見が多く、河川改修の見通しがたっていない。
 辰野町の駒沢川については、「治水対策は、1/30確率の治水安全度を目標とした河川改修とする。」とし、「基本高水流量は、流域面積の決定方法や流出解析パラメータの決定方法に問題があるとの答申を尊重し、概ね5年間流量観測等を実施して検証を行い、その結果が出るまでは、維持管理等必要な対策を行う。」として保留となっている。
 また、利水対策は、「現状の水需要は、既存及び16年度に整備する水源で当面賄えることを辰野町と確認し、下町水源については、ヒ素等の汚染については現状では基準を下まわっていることから、もう少し見守ることとし、後の対応を調整する。」としている。
 茅野市の上川については、治水対策は「最終的には1/100確率の治水安全度とするが、当面は1/50確立の河川改修とする。弱堤部や危険箇所の整備は優先的に実施する。」との流域協議会の了承を受け、「20年間を目標に、当面は1/50確率の治水安全度確保に向けて暫定断面での河川改修を優先度の高い箇所から行う」とする河川整備計画を策定し17年3月9日に国の認可を得た。
しかし、国庫補助による事業の優先的な位置付けが難しい現状に加え、最終的な1/100確率の治水安全度の確保のための、ダムによらない具体的治水対策(「代替案」)が示されていないため、棚上げとなっている。
また、利水対策の「茅野市南部地域において予想される農業用水の不足については、地元農家の協力を得たうえで、不足する時期や量について今後十分な調査を実施し、溜池等の設置について検討して行く。」ことは今後の課題である。
 下諏訪町の砥川については、平成16年6月11日の流域協議会で「諏訪圏域河川整備計画」の計画対象期間を20年間とし、20年後のあるべき姿として、1/50確率の治水安全度を目標とし、河川改修計画に盛り込む。今回の整備計画期間の後に、次の段階として目指すべき治水安全度を1/100とする。」とする「砥川の河川整備計画に関する方針」が了承され、公聴会等の手続きを経て、上川と一括して平成17年3月9日に国の認可を得て、平成17年度から護岸工事等が着手された。しかし、目指すべき治水安全度を1/100とする対策は20年後に保留されたままである。
 また、利水対策については、平成15年の県の9月補正で岡谷市の地下水調査への補助金が計上され調査が行われたが、岡谷市が必要とする日量10,000トンに対し1,500トン程度の水脈が確認されただけで、岡谷市としてダムに替わる1万トンの代替案を模索し、市と山梨大学が地域連携事業して実施する調査研究事業(H18~19年度、総額3,000万円、全額県負担)をたちあげ、県が平成18年度1,600万円を助成するなど、未だ対策が確立していない。

(3)各流域の検討結果から言えること。 

 以上、9つの河川のうち浅川を除く流域についてダムに変わる「代替案」に関する検証を行ったが、ほぼ確立したと思われる河川は薄川、清川、郷士沢川の3つの流域であるにすぎないと言える。
 しかし、水道事業は市町村の事務事業であるとして、ダムを中止したのは県であるにもかかわらず、地下水調査等の費用を県が1/2しか出さなかったことへの批判はあった。
 また、これら河川を含む同一圏域内の他河川の治水計画策定の遅れによる影響から河川整備計画案の作成が遅れていたり、河川改修等の地元同意、国の補助事業への採択等々の課題から、この3つの河川改修が未だ着手されていないことは重く受け止めるべきである。
 一方、治水・利水を総合して現状で代替案が確立していないのは、黒沢川(利水対策)、角間川(利水対策)、駒沢川(治水・利水とも保留)、上川(治水対策)、砥川(治水・利水対策)の5つの流域であり、後に指摘する浅川を含めると6つの河川であると言える。
 この河川のうち、上川と砥川については諏訪圏域の河川整備計画の認可を得ることができたが、それは将来的には「目指すべき治水安全度を1/100とする」全体計画を示した上での当面20間を目標とした認可であり、ダムに変わる代替案の全容を示したことにはならない。
 こう指摘すると中には「基本高水流量が過大設定」とか「水道水の需要見通しや供給量が過大」とか「森林整備によって保水力は高まる」等々、反論される方もおられると思うが、その主張は、知事の「脱ダム」宣言を受けて議会が流域の住民参加による検討委員会条例を可決し、検討委員会32回、各部会92回、各部会等公聴会11回、流域協議会110回の検証を通じて到達している現実を無視した意見と言わざるを得ない。
 高度成長期における国の地方への開発誘導やバブル崩壊後の景気対策としての地方への公共事業誘導策などに対し、公共事業削減の在り方や理念的な面などから制度を見直し提言することは評価できるものであるが、各河川流域により治水や利水の条件が、それぞれ違うことを認識せずして画一的に判断し行ったのが「脱ダム」宣言と言わざるを得ない。
 以上の検証から、田中知事が「日本の背骨に位置し、数多の水源を擁する長野県においては出来得る限り、コンクリートのダムを造るべきではない。」とした「脱ダム」宣言は、具体的なダムに変わる治水対策や、「数多の水源を擁する長野県」でも、利水対策の「代替案」が確立できていないことから、田中知事が様々な課題について「長野モデル」とか「全国一」を強調するように、県民の安全・安心の確保というよりも自らの保身を表明したことに他ならないと言える。

