特集
2006.2.16

市町村への権限移譲の
       知事の基本的な姿勢が問われる。




 この間の県の大幅な組織改正に関する県との質疑から、全国的にも大変遅れている本県の主体的な市町村への権限移譲の取り組みについて、特集します。

9月議会での提言

 昨年の9月議会で、大幅な県の部局や現地機関の組織改正に関する条例改正案が継続審査となりました。
 その理由は、「職員の皆さんから提言を募集しながら、その提言が生かされず一方的な内容」とか、「市町村の理解を得ているとしているが、都合の良いことだけとらえている」、「地方主権と言いながら、現地機関へ権限を移譲していない」等々でした。
 そして、この9月議会で私はこの議案に、地域主権と言いながら現地機関に財政や人事に関する権限が移譲されていないし、それ以前に市町村との役割分担が明確になっていないこと。さらに、地域主権を言うのであれば、田中知事のもとで遅れている市町村への権限移譲を行うため、具体的なメニューを作り市町村と一緒に進めることを求め議案の継続審査に賛成しました。

12月議会での取り組み 

 9月議会での継続審査後、県は地方事務所単位での県民への説明会(議会が継続審査としたために初めて行った)や、市町村長への聞き取り調査を行い、県民や市町村の理解を得たとして条例案は何も内容を変更せず12月議会を向かえました。
 このことは、県民や市町村が意見聴取の場で異議を申し立てても「説明会を行った」という形式ばかりで、何も取り上げてもらえず改善されないことを意味していました。
 従って、当然、12月議会でも関係条例案は引き続き継続審査となりました。

 しかし、9月議会で私が求めた市町村への権限移譲については、地方事務所長を通じて全市町村長に対して聞き取り調査が行われ、今後、具体化して行くことが12月議会を前にして表明されました。
 そこで私は、12月議会の一般質問で市町村への県の権限移譲を主体的に行うよう知事に求め、「県側のメニューの具体的内容、スケジュール、進め方」を質しました。
 この問いに知事は、「今年の10月末から11月にかけて全市町村を訪問させていただいて、権限移譲についてお伺いした各市町村からの意見というものを踏まえ」「様々な形で速やかにお示ししていくということであります。」「市町村訪問の時に具体的にこうした権限移譲というご要望があったのは、農地転用許可が27市町村、農振農用地の除外に関してが12市町村、有害鳥獣駆除の権限に関してが13市町村、都市計画の決定に関して2市町、保安林の指定・解除に関してが2村であります。で私どもは既に422項目の事務を市町村に移譲しておりまして、同時にこうした中で、平成16年11月には地方自治法が改正されて、市町村議会の議決を得て権限移譲の要請が市町村からあった場合には、具体的に市町村長と知事が協議をするということでありますが、こうした形での権限移譲のご要請は今までのところは、ないわけであります。」と答弁しました。

 また、総務委員会でも私は同様の質問をしましたが、担当である小林行政システム改革チームリーダーは「66の市町村の方から15の項目についてお話しがあった」「県庁の中でもこの15項目の他にもどんなものがあるのか調査をさせていただき、また、市町村からも別途お話しをお伺いする機会等も作りながら、改めてこの項目をどういった形で提案させていただくか、なるべく早い時期に検討させていただいて、それをもって県のメニューとさせていただくような形を考えております。」としました。
 さらに私が「市町村と協働して進めるという意味も含めて研究会なりを実務者レベルでも結構ですし、そういうものを作って進める気はあるかどうか」との質問には、「研究会というご提案がございましたけれども、具体的に事務が進むような形が一番大切であると思いますので、そんな形が一番大切で市町村の皆様と意見を交換させていただきたいと考えております。」とし、その時期については「ある程度年度内にでもご要望の取りまとめ、私たち各部局の意見の取りまとめをさせていただき、出来るだけ早くという形を考えさせていただいております。」と答弁しました。

