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ライヴレポートのようなもの

ライヴ観て来た記

ARCH ENEMY

02’3月9日 大阪・梅田ON AIR
+†EDGE OF SPIRIIT

EDGE OF SPIRIT

時計の針が6時を回り、楽器隊が左右から現われて、インストの“Intro”でライヴがスタートした。ナチュラルトーンのコードストロークが始まり、大英帝国の母なる大地を踏みしめる、ギターのリードメロディがゆっくりと流れる。これだ、まさにこの出だしで、NAPALM DEATH前座の時に私は一発KOを食らったのだ。こんな曲を作れるバンドがこの日本にもいるのか?私はあの時驚愕したのだ。まあ、作曲の妙技は、関西圏のバンドだから当然、納得のいくものである。タムの連打からバッキングギターが歪み、ベースが絡んでくる。

ゴシック的な憂いから一変、ヴォーカルのShoが登場してのスピードチューン“呪咀”で、バンドは本領を発揮する。正統的な曲の組立と濁声吐捨スクリーミングという、HMとHCの排他的論理和が出力される。

続くは、2ndのシークレットトラック“Glare”。アルバムではSUNS OWLのMajimaがコーラスで参加していたが、その力強い声も聴こえてきそうな勢いである。

ハイライトは何といっても、2ndのオープニングナンバー“薄光”であろう。攻めの曲が続いた後に、このミドルチューンの迫力が生きてくる。荒れ狂うギターメロディの波涛と、その波頭を切り裂く憤怒のヴォーカル。ステージには左右に張り出しが用意されていたが、Shoはそこに這いつくばり、鬼気迫るパフォーマンスを見せる。インタビューで「強く心に突き刺さる歌詞にこだわりたい」と語るShoは、その言葉通り、歌詞を観客に投げつける。ヴォーカルによってステージ上に築かれた独特の世界観。そして、その脅威。

ライヴの出だし、演奏に不確かなところはあったが、音の再現性で帳消しである。アンプ類は全て持ち込みであり、アルバムの音を完璧に再現した。メンバーは皆短髪であり、外見的にはアマチュアリズム/ハードコア感は否めないが、音は紛れもなく正統派/デスメタルであり、ステージングも海外のバンドに退けを取らない。そのアンバランスさも、面白い。

「もう、外国のバンドを呼ばなくても、日本のバンドだけで、ライヴが出来るようになりたい。そんなバンドに自分達がなれるかはわからんけど、やれるだけのことはやっていきたい。」決意表明とも取れるMCが、俄然真実味を帯びてきた。下手に欧米化することなく、日本人としてのアイデンティティを保持したまま、世界に出て行くことの出来るバンドが、ついに現われたのかもしれない。

平坦な会場で、ぼーっと突っ立ったままの輩に隔てられ、いま一つバンドのアピールが浸透しなかった感じだが、これがクラブクワトロの様な立体的な会場であったなら、まだまだ洋楽至上主義者達の牙城に迫り、斬り崩していけたのではないか、と私は歯がゆい思いをした。

EDGE OF SPIRIT set list

  1. Intro
  2. 呪咀
  3. Glare
  4. 薄光
  5. Wanna Be Strong
  6. 言葉の風

1st:SCREAMING FOR THE TRUTH
2nd:影と光
Glare; secret track in 2nd

ARCH ENEMY

舞い降りた天使よ 黒き翼を拡げ…

7:00PM、ブラックアウト。天鼓雷音が鳴り響いた後、暗く硬いピアノのSEが流れ、ステージ下より放たれた歓声は大地の鳴動そのもの。新生ARCH ENEMYの拝所は、群れ集ったは衆生に埋め尽くされ、モッシュはおろかヘッドバンギングもままならない状態。振頭家で廻り衆(※1)の私としては、かなり不満なコンディション(※2)といえる。加えてステージ前の長身アニキ達の密集で、中央部はステージも満足に見ることが出来ない。それでも、飛び職の連中は、果敢にもダイヴに挑戦する。過剰なまでにARCH ENEMYへ寄せられた期待の現われであろう。

コーラスマイクは一本も用意されておらず、コーラスのサポートは一切無し。ドラム台左右のアンプ類─Marshallの3段スタックは、アンク十字架の描かれたタペストリーで隠されていた。バックドロップには、勿論、あのマーク。

●Angela Gossow

獣性を露にした声、そんな声を出すのは鬼か妖かしの類であろうと思われたが、眼前のそれは、姿菩薩の如く美しく、その実、性凶暴な羅刹(※3)。凶声は、アルバムで聴くよりももっとダークで、高い実効制圧力を示し、会場は直ぐさま、Angelaの軍門に下る。両手に黒いグローブをつけ、腕に紐を巻付け、「DIVA」と書かれた丈の短い黒Tシャツにレザーパンツの出で立ちは、ドラムソロを挟んで、長袖の赤Tシャツと赤のレザーパンツにお召し替えがあった。

かなりエキサイトしているご様子で、そのMCは早口でほとんど聞き取れず、サビを唱えての曲紹介は各々のイントロが始まるまではわからない状態だった。次々とステージングをこなすAngelaのパフォーマンスに「アンジェライズビューティフル!」(※4)の声が飛ぶ。しかし、ここは「Angela,You're so brutal !」あたりが賞賛として妥当であろう。