浅川の「代替案」は困難

 以上、各流域における検証を指摘したが長野市の浅川流域については、下諏訪町の砥川流域同様にダム計画に対する賛否両論が激しく対立した経緯や、既にダムを中止した時点で計画の50.2%が終了していたことからも問題は複雑化しており、今だ「代替案」の具体策は困難を極めている現状にある。
 そこで、知事の行った「脱ダム」宣言の検証の最後に、他の河川流域を代表して少し詳細にこの浅川流域のダムに変わる治水対策を検証してみたい。

(1)浅川の治水対策の変遷

 浅川の当初の治水計画は、治水安全度1/100確率・千曲川合流点を基準点とする基本高水流量毎秒450トン(ダム100トン・河川改修350トン)とし、利水計画では長野市の水需要計画に基づいて、ダムからの取水により日量5,400トンを供給するというものであった。(利水計画については、現在治水対策が最優先され棚上げされていることから、ここでは触れない。)
「脱ダム」宣言後、議会提案により設置された治水・利水ダム等検討委員会は、部会報告は両論併記だったが、「委員会から寄せられた意見を総合して、その多数を優先し、委員会は浅川の総合治水・利水対策としてB案すなわちダムによらない河川改修単独案及びそれに対応する利水案を答申する。」として、事実上の多数決により基本高水流量毎秒330トンの河川改修案を答申した。
 しかし、国の事業認可を得て既に進捗している事業について、その事業の基本高水流量を下げる合理的理由が無く、「330トンの河川改修単独案」では国の認可を得られないことから、知事は平成14年の6月議会において、浅川、砥川の「枠組み」案を発表した。
 その内容は、当面の基本高水流量をダム計画と同じ毎秒450トンとし、河川改修で約8割(360トン・10箇所の橋梁の架け替えが必要)、遊水池や貯留施設の設置、森林の整備等の「流域対策」で約2割(90トン)、+内水対策(排水機場の増設・放水路・遊水地)というものであった。そして、その後一年間を経て平成15年7月に、遊水地3ヶ所で毎秒65トン(檀田で30トン・田子川との合流点で30トン、南浅川合流点付近の河道内遊水地で5トン)、水田の有効利用55haとため池等で25トンを貯留する「流域対策案」が発表された。
 しかし、この案もその後約2割の「流域対策」のうち水田の有効利用等の定量化が困難であり、認可を得ることができないこととなり再検証が余儀なくされた。
この間、浅川の河川改修工事は中断されたままであり、その後、一向に進まない「代替案」を待てない流域住民や長野市の強い意向を受けて、平成16年2月県議会において、県は国の将来既に完了している河川改修の「手戻りの無い範囲で」という条件のもと、ダム計画と同じ「既存の河川改修」を再開するとした。
その結果、河川改修で約8割とした「枠組み」案では「手戻り」が生じることから、事実上、県の「枠組み」案はこの時点で破綻した。
さらに、本来であれば、1/2が国庫補助事業で行われる河川改修事業が、平成16年度8億円(国2億円)、平成17年度7億2千万円(国1億円)、平成18年度予算案5億7千万円(国2億円・予定)と、多額の県費を投入せざるを得なくなった。
 その後県は、多様な案を検討するためコンサルタントへ浅川の流出解析を委託し、平成16年9月27日、流域協議会にその結果を説明した。
 その内容は、外水対策(浅川)について基本高水流量毎秒450トン、治水安全度1/100確率とし河川改修で350トン確保を前提とした、ケース①~⑥(ため池・ダム地点での河道内遊水地・檀田遊水地・田子遊水地の組み合わせで、ため池でのカット量は2池で15トンと共通だが、①と②案は河道内遊水地規模により下流の遊水地のカット量が変化し、ケース③~⑥については、檀田遊水地・田子遊水地のどちらかを想定しない内容)というものであった。
 しかし、この説明について流域協議会のダム反対派から「河道内遊水地はダムである」という批判が、一方河道内遊水地賛成派からは「この中から県の責任ある案を示すべき」という強い意見が出されたことから、県はその後平成17年9月に長野市等に「ケース②」を説明した。
 このケース②の内容は、河川改修を前提に基本高水流量毎秒450トンの内、貯留施設でのカット量をそれぞれ、ため池(猫又池・大池)で15トン、河道内遊水地で62トン(堤高36.5m・治水容量453千トン)、檀田遊水地で17.1トン、田子遊水地で21.2トンというものであった。
その後、県は平成17年11月22日に「浅川の河川整備計画に関する基本的な考え方」を発表した。その内容は、下記のとおりである。

