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治水・利水・ダム問題コーナー

基本高水や河川整備計画に関する長野県の見解について
2002.7.1

 この資料は5月2日開催された「第10回治水・利水ダム等検討委員会」に、9回の同委員会以降・各検討委員から出された基本高水に関する課題や河川整備計画に関する課題等の質問に対し、県の見解として出された資料です。  その後、検討委員会では基準点の基本高水流量を既に計画されていた浅川毎秒450立方メートル・砥川毎秒280立方メートルを、それぞれ330・200立方メートルに下げることに終始し、最後は数の論理で総合的に判断したとして、ダムによらないこの基本高水を下げた案を答申しました。  私がこの時点で「ダムなし案」に反対したのは、基本高水を下げることは治水安全度を下げることと同義であり、国の認可にならないし流域の同意も得られない。これまでの検討委員会の検証からして「ダムなし案」は「代替案」となり得ておらず、現時点では従来計画のダム案を支持する。という理由からでした。そして、この時に各委員に国の認可にならない「代替案」は実施しないということで良いか。と言った趣旨の発言をし、ある委員から「法律違反をしないことはあたりまえのこと」という発言があり確認されました。  その後、知事は検討委員会の答申を尊重するとして、基本高水は浅川450・砥川280立方メートルは変えず、その基本高水流量の80%を河川改修で、残る20%を流域対策で行うとする枠組みを示し、その具体的内容については今後検討し河川整備計画を作成して行く表明を行いました。では基本高水を下げることに終始した検討委員会の案に賛成した委員の皆さん立場は何だったのか、また今後どうなるのか心配になりますが、しかし、私としてはこの知事の基本高水を下げないでダムによらない治水対策は反対する理由は無くなりました。でも、今後「枠組み案」を実現するために様々な検証を行う中で、その実現は可能なのか。河川整備計画策定の検証の中で費用対効果や流域対策の効果などについて国の認可が得られるのか。現時点では全く不明です。  そこで、今後、浅川・砥川に関する治水・利水に関する知事の「枠組み案」が示され、今後、具体化がされて行く過程や、現在行っている他の「部会」での検討にとっても、基本高水や河川整備計画について第10回検討委員会に長野県の見解として示した内容を多くの皆さんに知っておいて頂くことも必要と思い掲載することに致しました。
2002.7月  県治水・利水ダム等検討委員
竹内 久幸


   

基本高水や河川整備計画に関する長野県の見解

平成14年5月2日
長野県河川課

浜 委員
 砥川部会において、既往最大流量ないしカバー率の観点で基本高水を下げることは、実質的に治水安全度をさげることとなるとの説明が、国土交通省からあったが、合理的な理由なくして、基本高水を下げて計画した場合、河川整備計画は認可になるのか。

長野県の見解
河川管理者は、補助、県単事業にかかわらず、計画的に河川の整備を実施すべき区間について、河川法第16条の2により河川整備計画を策定し、法第79条により国の認可を得ることが義務づけられている。また、河川整備計画の策定に当たっては、学識経験者、地域住民、農業、漁業等の関係者の意見を十分反映させた計画とし、関係市町村長の意見を聴かなければならないとされている。
 浅川ダム、下諏訪ダムともに大臣の認可等の手続きを経て進められてきたものであり、これを変更する場合には、改めて河川整備計画の大臣の認可等が必要となる。

 河川整備計画等の認可に当たっての基準は、平成12年12月の河川局長通達に示されており、河川整備計画の目標に関する事項については、目標とされる水準が、当該河川の重要性、所管地域内の他の河川とのバランス、近年の災害の発生状況等を考慮して設定されていることとされている。
 なお、基本高水の設定については、同通達において
  • 基本高水を算定する際の計画規模は、当該河川の重要性、所管地域内の他の河川とのバランス、既往最大洪水の規模等が総合的に考慮されているものであること。
  • 基本高水の算定が適正な手法により行われていること。
  • 基本高水について、河道と洪水調整施設への配分が合理的であること。
  • 計画高水流量について、上下流、本支川間の流量が不整合になっていないこと。
等の基準が示されている。

 このことから、河川整備計画の認可を求めるに当たっても、これらの基準に適合していることを県が国に説明する必要がある。

国の認可が得られるかどうかは、県の方針がでたところで国が判断することとなるが、砥川部会で国土交通省の専門官が、治水計画を立案する上で考慮せざるを得ない計画降雨から求められた最大流量が妥当な値と判断されるにもかかわらず、単にカバー率の観点で基本高水流量を下げることは、実質的に安全度を下げることと同義である旨の発言があったことから、河川整備計画の認可を得るには、基本高水を下げることについて、合理的な理由が必要であると考える。

