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浅川及び砥川に関する治水・利水の枠組み

平成14年7月
長   野   県

平成14年6月25日 長野県議会6月定例会において示した「浅川及び砥川の治水・利水の枠組み」は以下のとおりである。

長野県治水・利水ダム等検討委員会の答申を尊重し、その趣旨を踏まえ浅川及び砥川の治水・利水対策を実施して行く、そして、一つひとつの課題に関して、解決への見通しを把握し、長野県公共事業評価監視委員会にも諮った上で、最終的な判断を行い、確実な治水・利水対策を実施して行きたい旨、田中前知事は6月定例会冒頭の提案説明で述べた。
 長野県は、答申を受けた後、その内容の検討とともに、治水・利水対策を実施するための課題の解決について、連日、前知事が土木部等と協議を重ねて来た。細部にわたる具体案をある程度構築した後に、それを一括して詳細に公表するのが、本来は望ましいと考えられたが、前知事と関係部との協議の段階に於ける、浅川及び砥川の治水対策の「枠組み」に関して、議会に対し説明することとした。
 この枠組みを検討するに当たり考慮しなければならなかったことは、既に答申書にも述べられているとおり、いくつかの点において条例設置の委員会においても意見の一致が見られなかったという点である。 しかしながら、「価値観の異なる多数の委員から構成される委員会の限界」と答申がいみじくも吐露した困難さを乗り越えるべく、県政運営の責任者である知事として、その時点での考え方を明らかにしたものである。

浅川に関する治水の考え方

基本高水流量

基本高水流量に関しては、最後まで検討委員会では意見が分かれたままであった。これは極めて難解な問題であることを物語っている。他方、河川管理者という立場からは、こうした考え方が分かれたままの状態で放置するわけには行かない。今後、答申の趣旨を踏まえ、浅川の流量調査を詳細に実施する等の作業を通じて、長野県は基本高水流量を再検証することとし、その結果が出るまでは、治水対策の目標である100年確率の基本高水流量は現行の450m3/sを当面の治水対策の目標とする。

治水対策の骨格

  • 国で定めている「河川砂防技術基準(案)」によると、C級の河川に位置付けられている浅川の治水安全度のおおよその基準は1/50〜1/100となる。これを踏まえ、少なくとも50年確率相当の流量への対応を第一に確保して行く。
    この流量は、現時点までの長野県の試算では、先の基本高水流量の約8割となり、答申に於けるいわゆるB案の基本高水量と比較すると、試算値の方が若干大きな流量となる。長野県は、河川改修事業によって、まずこの流量への対応を何よりも優先して実施する。これが治水対策の第一点である。

  • 残る約2割の流量への対応として理論上では、ダム建設という選択肢も考えられなくはない。しかしながら、検討委員会の論議や昨今の国内外の治水を取り巻く方向性も鑑みると、「環境への負荷」という看過し得ぬ観点や地質面からのダムの安全性に対する不安感などを考慮する必要性があり、はたまた、検討委員会の答申も尊重するなら、安易にダムを選択することはできない。
    このため残る約2割の流量への対応は、長野県治水・利水ダム等検討委員会の答申でも示されたとおり、森林の整備、遊水池や貯留施設の設置等の「流域対策」で対応する方針とする。既に平成12年12月に出された国の河川審議会の中間答申においても、今後全ての河川で流域対策を検討することを基本としており、これが2点目の治水対策となる。
    なお、答申内容が決定するまでに、合計14回開催された検討委員会に於ける議論では、「流域対策」を具体的数値で評価する段階までは至っていないため、その数値的な目安を示すべく県として検討を行っていく。

  • 治水対策の第3点目は、浅川固有の課題として、千曲川合流部付近の内水氾濫の問題があり、検討委員会及び部会の議論の過程で、内水氾濫対策への必要性は一致した意見であったと認識される。今後、調査・解析等、積極的な検討を行い、実施可能な対策を長野県としても講ずることとする。
図1
 以上、約8割を受け持つ河川改修、これを補完し100年確率相当の治水安全度を目指す流域対策、これとは別に住民からの要望が強い内水氾濫対策、これらを実施するには、方法論、効果の予測、費用の確保等々、課題の解決にはそれぞれに要する時間も異なる。先に述べたとおり、先ずは河川改修事業を早急に実施し、一刻も早く流域住民の皆様に安心いただけるよう努力する。
その為にも、河川整備計画が国の認可を得られるよう努力を重ねねばならない。
今後、土木部を中心として、ここに掲げた枠組みを国土交通省に説明し、理解をいただけるよう努力するとともに、具体案を作成し、関係市町村や流域の皆さまに説明し、できる限り早く河川整備計画が策定できるよう長野県を挙げて努力していく。