  • 浅川を含む長野圏域河川整備計画の計画対象期間を認可後20年間とする。
  • この20年間に実施する浅川の治水対策として、河川改修、ため池の治水利用、(仮称)檀田遊水地、(仮称)田子遊水地を長野圏域河川整備計画に位置付ける。これらの対策の実施により下流部においては約1/60、上流部においては約1/30の治水安全度を確保する。
     さらに、千曲川合流点付近固有の問題解決のため、内水対策も河川整備計画に位置付ける。
  • 今回の整備計画期間の後に次の段階として目指すべき治水安全度を1/100とし、その具体的な方策については、多くの住民の合意のもとにさらなる治水安全度の向上が図られるよう検討を続ける。

 しかし、この「浅川の河川整備計画に関する基本的な考え方」は、これまで長野市等に示したケース②の内容から「河道内遊水地(穴あきダム)」だけを除いたものであった。
平成14年6月議会において、県が発表した「枠組み」案では河川改修と「流域対策」+内水対策(排水機場の増設・放水路・遊水地)の方向が示されたが、さらに平成18年2月8日、県はこれまでコンサルタントへの委託や検討した結果から「浅川の内水対策に関する基本的な考え方」を発表した。その内容は、下記のとおりである。

  • 浅川の内水対策の目標を「下流部における既往最大内水被害となった昭和58年9月洪水と同規模の出水に対して床上浸水被害を防止する」とし、これを実現するための方策を今後20年間に実施する具体的な整備の内容として、外水対策とともに長野圏域河川整備計画に位置付ける。
  • 具体的な整備の内容については、千曲川の水位上昇に伴う排水規制の影響や即効性、経済性、リスクの分散等に配慮し以下の対策とする。
      1.浅川排水機場のポンプ能力の増(既設44㎥/s)
      2.二線提(輪中提)の導入(浅川右岸の一部の地域)
      3.遊水地の設置(容量 約485,000㎥積 約21ha)
  • 上記の抜本的な対策の他、出水時のゴミ問題など既存施設の能力を十分に発揮させるために必要な措置については、河川整備計画とは別に、関係機関と協議を行いながら県関係部局が連携してその解決にあたる。