浜 委員
 河川整備計画の策定にあたっては、関係市町村長の意見を聴くこととなっているが、市町村長の理解が得られないまま、河川整備計画は策定できるのか。

長野県の見解
 河川整備計画は最終的に河川管理者の判断により策定するものであり、必ずしも市町村長の意見を計画に反映させなければならないというものではないが、地域の意向を十分に反映するための手続の一環として、関係市町村長の意見を聴くことが義務づけられている。
 これは河川整備計画が地域住民の安全や河川環境のあり方等に直接関わるものであるため、具体的な河川工事等を定めるに当たって、当該地域の行政上の責任を有する関係市町村長の意見を聴くこととするものである。
したがって、関係市町村長の意見はその地域の代表者としての重みを持ったものであるから、これらの意見を十分に踏まえた上で、河川整備計画を策定すべきであると考える。

浜 委員、竹内委員
 仮に河川整備計画の認可、市町村長の理解が得られないまま、県単独事業で安全度を下げた計画で治水計画を行い、災害が発生した場合、責任の所在はどうなるのか。
 損害賠償等の請求を受けた場合、河川管理者が責任を取るのか。

長野県の見解
災害が発生した場合の損害賠償については、大東水害訴訟最高裁判決等によって判断基準が確立されている。
 河川管理の瑕疵の有無は、「過去に発生した水害の規模、発生の頻度、発生原因、被害の性質、降雨状況、流域の地形その他の自然的条件、土地の利用状況その他の社会的条件、改修を要する緊急性の有無及びその程度等諸般の事情を総合的に考慮し、前記(河川管理の特性に由来する財政的、技術的及び社会的)諸制約のもとでの同種、同規模の河川の管理の一般水準及び社会的通念に照らして是認しうる安全性を備えていると認められるかどうかを基準として判断すべき」であるとされている。
 合理的な理由なく、当該計画における治水安全度を引き下げることにより、同種、同規模の河川の管理の一般水準等に照らして、是認しうる安全性を備えていないと認められるに至った場合、河川管理に瑕疵があるとして、河川管理者は損害賠償責任を問われる可能性が高くなると考えられる。

県がその管理の一部を行っている一級河川については、知事が河川管理者たる国土交通大臣の事務の一部を法定受託事務として行っているものであり、災害が発生した場合、知事が第一義的にその責任を負うこととなっている。
 また、その知事の行う事務については、大臣は法律に基づき、認可等を行うこととしている。 
 このことから、災害が発生した場合の損害賠償等の責任は、県が第一義的に負うこととなるが、認可等の手続きを経ている場合において、国の過失等が明らかになった場合には、その過失等により生じた損害の範囲内で国が賠償責任を負うことになると考えられる。
なお、県が法定の手続きを踏まずに不充分な治水事業を行い、そのために災害が発生した場合は、県が所要の手続きを行わなかったことについて、県が手続きの不作為により生じた損害についての賠償責任を負うこととなると考えられる。

宮澤委員
 浅川部会の報告書の中にあったが、建設省が昭和33年に河川砂防技術基準を作成した。その後、昭和51年に改訂されたが、この改訂の基本精神はどのような背景で変わったのか。
 また、全国の各県は、この改訂を受けて、どのような点に留意して計画をつくるようになったのか。

長野県の見解
 河川計画論の歴史的変遷を遡ると、戦前の河川計画の考え方は、財政上の制約、水文資料の未整備から既往最大洪水を対象にせざるを得なかった(既往最大主義)が、過去に実際に起こった洪水流量を計画目標とするため、気象の偶然性に支配され、また河川間のバランスもとれているとは言いがたいものであった。
 その後、水文学の進展等により、計画対象流量を何年に1回生じる流量であるかを年超過確率で表し、地域の社会的経済的重要性や想定される被害の質量などから全国の河川の重要度を定め、これによって基本高水流量を定めるといった考え方(確率主義)に移行されてきた。
 
 確率主義の考え方は、既に昭和33年河川砂防技術基準に、計画の評価に年超過確率という新しい概念が導入され、「基本高水は既往洪水を検討し、最大の既往洪水、事業の経済効果、ならびに計画対象地域の重要度を総合的に考慮して決定する。」さらに基本高水の決定に当っては、「計画対象地域の重要度に応じて年超過確率を考慮するものとする。」とされている。しかし、当時は経済効果、重要度について十分な検討を行う資料が得られる場合が少ないという資料の信頼性から、従来原則的に採用していた最大の既往洪水を重視するとされていた。

 その後昭和51年に、水理、水文学の進展、貯留関数法等の洪水流出解析手法の確立等の河川技術の進歩を整理した河川砂防技術基準(案)が改訂され、基本高水流量を設定する方法として、所定の治水安全度に対応する超過確率を持つ計画降雨を定め、この降雨から一定の手法でハイドログラフを設定する方法が標準とされた。さらにその治水安全度の決定に当っては、「河川の重要度を重視するとともに、既往洪水による被害の実態、経済効果等を総合的に考慮して定めるものとし、それぞれの河川の重要度に応じて上下流、本支川のバランスが保持され、かつ全国的に均衡が保たれること」とされた。
 
 また、全国的に基本高水流量は、現行の基準に従い、その地域の社会的経済的重要性、想定される被害の質量、災害の履歴などを考慮して、治水安全度に対応する年超過確率を持つ計画降雨を流出解析した結果から決定している。

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