これまでの権限移譲への知事の姿勢

 知事は12月議会での私の質問に、「私どもは既に422項目の事務を市町村に移譲しておりまして、同時にこうした中で平成16年11月には地方自治法が改正されて、市町村議会の議決を得て権限移譲の要請が市町村からあった場合には、具体的に市町村長と知事が協議をするということでありますが、こうした形での権限移譲のご要請は今までのところは、ないわけであります。」と答弁しました。
 しかし、既に「422項目の事務を市町村に移譲しており」というのは、これまで私が総務委員会で提出を求めた資料でも、県が主体的に権限移譲を行った形跡は皆無であり、むしろ、市町村側の要望により9件の事務について移譲せざるを得なかったというのが実情であったと思います。
 また、私の総務委員会での資料請求に対し県から提出された各都道府県の「市町村への権限移譲状況一覧」(平成16年4月1日現在)では、本県は法令数で44項目、項目数で395項目とし順位は24番目としていますが、この比較は主体的に権限移譲を行った項目の比較でないことから、本県の取り組みを図るデータとはなり得ません。
 つまり、市町村への権限移譲は国の地方分権方針により、中核市(長野市)や特例市制度(松本市)が設けられたことにより、その条件を満たす市が多いほど、当然、その県は権限移譲項目が増えるということを誤魔化したデータです。
 他県の多くは、市町村の意向を尊重しながら、出来るだけ住民に身近な市町村に権限を移譲することによって敏速な県民サービスを提供するための努力をしていますが、本県においては、「知事の権力が奪われる」とか「市町村の能力を信用していない」ためか具体的取り組みは行われていませんでした。
 (この事実は、コモンズの理念と矛盾すると、私は思います。)

 平成16年に地方自治法が改正され、県では同年12月24日付けで総務部長名で市町村総務担当部課長宛に「条例による事務処理特例の拡充について」という通知が出されました。
 その内容は、「市町村への権限移譲が一層推進されるよう、当該制度の活用について積極的な取り組みをお願いします。」というものです。
 そして、この結果については、知事は私の一般質問に「平成16年11月には地方自治法が改正されて、市町村議会の議決を得て権限移譲の要請が市町村からあった場合には、具体的に市町村長と知事が協議をするということでありますが、こうした形での権限移譲のご要請は今までのところは、ないわけであります。」と、権限移譲が進まないのは市町村から要望がないからと人の責任に転嫁するような答弁をしています。
 しかし、私に言わせれば県が市町村と話し合いながら具体的メニューを示す主体性がなくただ単に通知を出して要請がなかったとは、正に「御上」の感覚と言わざるを得ません。
 そもそも、地方自治法の改正は地方分権一括法を踏まえて行われたものであり、その趣旨は住民に一番身近な自治を尊重する目的と解せば、地域主権「コモンズ」を掲げる田中知事が、なぜ、具体的に権限移譲のメニューを示さなかったのか、それは、県民のためと言いながら自らの権力を維持するための権力者の発想と言わざるを得ません。

新潟県の取り組み。

 先日、私は会派として新潟県の市町村への権限移譲の取り組み状況について視察を行いました。ここでその概要を以下に簡潔に報告しますが、新潟県では市町村との役割分担の明確化も含め本県よりかなり進んでいます。

 新潟県では、平成9年4月、「第1次移譲」として県独自で38事務211項目の権限を市町村に移譲し、平成12年4月の地方分権一括法の施行により「更なる権限移譲」の検討を開始するため「地方分権推進会議」を発足させ庁内での洗い出し作業を行い、平成13年5月に「権限移譲合同検討会議」(市町村の担当課長の代表・市長会及び町村会の事務局長・県関係課長等で構成)を設置し具体的な検討を開始しました。
 そして、その後「報告書」の作成、市長会や町村会との協議、議会での「事務処理特例条例案」の可決を経て、平成15年4月1日より「第2次移譲」として新たに27事務222項目の移譲を行い、平成17年度現在では64事務462項目の移譲を行っています。

