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治水・利水・ダム問題コーナー

長野市の「雨水貯留施設助成金制度」は住民参加の羅針盤
2002.9.24

 

長野市が市民の雨水タンクに助成制度スタート

 長野市は10月10日から雨水の流出抑制と有効利用を図る目的で雨水貯留施設を設置する家庭や事業所に対して、2万5千円〜5万円を限度として補助する「雨水貯留施設助成金制度」をスタートします。
 対象経費は、雨水貯留施設を購入するのに要する経費で、助成金額は1基当たりの経費の2分の1を限度として、2基分までを対象とするもので、100リットル以上500リットル未満2万5千円、500リットル以上5万円を助成するものです。
 申し込みは「助成金交付請求書」により、位置図、領収書の写し、設置前及び設置後の写真をそえ、市役所河川課へ提出することになります。
 この制度については、私としても浅川ダム問題で「脱ダム」賛成とか反対とかいう以前に、浅川をはじめ市内の各所で水害が発生していることは事実であり、河川流域の上流に住む皆さんが、下流に住み現に水害にあっている被災者の痛みを理解し、権利の主張のみでなく自らも下流域に負担を負わせていることを認識し治水に参加することを自覚する方策はないか、長野市へ提案して来た経過があり、制度のスタートを大変嬉しく思っています。
 私も、この制度を活用して雨水タンクを設置し、妻の趣味であるガーディニングなどに利用するつもりですが、皆様にも是非とも趣旨をご理解頂き、ご自身の問題として生活スタイルの中に取り入れて頂ければ幸いです。

市民の雨 (私の考える制度の意義)

 私は、自分自身が地元の都市型水害と昭和58年の長野市議当選以降、向かいあって来ました。
 その間、床上浸水や床下浸水、便漕浸水など何度も被災された家庭の皆さんの「後片付け」のご苦労や、雨音を聞きながら「この降り方は危ない」と河川の見回りに出かける区や用水の役員さん方の姿を何度も見て来ました。そして、それらの皆さんから「行政や議員は何をやっているんだ!」と、怒りのほこ先を向けられながら、抜本的解決策は何かを考え調査し、「下流も水害に苦しんでおり、下流に流すことは出来ない。でも上流にも下流に流してはいけないという規制もない。であるならば、無責任な開発行為に対いする規制や、個人住宅への雨水浸透施設の設置義務を規程すしかない」と思い、そのことを市に求め実施して来ました。
 しかし、その事は既存の開発によって水害が発生している以上、残念なから後追いの施策であり抜本的解決にはならず、その後も何度も水害は発生しました。
 そして私が考えたのは、雨水調整池(都市部では多額な費用を要し、コンクリートを使えばダムと同じ)や学校のグランドなどへの貯留施設の整備です。この提案を長野市も受けいけて頂き、調整池や学校グランド貯留を何箇所も行って頂きました。しかし、水害の解消は、水害が発生しているその河川そのものの本川(外水)の雨水流出抑制に直接効果ある施策なければ抜本的な効果は生まれませんので、その後も水害は発生しました。
 その後、私が考えたのが本川の雨水流出抑制に直接効果のある大きな雨水調整池の建設です。そして、その求めに応じて市で建設頂いたのが「石渡調整池」(2000トン)と「運動公園地下調整池」(全体計画4万トンの内第1期工事として6千トン完成)です。しかし、この建設には紆余曲折がありました。それは「石渡調整池」は借地で整備したのですが、地権者の方の交渉の時に、「なぜ、上流に作らずに被災者の地域に作るのか理解出来ない。下流に効果はあっても、私のこれまでの苦しみは解消しない」「ダムの湖沼に沈むのと同じ気持ちだ」と反対されたのです。この方に私は「上流の皆さんは自分勝手に開発し、水害をもたらした。でも、そのことが分かるのは、そのために水害苦しんで来た私達だと思う。下流でも水害に苦しんでいる方がおられる以上、その気持ちが分かる自分達が犠牲になり、その気持ちを行政にぶつけ、上流にも調整を必ず作ってもらうことを条件として、是非ご理解頂きたいと思う」と説得しました。そして、この経過から上流である「運動公園地下調整池」の計画が具体化しました。
 「運動公園調整池」も建設までには様々な課題がありました。それは国の補助金を受けるには下水道事業としてであり、この地域はまだ下水道も整備されておらず、雨水渠整備事業として補助金を受けることは当時、住民要望の一番強い下水道整備が遅れることを意味していました。また、35万都市としては地下に第1期工事で約8億円を投じる例は当時余りなく、国とすれば全国のバランス上、既成事実となることを意味し補助採択を受けるのに難航を極めました。さらに、グランドの地下にコンクリートにより調整池を作るということは、ダムと同じく「堆砂」の問題やポンプ排水、災害時の停電など維持管理費を含め管理をどう行うかという問題もありました。
 こうした課題を解決しながら石渡調整池や運動公園調整池の整備が決まった時、ちょうど市議会議員選挙があり、遠くの地区から出ている日本共産党の候補が来て私の地元で街頭演説を行い「私がやりました」と演説したのを、私は今でも覚えています。当時、共産党は予算にも反対していましたが、後で私がこの演説の話しを共産党議員に質すと「その調整池の部分の予算は賛成した」といました。その当時、共産党は議会質問で私の地元の都市型水害解決のための提案を具体的に行っていませんでしたし、私の地元で調整池を整備するための地権者交渉をした訳でもなく、浅川ダム問題について、さほど取り上げてもいませんでした。

