Bintang Besar vol.27
98/8『ビンタン・ブサール』第27号より


原告団声明
弁護団声明
支援会声明


Bintang Besar vol.27
原告団声明

韓国・朝鮮人BC級戦犯者
国家補償等請求控訴事件 原告団

 本日、東京高等裁判所は、私たちの国家補償請求の控訴に対して「棄却」の判決を下した。東京地方裁判所における1996年9月9日の棄却判決に続いての不当な、無慈悲この上ない判決であると言わざるを得ない。誠に無念な判決である。無慈悲この上ない判決である。
 私たちは、35年以上にわたり、日本政府に対し不当な処遇を訴え、処遇の改善と補償を求めて闘ってきた。残念ながら、私たちの声は日本政府によって無視され続けてきた。私たちはもはや政府に期待はできないと思い、7年前に日本政府を提訴することを決意し、司法の判断をあおぐことにした。
 東京地裁における請求棄却判決は、到底、納得できるものではなかった。ゆえに、私たちは東京高裁に控訴した。
 私たちは、一貫して、私たちが戦犯に問われるに至った経緯、日本政府の不当な処遇を訴え、全力で裁判を闘ってきた。とりわけ控訴審では、人権を侵害し人間としての人格をおろそかにした日本政府に対して私たちは謝罪を求め、そのしるしとして象徴的補償を求めた。
 にもかかわらず、東京高等裁判所は、私たちの真意を理解することなく、不当な判決を下した。
 条理に基づいた独自の勇気或判決を期待していただけに、誠に残念である。刑死された仲間、さらに控訴後に判決を聞くことなく他界された原告に、この不当な判決を伝えることはつらい。

 東京高裁は、請求を棄却しておきながらも、私たちへの不当な処遇を認め、補償請求および政府の謝罪要求は心情的に理解できると述べている。その上で、早期に適切な立法措置がとられるのが望ましいとしている。
 であるなら、なぜもう一歩踏み込み、条理に基づき政府の不当性を認める判決を下さなかったのか。かえすがえすも無念である。
 私たちは、私たち原告だけでなく、刑死した仲間、他界した仲間の無念をバネにこれからも日本政府の私たちへの不当な処遇を訴え、補償請求を認めさせる裁判を続けるつもりである。最高裁判所に上告することを、決意する。
 最後に、私たちはこの裁判の闘いを続けつつ、国会において、私たちへの補償と謝罪を実現するための闘いを、さらに継続してゆくつもりである。とりわけ、補償を実現する立法化の働きかけを国会議員に強く求めてゆくことをここに決意する。
 私たちの闘いを支えて下さってきた弁護団、市民の皆さんと共にこれからも歩んでいきたい。

1998年7月13日
韓国・朝鮮人BC級戦犯者国家補償等
請求控訴事件 原告団


Bintang Besar vol.27
弁護団声明

韓国・朝鮮人「BC級戦犯者」訴訟弁護団

一、 東京高等裁判所は、本日七月十三日、韓国・朝鮮人「BC級戦犯者」らの控訴を不当にも棄却した。
 原告団は、最高裁に上告する方針である。
 地裁判決と同様にこの高裁判決は、最高裁判例における戦争犠牲受忍義務論や立法裁量論に追従したものである。
 しかしながら、判決は、国会に対し戦後補償の「早期立法解決」を強く促している。これは、先頃四月二十七日の山口地裁下関支部における「慰安婦」判決が、政治の怠慢にペナルティを科し国会議員に対し速やかな補償立法を促したことや、六月二十三日の東京地裁における韓国志願兵恩給請求訴訟判決が、国の補償政策の不備を指摘し、立法解決を促したことと軌を一にする司法判断である。

二、 戦後補償の問題はすぐれて人権の問題であることが看過されてはならない。
 原告らは、植民地朝鮮の小学校の朝礼で「一つ、私たちは大日本帝国の臣民であります」「一つ、私たちは心を合わせて天皇陛下に忠誠を尽くします」という『皇国臣民の誓詞』を暗唱させられ、日本人としての誇りをもたされ、やがて日本のために、俘虜監視員として上官の命令に忠実に従い、真面目に一生懸命に働き、その結果、日本の戦犯とされ、ある者は銃殺刑になり、他の者は長年月にわたり服役した者である。
 原告らは、日本国に求める国家補償の意味について法廷で次のように述べている。「それほどの金額じゃなくても、私たちの人権を侵害し、人間としての人格をおろそかにした、そのことにちゃんと謝罪し、それが口先ではないことを示す補償であればいいと思います」「謝罪と補償は全く一体のものでございます。謝罪だけでもだめです。また、お金をもらったというだけでは意味がございません」。
 原告らが国に求めている国家補償は、民族的アイデンティティを侵害され、人間としての人格の尊厳を根底から侵されたことに対する謝罪のしるしとしての「象徴的補償」なのである。