 また、この過程で権限移譲に関する「基本的な考え方」として、「市町村優先の原理の徹底」・@「住民の利便性の向上」(住民に身近な行政事務は、できる限り市町村で行い、市町村でできないものだけを県が行う)、A「市町村の自治権の強化」(市町村の自己決定・自己責任・県関与の縮小と市町村に任せる分野の拡大)等が確認され、下記の考え方による「市町村と県の役割分担」が明確にされています。
 それによると、当然のことながら市町村の役割は「地域における総合的な行政主体として、住民生活に直結する行政サービスを幅広く包括的に担う。」と定め、県の役割は「市町村を包括する広域の団体として、次の事務を担う。」とし、@広域事務(市町村の区域を越えた広域的対応が必要なもの)、A連絡調整事務(国等と市町村、市町村相互の間の連絡調整)、B補完事務(高度な技術や専門的な能力を必要とし、市町村での実施が困難又は非効率なもの)としてます。
 また、この基本的な考え方に沿って、それぞれの行政主体の「あるべき」役割を例示として表にまとめて示しています。

 さらに、移譲の進め方として、「移譲対象」とされたものを受入体制の条件整備の有無を含メニュー化し、市町村(広域連合含む)は、メニューの中から移譲を希望する事務・権限について県に申出(要望)を行い、県は市町村の意向を尊重しながら、具体的な受入体制の整備、移譲時期等を含め市町村と十分協議を行った上で、移譲事務・権限を決定するとしています。
 
 権限移譲で問題となるのは財源移譲が伴うかということですが、新潟県では「財政的措置」として、「移譲された事務処理にあたり、地方財政法第28条の趣旨により、事務処理に要する人件費及び諸経費を交付する。また、移譲初年度に一時的に必要と認められ経費についても、準備経費として交付する。」としています。
 また、「人的措置」についても「市町村から地方自治法第252条の17の規定に基づく県職員の派遣について求めがあるときは、事前に協議・調整した上で決定する。」とし、「その他の支援」では「移譲事務に係わる説明会・研修会、事務処理マニュアルの提供を通じ、適切に事務を引き継ぐとともに、移譲後においても、市町村の希望に応じ、実務上の助言や専門的知識・技術を有する職員の育成への協力を行う。」とています。

真の「地域主権」のため、早急な取り組みを求める。

 新潟県にかかわらず他県の例も調査を行っていますが、もはや長野県の主体的な権限移譲の取り組みは、何も行っていないという意味で全国最低と言って良いと思います。
 そして、この事は結果として市町村を主体とした各種サービスが遅れをとり、県民サービスが遅れをとっているということにほかなりません。
 また、よく田中知事は「コモンズ」(地域的な絆)とか「地域主権」とか「言葉」では、県民(住民)に一番身近な市町村を尊重するかのような「飾り言葉」を並べますが、現実は市町村が行う事務(サービス)と県が行う事務との役割分担を明確にしない(認識していない)ために、市町村が行うことまで介入し摩擦を起こしているのが現実です。
 しかし、真に県民サービスを向上させる考えから「地域主権」を言うのであれば、「言葉」だけでなく、市町村との役割分担を明確にし「住民に身近な行政事務は、できる限り市町村で行い、市町村でできないものだけを県が行う」ことを徹底し、「市町村の自己決定・自己責任・県関与の縮小と市町村に任せる分野の拡大」を行うため市町村へ権限と財源を移譲する取り組みを市町村と連携して早急に行うべきです。
 何時までも自分でないと出来ないと思い込み、権力を守ろうとする姿勢からは、気が付いてみたら、自治の基本である市町村の人材や機能が他県においていかれ、不幸となるのは、そこに生活する県民ということになってしまうと私は思います。
 ようやく、権限移譲のメニューを作り取り組むと表明した県に対し、私は、さらに主体的に市町村と連携を図りながら、可及的速やかな取り組みを求めるものです。


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