 結局、政治とは一つ一つの積み重ねや人々の苦労を反映するものではなく、流行歌の様に流れて行くのでしょうか。最近「理念」を多くの人達が流行語のように口にするようになりましたが、「結論良ければ全て良し」で、全てが片付けられているような気がします。
 「理念」とは「大辞林」では「物事のあるべき状態についての基本的な考え方。理性の働きとして得られる最高概念」とありますが、その達成のためには既存の現実問題(災害弱者の救済)を、ひとつひとつ解決しながら、「あるべき状態」に向かって進む、着実な信用できる実践が問われます。
 以上、私のこれまでの取り組みから思ったことを述べましたが、この経験から今回の長野市の「雨水貯留施設助成金制度」には次の大きな3つの意義があると思います。 
  1. 市民が一人でも多くこの制度を理解し参加することにより、現実的に、治水効果と節水効果があがること。
  2. 水害に直面している災害弱者に対する上流や下流、ダム反対・賛成の立場を越えて、市民一人一人の治水・利水への住民参加のメニューを示したこと。
  3. 住民参加のメニューの提起は、権利の主張だけでなく市民が参画するという「市民自治」(住民自治)への行政の問題提起と、市民の義務(参画)意識の啓発であり、その羅針盤となること。

「脱ダム宣言」(理念)から「市民自治」へ

 田中知事が「脱ダム宣言」を出す前から、そして出した後も私は、この制度と同じく「治水・利水への住民参加」を議会質問等で提案して来ました。しかし、田中知事のその答えは「今後検討する」という以外には帰って来ていませんでした。ですから私は「脱ダム宣言」が突然出され進行中のダム中止が打ち出された時、その手法に反対して住民合意を尊重し、「住民参加」による検討を重視する「治水・利水ダム等検討委員会条例」を提案しました。「脱ダム宣言」の目指す「理念」とは、県民一人一人が治水や利水について、どの様に自覚しダム以外の解決策を導き出し、実践して行くのか県民に示し生活の中に定着させることだと思ったからです。それは、地球温暖化対策など未来に向けた環境対策を一人一人が行って行くことと同義です。  その意味で今回の長野市の対応は、「脱ダム宣言」を出した知事の対応を越え、より先進的に水害撲滅と住民参加と住民自治という「理念」達成に向けた、啓発活動であり、ゴミや資源物の分別収集と同じく、市民が実践を通じて一歩高い住民自治を自覚することにつながると確信しています。  また、田中知事は福祉や環境、森林整備等について新たな産業を創設すると言っていますが、私はその趣旨に賛成です。しかし、この事は何も長野県の特性でなく全国的には先進的な県は早くから行っていることですし、私もこれまでも提案して来たことです。また、私は、「脱ダム宣言」を行うのであれば何も「脱ダム債」を発行し、さらに借金を重ね再建団体への転落を促進するよりも、雨水貯留のタンクを「長野モデル」のマークを張り、産業として全国に発信することの方が新たな一つの産業育成となることも提案して来ました。そして、地元の竹村製作所さんとお話しし、現に個人家庭の貯留タンクを開発していただきました。

長野市の「河川行政の理念」は「市民自治」。そして、県は・・・・。

 私は、今年4月16日に話題の「調査費」を使い、雨水利用の先進都市である東京都の墨田区へ視察に行きました。対応してくれた環境担当環境保全課の村瀬誠雨水利用主査は熱心に現地を案内して頂いた後、「私たちが事務局をしている雨水利用自治体連絡会に、是非長野県や県内の各市町村に加入して頂くよう働きかけて欲しい。」とお願いされました。  この「雨水利用自治体連絡会」は、近年、水資源対策、洪水対策、防災対策として雨水利用の有効性が注目され、雨水利用について取り組もうと意欲のある先進的な自治体が、雨水利用に関する情報交換、政策交流の場として、平成8年に結成されたものですが、昨年10月現在、東京都、京都府や埼玉県など6県、95市町村が加盟してネッワークが形成されているものです。  私としも、この問題意識と一致し、「脱ダム宣言」を出した県としても責任を果たす立場から、環境重視の一つの代替案として雨水利用を全国の先進的な自治体に謙虚に学びながら、広く県民に参加を呼びかけるには、この「連絡会」に本県も参加し、積極的な施策の展開を行うべきと考え、村瀬氏の提案を了承しました。  そして、長野に帰りこの提案を県と長野市に行いました。  まず、長野市には、私から「河川行政には理念が必要である。」と語った後、全国で先進的に取り組んでいる雨水利用自治体連絡会議に加入をお願いしたところ、こころよく承諾頂き、県内でトップを切って加入をして頂きました。このことは、これまでの長野市の経験をつうじ今後さらに雨水利用について様々な施策を行っていただけるものと確信し期待しています。  また、県にも県の参加と各市町村への呼びかけを願いしたところ、公共下水道事業を行っている自治体に対し参加の呼びかけをして頂きましたが、県の参加については、雨水利用の対策が各部各課にまたがるため、どこが所管するか明確にならず、まだ加入には至っていません。  しかし、例えば新潟県の場合は「地球環境課」が所管して参加をしいる事実を見ても、「脱ダム宣言」を出した具体的な知事の対応が「これで良いのか」と言わざるを得ません。  このことは9月議会で社会県民連合県議団の浜団長の代表質問で知事の姿勢を質すことにしています。  今回の長野市の「雨水貯留施設助成金制度」スタートや、「雨水利用自治体連絡会」への加入は、「脱ダム宣言」を出した県よりも住民の治水・利水への参加について、より実践的な「理念」を長野市の方がこれまでの実践をつうじて理解していると私は思います。  そして、そのことは、より高いレベルの住民自治(市民自治)を確立することになり、市民に信頼され支えられる堅実な新しい政治(自治)の確立に発展する要素であると確信し期待しています。

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