更新日 2005.05.28
Legend
(ジャンル:ロマンス、歴史もの、ファンタジー)
著者:Jude Deveraux
邦訳:なし
おすすめ度:★★★★☆


背景 現代のアメリカ・バージニア州から、19世紀のコロラド州へタイムスリップした女性の物語。
あらすじ ケイディ・ロングは料理の天才。彼女の勤めるレストランは、大統領が外国の要人を連れて列につくほどの評判。オーナーの息子、グレゴリーとの婚約も決まった。

彼女は新居のための買い物をしている途中、ふと気になったブリキの缶を買う。小麦粉入れにするつもりだった。ところが中には、ある家族の古い写真と、何とウェディングドレスが入っていたのだ。
結婚式に着るドレスがまだ決まっていなかったケイディは、そのウェディングドレスを着てみる。すると、それはあつらえたようにぴったりしていた。
次の瞬間、彼女は自分のアパートの部屋でなく、荒野の中にいた。しかも、今にも一人の男が首吊りにされそうになっているところだ。何が何やらわからなかったが、男が悪人ではないような気がして、必死の思いで彼を助ける。
彼の介抱をしながら今の状況に思いをはせる。どう考えても普通じゃない。ついさっきまで、ケイディはアパートにいて、ウェディングドレスを着た自分の姿を鏡で見ていたのだ。それが今はどうだ。屋外にいるだけでも十分不思議なのに、あたりはどう見ても開拓時代、西部劇の世界。これが夢ではないとしたら――どうやらケイディは、時空を越えてしまったらしい。

彼女が助けた男性は、あの古い写真に写っていた家族の男の子が成人した姿だった。名をコール・ジョーダンという。コールは、命を助けてくれた彼女に感謝し、レジェンドという町にある自分の家に連れて帰る。ケイディはすぐにでも自分が最初出てきた場所に戻り、現代へと帰りたかったのだが、コールの「自分はさびしい人生を送ってきた。三日間でいいからハネムーンの真似事をさせてほしい。それが終われば元の場所へ連れて行くから」という願いを聞き入れる。
そしてその三日の間に、ケイディはどんどんコールに惹かれていく。理性では否定しながらも、コールを愛しているのではと思うようになる。
だが、約束の三日間が終わり、コールは彼女を元の場所へと送る。そこには時空の裂け目があり、向こうには彼女のアパートが見えている。この穴を抜けさえすれば現代へ戻れるのだ。だが――

ケイディは穴を抜けず、コールの胸に飛び込んだ。「いいのか?」と聞くコール。「わからない」とケイディは正直に答える。自分が愛しているのはコールなのか、それともグレゴリーなのか、わからなくなってしまっていた。

だがケイディはコールの家へと戻り、そこで暮らすようになる。

何週間か経ったある日、コールの祖母、ルースが訪ねてくる。ジョーダン一家は昔レジェンドで不幸に襲われたため、ルースは悲嘆の余りこの地を離れていたのだ。
コールと結婚してここに住んでいるのだと説明するケイディに、ルースは衝撃的な事実を伝える。それは……。
感想 ロマンス小説の最大の欠点は(わたし自身は「欠点」だとは思っていないが、ロマンス小説を嫌いな人から見ると、「だから面白くないんだ」ということになるのだと思う)、「先が読めてしまう」ということ。
特に、多くの場合、1割も読み進まないうちに、「この女性とこの男性が恋に落ちるんだな」とわかってしまう。
ところが、この小説の場合は予想がどんどん(いい意味で)裏切られるのだ。

最大の「裏切り」は、小説の半ば過ぎ。ケイディとコールが出会ったこの世界が、実はXXXだったことが明らかになる部分が全くのサプライズ。(従って、上記のあらすじにもそれ以降は書いていない)
これがどのくらい驚きだったかというと、鈴木光司氏の「リング」「らせん」に続く三部作の完結編「ループ」で、サダコに呪われていた世界がXXXだったと分かった時に匹敵する「びっくり」だった。(ジャンルが全く違うので、読んでない人にはちんぷんかんぷんだと思うが、これも書くわけにはいかない。興味のある人、読んでみてください。)
主人公のケイディが愛し合う相手がすぐに登場しないという意味でも、実に型破りなロマンス小説だったし、「えっ、この先どうなるの?」と興味が尽きず、まさにpage turnerなお話だった。

SFという点からすると、タイムパラドックス関係のことで、いまいち納得しかねる部分もある。
(つまり、過去を変えたら必然的に未来が変わるわけで、ケイディが過去を変えたことでその時点から見た未来、すなわち現在も変わる。それはそれでいいのだが、最終的に変わった現在というのは、ケイディが変える前の世界での出来事が影響している部分があり、そのあたりの関連がよくわからなかった。わたしの理解力が劣っているだけかもしれないが……)ということで、ちょっともやもやが残ったのがマイナス点。

物語の性質上あまり詳しく書けないので、感想も具体的になりにくい部分があるのだが、上記以外では最後まで飽きさせず読者を引っ張っていく、興味の尽きないロマンスである。