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ライヴレポートのようなもの

ライヴ観て来た記

Extreme the DOJO Vol.14

05’6月7日 心斎橋クラブクアトロ
†HIGH ON FIRE†DEW-SCENTED†MISERY SIGNALS
※諸事情によりDEW-SCENTEDの「見て来た記」のみ。

この日会場に流れるのは、メタル寄りと言えなくもないラウド系で、どうもピリッとしない。客の入りもピリッとしない。いや客自身、ピリッとしない。入りとしては私が今まで足を運んだDOJOの中で最低となった。大体、チケット発売日の当日午後6時にローソンチケットで整理番号2番が出た位である。チケットの売れ行きを推して知るべし。

パルコの最上階にある心斎橋クラブクワトロは、いつも客を非常階段に並ばせて入場整理を行なうのだが、この日は階段を利用せず、「何番から何番の人、並んで…、入って…」と、ものの10分位で入り口にて列を捌いた。招聘元のsmashもトリのバンドやカップリングをちょっと熟考して決めたらどうかと思う。客は100人くらいいたのかな?である。

最初のバンドMISERY SIGNALSが7曲40分のセットを終えた。ドラムセットとアンプの入れ替えが始まる。アンプは左からMarshall3段積み、Pearlワンバスドラム、ampegベースアンプ、もう一つMarshall3段積み。ドラムが組上がると短髪のドラマーUweが出てきてセッティングが始まった。

まだ当分掛かるだろうと思い、バーへウィスキーを買いに行くと、店員がノロノロしていたせいもあるが、待っている間にライヴが始まってしまった。これにはやられたと思った。まだか、まだかとメンバーが出てくるのを待つドキドキ感を逃してしまった。前のバンドの演奏が終わって15分でライヴスタートなど、今まで経験したことが無い。いや、イベント形式のバンド入れ替えはこうでなくては、という理想像だった。さすがDEW-SCENTED、曲と同じくらいライヴの準備もスピーディーである。

SE無しで曲が即始まる。“New Found Pain”の狂暴さ、まさに男らしいオープニング。ドイツの暴走特急が急発進、急加速である。脱線しようがお構い無しに、立ち塞がるもの皆薙ぎ倒す勢いである。ステージ上には、何と5人のメンバーが…。左からIbanezギターのHendrik、ヴォーカルのLeffe、ベース(メーカ不明)のAlexander、変形ランダムスターのJacksonギターのMarvin、そして激速スラッシングバスドラのUwe。ギタリストがFlorianでなく、それが最初の驚きだった。

「It's Heavy Metal Show!」と鋼鉄の統治が布告され、こっちは俄然嬉しくなる。「special preview of New Album」と始まった“Never To Return”。デスメタル的なリフで、スピードチューンだが、DEW-SCENTEDらしいサウンドである。遂に彼等も自己の音楽性を確立したと認識させられた。

この他、この夜はニューソングが2曲披露されたが、どれも「IMPACT」の延長線上のスピードスラッシュで、新譜がかなり期待できるものであることを実感した。普通、良いアルバムを作ったら、その後は少しレイドバックしたマイナー指向になるのだが、そんな心配は全く無い。実に発売が待ち遠しい。

「次はスローソングだ」。曲は“City Of …”でスローというほどではないが、ほとんどがスピードメタルなのだから、彼等の基準では、これがスローの範疇なのかもしれない。緩やかなビートに合わせて舞い上がるフロント4人の長髪は見ていて壮快。その光景を目のあたりにして、私自身が駆け抜けた'80年代の、漆黒の帝国(スラッシュ・メタリゼーション)の幻想が現出する。スラッシュメタルという言葉が最も鮮烈なインパクトを持っていた、あの輝かしい時代を彷彿とさせる。