三、 他国の例をみると、ドイツ、アメリカ、カナダおよびオーストリアにおいて、すでに戦後補償制度が設けられ実施されている。
 戦争という国家の行為によってもたらされた重大な人権侵害に対して、戦争を遂行した国の政府が、はっきり正義の立場に立って、自国の「不正義」を率直に認め、謝罪し、可能な限りの補償をすることは、国際社会における「条理」である。
 本件判決が指摘しているとおり、被害者の高齢化が深刻になるなかで、このような国際社会における戦後補償の「条理」をこの国でも立法化するため、国民的合意をどのように形成するかが、今、緊急に問われている。
 本判決は、「第二次世界大戦が終わり、戦犯者控訴人らが戦犯者とされ、戦争裁判を受けてから既に五十年余の歳月が経過し、戦犯者控訴人らはいずれも高齢となり、当審係属中にも、そのうちの二人が死亡している。国政関与者においてこの問題の早期解決を図るため適切な立法措置を講じることが期待される」と判示しているのである。
 われわれは、上告審において、日本国憲法十三条の個人の尊厳規定が承認している右国際社会の「条理」に基づき、最高裁判例の変更をめざす法廷闘争を行うと共に、被害者が求めている「象徴的補償」を世論に訴え、これを速やかに実現すべき立法運動を原告団および「支える会」と共に推進する決意である。
 右声明する。

一九九八年七月十三日
韓国・朝鮮人「BC級戦犯者」訴訟弁護団


Bintang Besar vol.27
支援会声明

日本の戦争責任を肩代わりさせられた
韓国・朝鮮人BC級戦犯を支える会

 請求は再度退けられた。控訴人らが主張してきた象徴的補償は認められなかった。私たちはこの不当判決に対し、深い憤りとともに、抗議の意思を表明する。

 ただし判決は、戦前の植民地支配下における皇民化政策や日本軍の苛酷な俘虜政策などについて、一審判決にはない事実認定を行っている。さらに、台湾人戦没者遺族への補償や、米国における日系人への補償などを例にあげ、国家権力による被害者に対して一定の補償を行うことが共通認識になりつつあると述べている。これは、韓国・朝鮮人元BC級戦犯者とその遺族の被害が、日本国家の行為に基づくことを認定したものであり、補償立法の必要性を指摘したものに他ならない。政府・国会は、この判決の指摘を真摯に受けとめ、即刻立法措置をとり、韓国・朝鮮人元BC級戦犯者とその遺族に対する謝罪・補償を実現すべきである。

 足かけ八年におよぶ審理の過程では、膨大な証拠書類が提出され、被害の証言がなされた。これらの蓄積は、韓国・朝鮮人元BC級戦犯者およびその遺族の被害が、戦前・戦中から戦後にわたる日本国家の行為によるものであり、現在の日本政府にその償いの責任が存することを明白に立証している。
 補償の実現を、これ以上遅らせることは許されない。判決も述べているように、被害当事者は高齢である。控訴人のうち、文泰福氏、朴允商氏は、すでにこの世を去った。謝罪・補償の実現を見ぬままの死だった。謝罪・補償の実現を遅らせてきた政府・国会には、彼らの無念の死に対する重い責任がある。政府・国会は、自らの不作為による被害をこれ以上生じさせてはならない。亡くなった二2人の控訴人の闘いは両氏の遺族によって継承されているが、事態は切迫している。
 これまでの支援運動の過程で、韓国・朝鮮人BC級戦犯者への理解と関心は、日本社会の中に確実に広がりをみせてきた。私たちは、こうした多くの支援者たち、そして他の戦後補償請求運動グループとの連携をこれまで以上に強めつつ、一日も早い補償立法の実現と韓国・朝鮮人BC級戦犯者の損なわれた名誉の回復のため、あらゆる努力を尽くし運動し続ける。

1998年7月13日
日本の戦争責任を肩代わりさせられた
韓国・朝鮮人BC級戦犯を支える会



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