(2)国の認可は困難

 県は平成17年11月22日に発表した「浅川の河川整備計画に関する基本的な考え方」について国の認可を得るべく12月以降、国土交通省関東地方整備局との協議を開始した。
 しかし、関東地方整備局からは基本的課題として、「下流部においては約1/60、上流部においては約1/30の治水安全度」としているが、最も人命を尊重しなければならない区間が、なぜ1/30なのかということや、1/60の流量の場合、上流では洪水が氾濫し、実際には下流部には350トンも流量が到達しないのではないか、一般に横越流を伴う遊水地は、緩い流れの区間でしか効果がないが、急流区間の檀田遊水地はどのような技術的検討の結果、可能と判断したのか等々が指摘されたと言われている。
 そして、何よりも決定的なことは、「整備計画で目標とする1/100の治水安全度の流量配分はどうなるのか、河川改修が『手戻りがない』ことは、1/100対応が可能な施設整備のメニューを示し手戻りがないことを確認できなければ整備計画を認可できない。」(私・著者の関東地方整備局への取材)としていることである。
 つまり、先にも指摘した通り国と認可に向けて協議している「浅川の河川整備計画に関する基本的な考え方」は、コンサルタントに委託したケース②から河道内遊水地だけを除いただけのものであるため、将来目標である1/100の治水安全度を確立するには河道内遊水地に予定していた毎秒62トン分のカット流量が不足するため、「下流部においては約1/60、上流部においては約1/30の治水安全度」という不整合が生じてしまった訳である。これについて県は、「1/100を目指して行く途中段階(20年間)である」としているが、関東地方整備局は途中段階であっても将来(20年後以降)既存の河川改修の「手戻り」等がないことを確認するために、1/100確率の洪水に対応する残る62トン分をカットするメニューの提示と河川や他の施設の流量配分を求めているということである。
 このことについて、ダム反対の皆さんの主張として、国土交通省は「あくまで県の主体的判断」とか「市民、長野市を含めた合意」(平成18年2月県議会での日本共産党県議団の代表質問)としているが、関東地方整備局が県に求めているのは、あくまで県として浅川流域の安全確保を前提とした技術的な説明責任であることを矮小化したものと言わざるを得ない。
 この点については、砥川の河川整備計画認可の場合も、国土交通省関東地方整備局は「1/100にするというときに河道改修のやり直し(手戻り)は困る。地元合意が得られるかどうかなどは別にして、河道改修の手戻りを避けるために何らかの技術的手段(メニュー)があることだけは示すべき」と求められ、県が示したのは上流への複数の河道内遊水地(穴あきダム)や河道外遊水地であり、その結果の認可であることを、県は言おうとせず誤魔化している。(つまり、砥川の代替案は複数の小規模ダムであったことになる。)
 平成17年11月に県が発表した「浅川の河川整備計画に関する基本的な考え方」に基づく河川整備計画(案)を基にした県と国土交通省との協議では、国土交通省が県に対し技術的な宿題が出されただけで、県から何ら具体的な回答のないまま行き詰まっている状況である。つまり、20年後の治水安全度1/100確率の説明責任が果たせない限り、認可が得られないという現実に直面しているのである。
 この点について、田中知事は平成18年2月県議会において「砥川・上川は認可されている。浅川は究極の案を示した。技術力や想像力に欠けるなら、国が案を示すべき。」と答弁し、自ら「代替案」はあるとして発した「脱ダム」宣言の責任を国の責任に転化し、さらに、1/100の治水安全度の確保については「放水路を組み合わせるメニューがある」と明言した。
 しかし、知事が初めて口にした「放水路案」(分水路)の内容は明らかでなく、国の認可を得るためには、檀田遊水地より上流部でバイパスにより分水させる放水路を位置付ける以外に方法はなく、この放水路案では多額な費用を必要とすることからも、困難と言わざるを得ない。
 平成18年2月8日に発表されて以降、関東地方整備局と協議が行われている「浅川の内水対策に関する基本的な考え方」については、排水機場の増設等について過去から地元要望が強く基本的方向は異論がないと思われる。
 しかし、遊水地の機能等について外水対策との関連性もあり河川整備計画の認可には、先に指摘した外水対策としての「浅川の河川整備計画に関する基本的な考え方」とセットで、解析や説明が求められることから、現状での認可は困難と思われる。

