3−6.磁性体用液体金属イオン源

 

 強磁性体のイオン源として、Coを含む合金イオン源を開発した。Coを含むイオン源は後に5−6節において述べるCo/Cu多層膜を作製するためのもの33)であるのでCuも同時に含む必要がある。前節において述べたNb−Au−Cu合金とNb−Au−Co合金を混合したCu−Co−Nb−Au合金イオン源を作製し、その特性を測定した。原料としてCu33−Co34−Nb−Au32合金を使用したイオン源からの引き出しビームの質量スペクトル例を図3−26に示す。充填した合金原料自体の組成と比較してCo2+ビームの引き出しビーム中に占める割合は少ない。また、この運転温度においてはNb2+ビームは観測されない。Nb合金イオン源において述べたように、Coの含有量が増えるとイオン源の安定さが損なわれる傾向にあるため、引き出しビーム中でCo2+ビームの占める割合がこの程度に小さいとき、イオン源の寿命としては100〜200時間程度が達成されている。

 

 

 

図3−26.Cu−Co−Nb−Au合金イオン源の質量スペクトル例