●Sharlee D'angelo

髭を蓄え、黒衣をまとい、リッケンバッカーまでブラックボディのSharleeは、魔障降伏の相を表わす鍾馗の如く立ちはだかる。羅刹Angelaとは極めて対照的である。ステージ映えする二人。Sharleeは曲によって、ピックとツーフィンガーの奏法を使い分け、クリアトーンを弾き出す。前回の反省か、フロントパフォーマンスをAngelaに託したためか、ステージを駆け回ることなく、どっしり構えての演奏だった。

●Daniel Erlandsson

PAISTEのTシャツを着て後方に控えるDanielは、力強いバスドラムの音厚で会場の空気を震わせる。テクニカルなスティック捌きを聴かせる彼は、ヒートアップして、途中から上半身裸でプレイをした。穏やかな外見に反して、ドラムソロではさらに激情を露にする。ブラックボディのPearlのツーバスドラムセットを使用。

●Christopher Amott

CAPARISONギターを操るChrisは、そのソロで、ヒーローを求める衆生から一切の迷悟を滅尽する。テクニカル面の神領を司る彼のソロワークは、テクニック原理主義者(※5)達にとっては、現世利益以外の何物でもない。彼のテクニックとて、救世の一つとなり得るのである。非難ばかりすべきではない。彼は光学的に反射率の高い、レザーのパンツ・シャツに身を包んで、汗だくでハイエンドのパフォーマンスを見せる。

●Michael Amott

底獄の主MichaelはGibsonフライングVから狂鳴音を奏で、残忍なリフを刻み、哀哭のメロディを紡ぎ出す。聖俗併せ呑むその奏法こそが、ARCH ENEMYの真骨頂であり、この音楽性の骨子であり、Michaelあってこそのメロデススタイルは夢疑い無きこと。ネックを押してのベンディング(※6)や、ワウペダルの駆使、珍しいところでライトハンドなど、「まず始めに曲ありき」のスタンスでのテクニックは、全く嫌味が無い。そんな点で、弟のChrisとは、音楽家としての格の違いを見せつける。黒の長袖にレザーパンツで、ギターを右に構えて両膝を合わせ、体を沈ませるそのポーズは、由緒正しいVの演奏基本姿勢であり、往年のメタルファンにはたまらない。

●ハイライト

アルバム通り、ピアノイントロから“Enemy…”をオープニングに持ってきた、定番のスタート。2曲目にしてバンドの代表曲“Bury…”をサラリと演ってしまったのは、いま一つ感慨が薄かった。CARCASSの曲をイントロだけ演ったのも、まあ、お遊びだということにしておこう。“Burning Angel”の詩意に同調して、全身赤の玉衣にAngelaお召し替え(※7)は、面白い試みであるといえる。「Do you wanna fly ?」の問い掛けから始まった“Silverwing”が本編を結ぶ。舞い降りた天使は黒き翼を拡げ、苦界に蠢く修羅達の魂を鷲掴みにし、虚空へと連れ去った。

狂気を孕んだハウリングから始まるアンコールは、“Dead…”“Beast…”“Shadows…”のベスト選曲で畳み掛け、たちこめる宿忿を闇火で灼き祓う素晴しいものだった。

ただ蛇足に思えたのは“Fields…”で、サビのギターメロディをAngelaが歌い、会場にコーラスをさせ、兄弟のギターバトルとツインのハモリを見せつけるエンディングの美味しい部分のみ。前回の関西圏(※8)の盛り上がりで、Michaelは禁断の果実を食して味をしめてしまったのではないか、と私は見る。

(文責:新地昭彦)

(※1)振頭家で廻り衆…
造語。ヘッドバンガー、スラムダンサーに私はこの語をぶつける。

(※2)不満なコンディション…
客席面積約300m2に対し、前売り、延期再発売、当日発売と客を詰めるだけ詰め込んだ。後ろの入場者は、前座バンドの演奏開始に間に合わなかったという。

(※3)羅刹…
東山の羅刹谷に住む羅刹女(らせつめ)は、人を取って喰らっていたので、密教僧に調伏されたという。その魂魄がAngelaを依り坐しとして現われたのであろうか。

(※4)ビューティフル…
わざわざカタカナ表記にしたのは、その発音があまりにも日本語であったため。発音、文意ともに周りの失笑を買った。

(※5)原理主義者…
それが本源的なもの、根源として、他のものはそれに依存すると考える、本質を見失った人達。過激な思想や発言に酔っているフシがある。ライブやネット上で目障りな者。

(※6)ベンディング…
フライングVはアームが無いので、アーミングの代わりにネックを押して弦のテンションを下げ、音程を変える。

(※7)お召し替え…
メタルのライヴとしては、その必要性は疑問視するが。ついでにシングル内ジャケのAngelaの微笑みも…。

(※8)前回の関西圏…
'99の来日公演。ギターメロディのコーラスは、IRON MAIDENのようであった。さすが関西。

ARCH ENEMY set list

  1. Enemy Within
  2. Bury Me An Angel
  3. Diva Satanica
  4. Heart Of Darkness
  5. The Immortal
  6. Dark Insanity
  7. 〜Demoniality
  8. Corporal Jigsore Quandary
  9. 〜Daniel's drum solo
  10. Burning Angel
  11. Pilgrim
  12. Ravenous
  13. Silverwing
  14. Dead Bury Their Dead-encore1-
  15. Beast Of Man-encore1-
  16. Snow Bound-encore2-
  17. Shadows And Dust-encore2-
  18. Fields Of Desolation '99-encore2-

1st:BLACK EARTH
2nd:STIGMATA
3rd:BURNING BRIDGES
4th:WAGES OF SIN
Sp.:NECROTICISM-DESCATING THE INSALUBRIOUS/CARCASS