ホーム  |  もどる
治水・利水・ダム問題コーナー

県公共事業評価監視委員会の8ダム中止決定について
2003.10.29

 昨日の新聞報道に「県の第3者機関、公共事業評価監視委員会(野口俊邦委員長、13人)は27日、長野市内で開き、浅川(長野市)、下諏訪(諏訪郡志下諏訪町)など県が既に決めている県営8ダムの中止方針を了承した。県は、国土交通省に正式に中止を報告する。8ダム事業で県が国から受けた補助金は計162億円余。「脱ダム」宣言に基づく県のダム事業中止をめぐっては当初、国から補助金の返還を求められるのではないかとの論議もあったが、国交省は4月、都道府県に対し「公共事業再評価の結果、中断した場合は返還を求めることはない」と通知。県はこれを受け、監視委による再評価手続きを踏んでいた。」という記事がありました。
 私はこの記事を読んで率直に疑問を痛感し、怒りを感じました。
 と言うのも、私が参加した県治水・利水ダム等検討委員会の8つの流域に関する答申は、確かに辰野町の駒沢ダムの凍結以外は中止であり、その後答申を受け県が出した方針も中止ですが、飯山市の清川ダム以外は具体的なダムに替わる代替施策が明確になっておらず、今後各流域協議会において住民参加により検討することになっているからです。
 私は治水・利水ダム等検討委員会の答申について、何度もこのHPで主張していますが、「ダムなし答申」は、検討の結果「各流域のダムによらない治水・利水の可能性がある」との判断で今後の科学的な検証を前提として私は賛成しました。しかし、例えばダムに替わる水道水源を地下水に求めた流域では今後、水源調査を実施しなければ水量や水質等が分かりませんし、治水面においても基本高水流量を維持した上での「流域対策」が費用対効果も含め国の認可や流域住民の同意を得られるかという現実的な行政の責任も答申のあちこちいに盛り込みました。
 そのことは、7月29日に開催された今年度第1回公共事業評価監視委員会でダム事業についての説明で県の事務局が「ダムについては中止はいたしますけれども、それの代わるべき対策がありませんので純粋な縮減額が今のところ積算できない状態でございます。」(議事録22P)と認めているところです。
 つまり私が新聞記事を読んで怒りを感じたのは、県として国に対し報告する最終的な諮問機関としての公共事業評価監視委員会が、代替案が具体化していない事業をなぜ簡単に了承したのかということです。
 知事の任命した新委員のもとで公共事業評価監視委員会は今年2月20日に「公共事業の在り方について」という提言を行い、その中で事前・事後評価制度の創設など「長野モデル」となる公共事業システム構築を提案、一般県民の「納税者」としての視点(必要性、代替性、費用対効果)以外に、直接、利害に関係する地域住民の立場による評価が必要と指摘していただけに、私としては今回のその監視委員会の措置が残念でなりません。
 なぜなら、その後7月29日に開催された第1回の監視委員会において、15年度の再評価箇所として提案された53箇所を2〜3ヶ月で検討することについて、どの様に審議するかにあたり野口委員長は「53箇所を一つ一つ全部われわれの・・視点から見直していくというのは、これはもう時間的に不可能」とした上で「この代替案は本当に十分なる代替案としての技術的な保証があるのかというような検証は恐らく無理であろう」とし、その後「荒っぽい論議の結果になっているという批判を受けてもやむを得ない」(議事録14〜16P)としているからです。
 また、その後確かに、今回の結論を得るまで委員会が開催されたのは8月28日・29日、9月20日・21日、10月27日の5日間のみで、その間、県民からの意見聴取も行っておりません。参考までに治水・利水ダム等検討委員会は、現地調査や公聴会も含めた全体の委員会38回、各流域の部会や公聴会101回、計139回の検討を行いました。もっとも、公共事業評価監視委員会は治水・利水ダム等検討委員会の答申を受けた県の公共事業再評価委員会の出した方針が妥当かどうか検討する場と主張する方がいるかも知れません。しかし、当初監視委員会が掲げた理念からして、そのことは何の言い訳にもなりません。「自分の目で見・住民の意見を聞き・県民益の立場で判断する」ことが当然であり、今回の結論は県民益でなく権力者の御用機関としての委員会の姿を県民に示したことにほかならないと私は思っています。
 先に引用した新聞報道の続きに「この日は「ダムなし方針には賛成だが、代替案が固まっていないのに中止は不合理。特に角間ダム(下高井郡山ノ内町)は、凍結とした方が理解が得やすい」(梶山正三委員)との意見が出た。このため中止は了承するものの、今後はそれぞれの流域協議会での検討を尊重し、代替案を具体化するよう意見を添付すると決めた」とあり、今日の新聞報道には「昨日に了承した県営8ダムの中止に対する意見書案も諮り、@過去の災害、氾濫記録を住民に説明し、総合治水事業の優先順位に反映させるA災害危険地域の情報提供で開発行為を抑制するBダムに替わる治水・利水対策を住民参加で早急に具体化するCため池や水田などを地域と協働して維持管理するーとの共通意見をまとめた。」とありました。
 「代替案を具体化するよう意見を添付する」とか「ダムに替わる治水・利水対策を住民参加で早急に具体化する」ということは、監視委員会自身が現在の時点でダムに替わる代替案が明確になっていないことを認めたことであり、代替案が具体化しないまま監視委員会に承認を求めた県の姿勢同様、無責任さを露呈したと言わざるを得ません。
 いったい誰が流域に生活する県民の安全を確保し、飲み水を保障するのでしょうか。
 私は、監視委員会は県民に責任を負うのであれば、少なくとも「代替案が具体化するまで、継続審議とする」という対応を行うべきだと思います。国からの補助金返還の対応についても期限が区切られている訳ではありませんし、寧ろ代替案の実施にあたっても国の認可が必要となる訳ですから、代替案が具体化した時点で中止を了解した方が今後の県政運営にとってプラスに作用すると確信します。
 かって浅川ダム問題をめぐりダムに反対していた皆さんは、当時の監視委員会に対して住民の民意を反映せず十分な論議を尽くしていない、結論先にありきの御用機関と言って批判して来ました。しかし、今の監視委員会も全く同じことが言えるのではないでしょうか。
 これまで批判してきた皆さんも、自分達の党利に有利であれば黙っているのでしょうか。また、田中知事も、こうした審議で出された結論を自分にとって都合の良いものだからと言って受け入れるのでしょうか。
 もし、そうだとすれば今の県政は県民益や真の住民自治の観点から、何か全く逆行する方向に進んでいます。
 監視委員会は時間が限られているからと言って「荒っぽい論議」を自ら認める位なら、継続審議にして県民益の立場から徹底した議論を尽くすべきです。

ホーム  |  もどる