(3)県内他の河川とのバランス問題

 今回、県が認可を得ようしている浅川の治水対策の目標について、大きな疑問点がある。それは、県内各河川の向こう20年以内に目指すべき治水安全度とのバランスが取れていないという点である。
 20年後までに目指す河川整備計画が達成すべきとする治水安全度1/30は、将来目指すとする1/100の治水安全度の具体的なメニューを明確にした上で、当面の目標値として長野市や流域住民に理解されれば、認可となる可能性は否定しないが、このことは何よりも該当の流域住民の皆さんに理解を得るべき課題である。
 なぜなら、河川の計画規模の決定について、国土交通省の「河川砂防技術基準」の「計画編」には「それぞれの河川の重要度に応じて上下流、本支川でバランスが保持され、かつ全国的に均衡が保たれていることが望ましい。」とされ、「一般に、河川の重要度は一級河川の主要区間においてはA級~B級、一級河川のそのほかの区間及び二級河川においては、都市河川はC級、一般河川は重要度に応じてD級あるいはE級が採用されている例が多い。なお、特に著しい被害を被った地域にあっては、この既往洪水を無視して計画の規模を定めることは一般に好ましくない。したがって、このような場合においては、その被害の実態等に応じて民生安定上、この実績洪水規模の再度災害が防止されるよう計画を定めるのが通例である。しかしながら、この場合においても上下流、本支川のバランスが保持されるよう配慮する必要がある。」としているからである。
 つまり、一級河川である浅川の治水安全度はこうした基準から1/100が採用されているが、「浅川の河川整備計画に関する基本的な考え方」では「今回の整備計画期間の後に次の段階として目指すべき治水安全度を1/100」として棚上げし、当面向こう20年間に達成する治水安全度を上流の住宅密集地で1/30としたことが、妥当であるかどうかということである。
 これまで県は「代替案」の対応の中で、飯山市の清川については「治水対策の目標は、他河川とのバランスを考慮してD級河川と位置付け、1/50確率の治水安全度に対応した河川改修とする。」とし、諏訪圏域河川整備計画の20年の計画対象期間で砥川と上川は1/50の治水安全度を目標とし最終的には1/100の治水安全度を目指すとしている。
 しかし、なぜ、浅川の住宅密集地だけが20年間で整備する目標が1/30と低く設定されなければならないのか。しかも砥川については10年間で1/50確率の河川改修を終了することを県は地元と約束しているのである。
 また、県は平成14年の6月議会に示した「浅川及び砥川に関する治水・利水の枠組み」で、浅川の治水対策の骨格として「国で定めている『河川砂防技術基準(案)』によると、C級の河川に位置付けられている浅川の治水安全度のおおよその基準は1/50~1/100となる。これを踏まえ、少なくとも50年確率相当の流量への対応を第一に確保して行く。この流量は、現時点までの長野県の試算では、先の基本高水流量の約8割となり、答申に於けるいわゆるB案の基本高水量と比較すると、試算値の方が若干大きな流量となる。長野県は、河川改修事業によって、まずこの流量への対応を何よりも優先して実施する。」としたが、この時の「枠組み」の考え方は砥川も同じであり、なぜ今日になって浅川だけ治水安全度に格差を付けるのか説明責任が求められる。
 「河川砂防技術基準」の規定が最終的な目標である治水安全度を定めるものであり、向こう20年間で目標とする治水安全度が河川整備計画の認可では問われないと仮定したとしても、「県内の他の河川とのバランスを考慮し設定する」として来た県の姿勢が問われるとともに、「浅川(流域の住民や資産、安全)は他の河川よりも軽く扱われている」と、長野市や流域住民からの反発が予想され理解は得られないと思われる。
 つまり、「浅川の河川整備計画に関する基本的な考え方」は、安全度を決めてから手段を検討するのが本来の計画論なのに、手段(遊水地等)を貼り付けた結果がこうなったという結果論に過ぎず、説明責任が求められる。

(4)「究極の代替案」とは

 以上、浅川の現状と課題について指摘して来たが、「代替案」はあると言ってきた知事は、最近になって唐突に「脱ダム」宣言を行ったのは自分であることを棚上げし、「では皆さんが代替案を出して下さい」とか「国が案を示すべき」等、人の責任に転嫁する発言をするようになった。
 そこで、最後に「代替案」の検証をしてみたい。
 著者は過去に、浅川ダム建設予定地上流から南浅川にトンネルを掘りトンネル内に1/100確率の洪水に対応する残る62トン分をカットし、南浅川に出口を絞り放流する地下ダムを思い付き、その整備に必要な経費試算を専門家に依頼したことがある。しかし、とても莫大な費用となってしまい引出にしまい込んでしまった。
 最近、知事は平成18年2月議会での議員の質問に「ダムを作らないことが理念のみでなく、方針である。」「内水をいかに防ぐかということを検討して来た。そして、千曲川と関係なく防ぐことが出来ると判明した。内水対策とともに、外水対策を如何にするか、至高(この上もなく高いこと)のメニューを示した。砥川・上川は認可されている。浅川は究極の案を示した。技術力や想像力に欠けるなら、国が案を示すべき。」、外水対策については「実は放水路を組み合わせて1/100にすることができるメニューというものが有り得る」と答弁した。
 しかし、「究極の案」とした内水対策は問題の外水対策(浅川本川の治水対策)とセットで国の認可を得るとしており、認可のためには内水と外水の整合性や、知事がまた突如表明した「放水路」(案)が、何よりも県が既に示している「浅川の河川整備計画に関する基本的な考え方」に基づく河川整備計画(案)で不足している62トンを、檀田遊水地より上流からカットし千曲川まで延長しなければならないことから、恐らく莫大な費用を要し困難と思われる。
 従って、残る代替案は、これまでの経過で指摘したコンサルタント報告でのケース②の案が最適な案であり、この案であれば目標とする1/100の治水安全度の流量配分はどうなるのか、既に流出解析が行われ河川改修に『手戻りがない』ことが確認されていることから、国土交通省の認可が得られると確信する。
 但し、ケース②案は浅川ダム建設予定地だった地点に「河道内遊水地(穴あきダム)」を位置付けていることから、これまでダム建設反対の皆さんが指摘して来た地質や地すべりの安全性については、浅川ダム建設予定地だった地点や上流も含め再び客観的な調査を行った上で判断することが必要である。
 流域住民の賛否が決定的に対立し、今日に至っている浅川の治水対策を新たな段階に前進させるには、この「代替案」以外に無いと言わざるをえないし、賛否者との同意と流域住民の安全や様々な課題の解決のためにも、この提案に対する歩み寄りを求めたい。