しかし、いまやスラッシュ四天王は解散や方向性転換を余儀なくされ、PANTERAに至っては解散、SEPULTURAは分裂し、見るも無残である。現代のスラッシュの代名詞はもはやSLAYERではなく、THE HAUNTEDやこのDEW-SCENTEDであるべきである。もうSLAYERやAT THE GATESを引き合いに出すべきではない、鋼鉄評論家の先生方よ!。私がそう確信した頃、曲が終わった。「ドモ、アリガト!」とLeffeが日本語で礼を述べる。

前のバンドの時、バックの音が悪かったので心配したが、終始どの曲も聴き取り易く、DEW-SCENTEDは各々の音の輪郭がはっきりしており、非常に良かった。「今回のツアーで新しい盟友になったHIGH ON FIRE、MISERY SIGNALSに捧げる」と始まったのは、“Soul Poison”。サビの「numbing」はアルバムのように連呼していた。Hendrikはソロでワウペダルを駆使する。

ベースのAlexanderは終始、フィンガーピッキングだった。この手の音楽性だと、速さ優先でピック弾きが大半なのだが、ヴィジュアル的にはやはりツーフィンガーの方が様になる。

「INWARDSアルバムからのダンシングナンバー、“Bitter Conflict”!」と少々お茶らけたMCだが、デスヴォイス咆哮が曲のさらなるコア度を高める。

「またニューアルバムからの曲をプレイしたい。これはヴィデオクリップになっている曲だ。“Turn To Ash”」おそらくは、地方に住んでいる私にとってはこのクリップをTVで目にすることはないだろうが、果たしてどんな仕上がりになっているのか?彼等がステージ上で演奏しながら一心不乱にヘッドバンギングしている映像だけで、十分にカッコ良いだろう。モノクロならさらに緊張感が増す。間違っても、ジャーマンの悪質な伝統の変な芝居だけはやって欲しくない。

「モアダンシングナンバー!!“Locked In Motion”」MCでお笑いを取るわけでもないだろうけど、これは動きの悪い(モッシュの起こらない)フロアに対する皮肉だったのかもしれない。とにかく今夜の客は、バンドの意を解さない、別種の音楽ファンが集まっているようなので、バンドに対して非常に申し訳ない気になってきた。前回来日時の面子(DEFLESHED、NIGHT IN GALES)と音楽性が違っているバンドばかりとはいえ、メンバーは客の反応の悪さに肩透かしを食らっているかもしれない。

「ステージを去る前に、あと2曲やる」と宣言され、ヘッドバンギングで痛めつけている首にもう一度気合いを入れることになった。ラストはお待ちかねの“Acts Of Rage”で最大加速。全身全霊でヘッドバンギングをやった。バンドは演奏を終え、ステージを去った。

「短い!足りない!」と思いながらも、首はもう音を上げてしまっている状態であり、これでフルセットでは体が持たないか、と感じた。後半の曲間の休みもゆっくり取っていたし、メンバー自身も鍛練しなければならないだろう。次回の来日でソロツアーをやれば、バンド客双方とも体力勝負のライヴとなることは疑い無い。

セットとしては、国内デビューした4th以降からバランス良く、しかも各アルバムの前半の曲で組み立てられたセットは新参者のファンには取っ付き易く、また充分にバンドのポテンシャルを示したものだった。個人的には“Agony Designed”や“Slaughtervain”でスラッシングリフを楽しみながらも打ちのめされたかったとの念が残る。ニューアルバムを引っ提げてのヘッドラインツアーを切に切に願って、筆を置きたいと思う。(文責:新地昭彦)

DEW-SCENTED set list

  1. New Found Pain [5th-2]
  2. Unconditional [4th-2]
  3. Never To Return [6th-9]
  4. Cities Of The Dead [5th-5]
  5. Soul Poison [5th-4]
  6. Bitter Conflict [4th-1]
  7. Turn To Ash [6th-3]
  8. Locked In Motion [4th-6]
  9. Destination Hell [5th-3]
  10. Out Of The Self [6th-5]
  11. Acts Of Rage [5th-1]

(7:45pm-8:35pm)50min.
4th : INWARDS ('01)
5th : IMPACT ('03)
6th : ISSUE ・ ('05)