01’4月19日大阪・梅田 HEAT BEAT
「闇など恐れるものではない。真に恐れるべきものは闇を生み出す、人の心である」
キア・シーン
SEの“Darkness Our Bride (Juguler Wedding)”の後、前回の来日と同様、“Nocturnal Supremacy”でライヴはスタートした。Daniの激しくも麗しい神秘の声音(こわね)が、オーディエンスの魂をかっさらう。魔都MIDIANの住人、夜の種族たるバンドにとって、我々は野獣の餌となるのだ。
ステージ構成はLtoRで、コーラスのSarah、ギターPaul、ベースRobin、ヴォーカルDani、ギターGian、キーボードMartin。後方のドラム台にAdrian。機材は両ギタリストともMarshallのヘッド+2スピーカーの3段積み。ベースアンプはampeg、ドラムセットはダークブルーのPREMIERで、もちろんツーバス。
“Lord Abortion”のイントロ部では、フロントのメンバーは背を向けて立つ。スピードアップからギターが絡んでくる辺りで、客の一際大きな声援が起こる。ニューアルバムからのファンが多いようだ。まだ全体のバランスが取れていないのか、スネアの音量は幾分引き気味。ちなみに次の3曲目で、ドラムの音は改善された。Adrianのドラムの特徴はバスドラの鋭さにある。音の粒の揃った連打である。
女性コーラスパートでは、ピンスポが全て、Sarahに集まる。度々、ステージを去るSarahがその都度、仮面と付け替えてきたのを、皆さんはお気付きであろうか。
周りのノリ方は、ヘッドバンギング、フィストバンギング。ステージダイヴやモッシュの荒行を勤める猛者は見当たらない。正統ファンのノリ方と言えよう。
フロントのメンバーと違って、キーボードのMartinは整った、ユニセックスな顔立ちで、私の位置からはキーボードの上に頭一つだけ出ており、晩餐のテーブルに置かれた生首に見えてしまう。
全員長髪で、ライヴ中もレザースーツを脱がずに、汗だくで演奏する姿に、このバンドは正統派の象徴を守護する者達だと長らく思っていたが、現在の不可思議な髪型をしているGianは異形の民そのもの。まさしく、MIDIANの住人と呼ぶに相応しい。
ブラック後進国とも言える日本で、バンドは次々と素晴らしいパフォーマンスを見せてくれる。ブラックを受け入れる土壌の無い国では、直感的に正統派として受け止められるのかも知れない。
“Her Ghost In The Fog”−ライヴは最奥秘の行儀に辿り着く。激しく動く指を見据える弦楽器隊。その左手の動きは、印形を結ぶがごときである。Sarahを巫、Daniを覡として、祭祀は執り行われる。Daniの声で会場は異次元とリンクされ、Sarahの声で闇の都MIDIANの門が押し開く。神々しいまでのクオリティの高さ。良き音楽を楽しむのは人間ばかりではあるまいよ。美しき神々が舞い降りているのか、それとも暗黒の神に選ばれた異形の民が地下世界から這い出したのか、神霊の聖性に感応した私は、歓喜の水を頬に流す。死都伝説はバンドによって、淡々と語られる。
メンバーはステージを去り、“Creature That Kissed…”が、静寂の森の中を流れる。“Satanic Mantra”で、障碍神の真言陀羅尼咒を唱えるDani。真実の言説により、我々を即身成仏へと促す。「This is last song. Enjoy YOURSELF!」最後のタイトルコールをするDani。“Queen Of Winter,Thorned”で弦楽器隊は横一線になり、正統派継承のフォーメーションを示す。
これ程までにいかめしい音像に、周りの女性たちが激しく頭振するのを見て、バンドの音がファンを支え、ファンの声援がバンドを支えているのを実感した。これこそがブリティッシュHM。なぜなら、イギリスが帝国として再び君臨する希望がこのバンドであるのだから。大英帝国の新たなる誇り、ここに極まれり。(文責:新地昭彦)
(1st)→ THE PRINCIPLE OF EVIL MADE FLESH
(mini)→ V EMPIRE OF DARK FAERYTALES IN PHALLUSTEIN
(3th)→ CRUELTY AND THE BEAST
(4th)→ MIDIAN
CRADLE OF FILTH JAPAN TOUR 2001
Thur. 19 April Umeda HEAT BEAT:OSAKA
Fri. 20 April BOTTOM LINE:NAGOYA
Sun. 22 April Shibuya CLUB QUATTRO:TOKYO
Mon. 23 April Shibuya CLUB QUATTRO:TOKYO