おわりに

知事が突如行った「脱ダム」宣言から、この2月20日で5年が経過した。
 しかし、これまで指摘して来たように、当初知事があるとした「代替案」は一部の河川流域を除き、5年経過した今日でも確立していないばかりか、既に河川改修等が完了した河川は一つもない。
 その理由は、宣言当時の発想が「代替案」は河川の浚渫や改修、森林整備といった単純な発想で県内の河川流域を画一的に考えた結果であり、各流域の洪水や水道水源等の歴史、流域住民の「痛み」を理解せず、ただ単に、県民や全国に発信するためのコンクリートによる環境への負荷や、利権構造の公共事業見直しのみに観点が固執してしまった結果でもある。
 確かに、「脱ダム」により一旦全てのダムを中止し白紙から検討した結果、県が公共事業を確保することを目的化し計画されたと思われる事業もあった。
 しかし、治水・利水ダム等検討委員会委員の人選結果で分かるように、当初から「ダムなし」の結論を絶対視するあまり、肝心な住民の安全をどのように保障するかを重視することを蔑ろにしてしまったことも否定できない。そのことは、結果的にダムを中止した各流域の治水や利水の対策を遅らせる結果となっている。
 この背景には、田中知事誕生当時の政治状況も反映していると思われる。それは、政権維持のための公共事業誘導策と、そのための多額な借金をどうするかという背景の中で、無駄な公共事業を見直すことが政治的テーマとしてあったからである。
 しかし、こうした背景の中で田中知事が生まれ、その原動力として支えた支持者に依拠した対応を行ったとしても、ダムに反対にする方々の主張も多分に未熟な党利党略的な考えであったため、今日の結果を生んでいると言える。
 一番の問題は「脱ダム」という理念を絶対視する余り、流域住民の安全をどのように担保するのかが、行政に求められる責任であるということを置き去りにしていることである。
 知事は「脱ダム」宣言で「日本の背骨に位置し、数多の水源を擁する長野県に於いては出来得る限り、コンクリートのダムを造るべきではない。」と宣言したが、「数多の水源を擁する」とした認識が誤りであったという現実を認めるべきである。
 つまり、各河川流域において地形や気象状況、水道や農業用水等の条件が異なるにもかかわらず、その事実を認識していないために、治水・利水を目的としたダムは「出来得る限り」から、「絶対、造らない。」方向へ転換した姿勢が、今日の混乱を招いていると言わざるを得ない。
 最後に、著者が条例で提案した「治水・利水への住民参加」とは、政治家の保身や党利党略を重視することではなく、各河川の安心・安全を確保するために県の責任ある方針を示した上で、その流域住民が行政とともに「より良い方向」のため論議を尽くし、本来の自治を確立することであることを指摘しておきたい。
 なお、今回の「脱ダム」宣言の「代替案」の検証にあたっては紙面の都合上、各流域については基本的な主な課題に止めたとともに、浅川については、新幹線車両基地の建設に際して地元と交わされた「確約書」の問題や、県が国に認可を求めている外水や内水対策(案)の「ため池」や「遊水地」の技術的課題、内水についての技術的課題等々について国の認可を得るには多くの課題があることや、「高水協議会」への疑問、そして、何よりも「遊水地」や「二線提」の対象となる地権者や地元住民の対応については触れられなかった。
 これらの課題については、後に機会があれば指摘させていただきたいと思っている。

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