砥川に関する治水の考え方

 砥川に関しても、枠組みとしての治水の考え方は浅川とほぼ同様である。
 当面の治水対策の目標である基本高水流量は現行の280m3/sとし、この検証作業を行っていく。
 治水対策の骨格としては、50年確率相当の流量、これは砥川においても基本高水の約8割に相当するが、これを河川改修事業で実施し、残る約2割の流量を流域対策で対応したい。
図2
以上の内容は、流域住民の安全・安心を考慮に入れると、答申の趣旨にも沿い、検討委員会委員及び県民にも広く理解されるものと考える。

利水対策の考え方

 浅川ダム及び下諏訪ダムの計画は、共に治水・利水を目的とした、いわゆる多目的ダムであり、その計画の中止は河川改修等の治水対策にとどまらず、水道水源の確保といった利水対策にも影響を及ぼす。今回の答申においても、浅川に関して、「水源対策は水道事業者たる市町村の責任において、短期、中長期の施策を組み合わせて適切な対策を確実に実行することが重要である」とする一方で、長野県に対し「長野市の水源対策に関し協力すべき」と記載されている。
 また砥川に関しても、「水源対策は水道事業者たる市町村の責任において、短期、中長期の施策に分け、速やかに行うべき施策と将来に向けての施策を適宜組み合わせ、確実に実行することが重要である」、「県は水源対策等について、財政措置、条例の整備等を行うべきである」と述べている。
 長野県は、これまでの経過を踏まえ、県としての考え方をとりまとめ、関係市町村に対し提案して行く。
このため、まずは両河川関係地域の水需給について長野県として再検証を行うとともに、浅川については渇水期等の危機管理のあり方を、また、砥川については地下水汚染の現況を踏まえ、具体的対策案を関係市、町と協議していく。取り分け、下諏訪ダムの代替水道施設の整備については、地下水汚染に対する対応も重大な課題であると認識しつつ、まずは、新和田トンネル湧水の利用をはじめ、高度浄化処理施設や新規井戸の掘削の是非等について、総合的な観点から関係者との調整を進め、整備手法、財政措置等について検討を行う。

ダム事業について

以上の治水・利水の枠組みにより、現行のダム建設事業は中止し、併せて、浅川ダム本体工事にかかわる共同企業体との契約も、6月定例会終了後、速やかに解除することとした。

おわりに

田中前知事は「枠組み」について、次のように結んでいる。

昨年2月、「日本の背骨に位置し、数多の水源を擁する長野県」の知事として、「『脱ダム』宣言」を発信した。それは、「看過し得ぬ負荷を地球環境へと与え」る「コンクリートのダム」は「出来うる限り造るべきではない」とする、「脱物質主義」の時代に於ける新たな理念を、広く県民、市民の皆様に問うたものである。従来の、「自然は全て人間がコントロールできる」という価値観から、「人間が自然をコントロールするには限界があり」、他方で「河川や湖沼をはじめとする地球環境は、私たちが後世の子孫に残すべき貴重な財産である」とする価値観への転換が進んでいる。
環境」が21世紀のキーワードといわれる今日、「『脱ダム』宣言」の理念は多くの皆さんの共感と賛同を得た。「『脱ダム』宣言」において示した私たちが歩むべき道を、後戻りさせることは出来ない。いみじくも今回の答申も、多面的・多角的な検討を経て、浅川、砥川の両河川においても、ダムに拠らない治水・利水対策が可能であると述べ、その実現を長野県に対して求めたものである。
以上、議員提案の条例に基づき設置された検討委員会の答申を尊重し、県民の理解を得ながら、新たな「長野モデル」としての河川整備を進め、その理念のみならず、具体的方策もが全国へと伝播していくことを願う。
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